おいしい料理求めて、まりモグがゆく。

伊勢海老クリームスープを思い出すと、 旅に出たくなる。

前回、志摩観光ホテルでのアクティブな“おこもり”を綴りましたが、今回は同ホテルでの食にまつわるお話です。

志摩観光ホテルは大きく3つの館に分かれていて、ザ クラシックにはレストラン「ラ・メール ザ クラシック」が、ザ ベイスイートにはフレンチレストラン「ラ・メール」と和食「浜木綿」が、そしてザ クラブにはカフェ&ワインバー「リアン」があります。今回は到着後、「浜木綿」で昼食をいただきました。
この日は偶然、月1回行われている「伊勢志摩ガストロノミー ランチ賞味会」の開催日。三重県の食材の生産者を招き、ミニ講演会を聞いてから、お食事へというプログラム。この時のテーマは東紀州ということで、志摩よりさらに南下した位置にある尾鷲(おわせ)の魚にフォーカス。魚店の2代目である岩﨑 肇さんがゲストスピーカーでした。

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左:岩﨑魚店の岩崎さんが登壇。右:鮮やかな手づくりルアー。

そもそも尾鷲という地を知らなかったのですが、岩﨑さんの話を聞いて、どうして尾鷲の魚が重宝されるのか、納得。山と海が近いため、山に降った雨から海へ流れこむ水は栄養豊富! さらにはその雨が、屋久島に続くNo.2の降雨量というから驚き。そこで獲れた魚をきれいに手当てするのも岩﨑さんの仕事。昼食前に、期待値はぐんぐん上がるばかり。
浜木綿へ移動し、食事タイム。伊勢志摩サミットでも腕を振るった、塚原巨司料理長による「東紀州~黒潮の恩恵~」が繰り広げられます。春を感じる食材が盛りだくさんで、三重の日本酒にもぴったりな“前彩”、お造り、焼きものと続きます。

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左:アコヤ貝柱酒粕漬けなど、計5種が盛られた前彩。右:お椀は、伊勢エビしんじょや蒸しアワビ、タケノコ入り。

お待ちかねの魚タイム! この日はカツオ、ヤイトハタ、ブリの3種。尾鷲では、春の間はカツオと、なんとブリがおいしいんだとか。ゼリー状に仕上げた板ポン酢や板醤油など、マイベストな組み合わせを探るのも楽しいです。
塚原料理長が「以前の勤務地である大阪は大都市だけあり、この日に欲しいと思った食材が必ず届きました。志摩では確実に指定の魚や食材が手に入らないこともあるけれど、とにかく新鮮」と話すだけに、旨味と旬を全身で感じられます。和食の要である旬を表現するために、塚原料理長は生産者に直接会って話を聞くことも多いそうです。
和食の締めであるご飯ものにはもともと目がないですが、当日はなんとも鮮やかなちらし寿司が! 淡い味わいのサヨリ、甘い煮ハマグリ、すっきりとしたタケノコに菜の花と、さまざまな味が口の中で広がります。あっという間にぺろり。

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左:お造り3種。板ポン酢、板醤油、岩戸塩、ショウガ、梅肉、ワサビが添えられる。右:煮ハマグリなど具だくさんのちらし寿司。

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夜。グルメ旅はまだまだ続きます。英虞湾を眺めてのアペロを経て、いよいよフレンチレストラン「ラ・メール」へ。かの樋口宏江総料理長のお料理がいただけるとあり、高まる鼓動を抑えながら入店。
ペリエ ジュエをひと口飲んだら食事がスタート。 タイラギ貝、サザエ、ハマグリなど春の貝5種の前菜をいただいたのち、スープが登場。この「伊勢海老クリームスープ」は、ホテルを代表する歴史ある逸品。頭から全部、殻ごと使い、何度も何度も濾して作られるそれは、まさに至高の味。磯の香りをたっぷりと纏いながら、穏やかなクリームで見事にまとめられています。いまでも思い出すだけで、志摩の海が瞼に浮かびます。

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左:ザ ベイスイートの館内には約5万粒の真珠がちりばめられていますが、こちらにも。右:ホテルの顔でもある「伊勢海老クリームスープ」。「ラ・メール」では洗練された仕立てで提供。

昼にいただいた尾鷲のブリ。フレンチのディナーでは春菊ソースとともに供されました。低温調理された魚はほろりと柔らかく、上質な脂が楽しめます。これだけでも十分に三重の海の幸が満喫できましたが、そこに現れたのが「アワビの海藻蒸し」。むっちり肉厚で、噛むと鼻から磯の香りが抜けていきます。

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左:「尾鷲産ブリ 伊勢志摩備長炭焼き シュンギクソース」。右:「アワビの海藻蒸し 海の七草ソース」。

もう至福すぎてぼんやりしていたその時、再度伊勢海老のお出ましです。ソテーされた伊勢海老にかかっているのは、なんと伊勢たくわんのソース! 伊勢には海の幸、山の幸だけでなく、たくわんまであったのです。伊勢たくわん独特の塩味や甘味にベルモットも加えられ、なんとも色っぽい味。うっとりしてしまうこと必至です。
ラストはサプライズ感たっぷりな「生姜リゾットと共にいただく松坂肉の備長炭焼き」。間違いのない松坂牛の風味と、カツオ節の香りを加えたコンソメスープをかけ、お茶漬け感覚でいただくリゾットは、初体験ながらほっとする味。

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左:「伊勢海老ソテー 伊勢たくわん風味のソース」。右:松坂牛サーロインの炙りともも肉備長炭焼き ショウガリゾットとコンソメを添えて」。

食材の組み合わせの楽しさ、味のおいしさで、ひと皿ひと皿まさに驚きの連続。ペアリングのワインもフランスはもちろん、ドイツ、日本とさまざまで、食事をさらに楽しく盛り上げてくれます。お腹はいっぱいだけれども、和食にも通じるような軽やかさ、透明感があり、樋口総料理長の凛とした人柄と重なりました。

「せっかくこの地に来てもらったのだから、地のものでもてなしたい。そんな先代からの教えを守っています」と話してくれた樋口総料理長。サミットや料理マスターズでの受賞など、さまざまな舞台を経験したシェフだからこそ、伊勢志摩食材と向き合いながらここまで作り上げられたんだと実感。それでも「まだまだ出会えていない生産者や三重食材があるので、より一層チャレンジを重ねていきたいです」とひと言。

東京からだと、決して行きやすい場所ではないけれど、ここでは必ずおいしいものに出合える。志摩観光ホテルは、グルマンドにとってこれ以上ない最高のデスティネーションと言える気がします。

志摩観光ホテル
三重県志摩市阿児町神明731
tel:0599-43-1211

浜木綿(ザ ベイスイート4F)
営)17時30分~20時30分L.O.
月会席\12,300~、華\24,600~

ラ・メール(ザ ベイスイート5F)
営)17時30分~20時30分L.O.
アバンタージュ\18,500、シュルプリーズ\29,800

※「伊勢志摩ガストロノミー ランチ賞味会」(\15,000)は、次回「北勢」をテーマに6/16、「南勢」をテーマに7/21、8/25に実施予定。
www.miyakohotels.ne.jp/shima/index.html

まりモグ

幼少期から北京を拠点にアジア、欧米、太平洋の島々などを旅し、モンゴルの羊鍋からフランスのエスカルゴまで、さまざまな現地の料理を食べ歩く。特に香港は、多い時で年4回のペースで通うほどの“香港迷”。食べ過ぎ飲みすぎがたたり、28歳で逆流性胃腸炎を発症。ワイン好きが高じて、2021年にJ.S.A.認定ワインエキスパートを取得。

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