
Ensue-中国・深センに、米三ツ星シェフがオープンした新レストランへ(Part 1)
香港と中国本土とのボーダーにある街、深センと言うと、最近ではアジアのシリコンバレーとして急発展を遂げていることでご存じの方も多いでしょう。
私にとって深センは、かつてはオーダーメイドで服を作りにいったり、安くマッサージをしたり、などという場所でしたが、今ではすっかり様変わりしています。
そんな深センで、この夏「アメリカの有名三つ星シェフがレストランをオープンするので、試食に来てみて」とのお誘いを受けたときは、ついに来たかと思いました。今までは、欧米からアジアに初出店というと、香港やシンガポールが圧倒的に多かった中、街の発展とともに今後増えて行くのでしょうか。
深セン・福田にあるシャングリ・ラ ホテル最上階にオープンしたEnsueがそのレストラン。仕掛け人はカリフォルニア・ナパバレーのMeadowoodを率いるシェフ、クリストファー・コストウさん。
「すでに香港には多数のシェフが進出しているけれども、深センは自分が初めて。マーケットはこれからだけれども成長しているし、大きなチャンスだと思った」とシェフ。
1000㎡もある店内には、窓からの夜景が美しいという珍しいキッチンも。2年かけてじっくり作り上げただけあって、使い勝手が良さそうです。
Ensueのキッチン!
この日は正式オープン直前ということで、スタッフへの指導もラストスパートという熱が伝わって来ました。
どんな未知の食体験が待っているのかしらとドキドキしながら迎えた一品目はこちら。
一見とてもシンプル。でも話を聞いて、口にして見て驚きました。
南シナ海産の新鮮なハマグリに、発酵させた大根で作った水を凍らせてかき氷にして載せて、葱油を加えているので、深みと味わいがたっぷり。シャンパンとのペアリングが完璧。
次々と運ばれてきた前菜。中国・大連産のホタテ貝と、中国野菜であるセルタス(セロリの茎を太くしたような、ブロッコリーの茎のような、透明感がある野菜。香港でもよく食べます)を組み合わせています。
こちらはタピオカとお米で作ったシートに包まれた中国野菜たち。乳酸菌発酵させたキャベツで作ったソースが使われています。
中国北方の海で獲れるミル貝の刺身を、炒め煮してからライチの炭で焼き色を付けたキンサイなどの地元野菜と一緒に、ミル貝の出汁と山椒の一種である「藤椒」で作ったヴィネグレットソースで和えた一品。さり気ない見た目だけれども珍しい食材を面白く組み合わせて、工夫を凝らしています!
ひたすら繊細でフレッシュ、見た目はシンプルだけれども、高度な調理技術を使った作られた複雑な味わいもありつつ、スッキリ優しい料理が続きます。
普段は香港に進出した多数のシェフにインタビューする中で、必ず論点になるのが食材です。かつては「ヨーロッパの有名農家が育てた野菜を空輸」というのを自慢にする店も多かったのですが、時代は変わり、なるべく近くで作られている食材を使うのが、環境に優しいし、食材も新鮮だし、シェフにとっても正しいあり方であることは確か。
ただ「せっかく高級店に来たのだから、いつでも食べられる地元のものではなくて、最高級で特別な輸入食材を食べたい」というお客も多いですから、バランスが難しいところなのです。中国産というだけで品質が低いとか危険と思ってしまう傾向もまだまだ海外ではありますし。そのあたり、超一流シェフが納得する品質の食材を探し求めて使っているというのは心強いでs
そういう意味では、分かりやすいギラギラさが一切なくて、ものすごく攻めている料理! これがしっかり受け入れられるのであれば、深センも一流都市の仲間入りですね。
ひたすらオープンマインドで食材を探したシェフ・コストウ。テーブルに運ばれてきたこれは何でしょう?
ウミガメのスープ! ミニタマネギやチャイブなどの香野菜が滋養豊かな風味をさらに華やがせます。
こんな景色を見ていると、「あれ? 今どこにいるんだっけ?」と不思議な感覚にとらわれますね。
後半戦の前に、カメラ片手に店内をうろうろ。とてもシンプルでシックなインテリア。
コストウさんのMeadowoodでの右腕で、Ensueを任されているヘッドシェフのマイルズさんと遭遇。「どう?楽しんでる~?」とフレンドリーな笑顔。手にしているのが後で出てくる鶏料理なのですが、なぜかこの料理の写真を取り忘れていました、汗。
キッチンでは、コストウさんが仕上げる皿を、サービススタッフが一列に並んで待っています。スタッフは素直でやる気満々、三ツ星シェフにサービススタンダードを学べる機会に、ワクワクしている雰囲気が伝わって来ました。このハングリーな感じ、伸びしろがもの凄くありそうです。
いよいよメインディッシュがどっさり登場します! 長くなるので次回に続きます。
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