World Classな日港カクテル交流
香港に住んで10年、ライターをやっていて、いろいろ知り合いも増えるわけですが、そんな人のつながりから派生して、いろいろと思ってもみないことを頼まれるようになりました。
私自身は、日本に住む方が香港に行ってみたいな、と思ってくださるように、日本の雑誌やウェブサイトやら、ブログやらで発信しているわけで、せっせと日々、シェフやバーテンダーなど、いろいろな方に英語でインタビューして日本語で記事を書いています。
それなので「今度、日本から来ていただく方、英語ができないんだけど、あ、そういえば、いつも英語でそんな内容のインタビューしている美也子に通訳を頼めばちょうどいいじゃないか」と思ってもらえるらしく。
全然通訳の勉強をしたわけではないですから、おっかなびっくりですけれども、「全然フォーマルじゃなくて、いつも話しているあの感じでいいから」という言葉を信じて、ちょこちょこと最近お手伝いをしています。
そして先日はなんと「World Class(カクテルの有名な世界大会)で2015年に見事優勝を遂げた、奈良で「Lamp Bar」を経営する金子道人さんを香港に招待して、バーテンダー向けのワークショップを開催するので、ぜひ通訳をお願い」と頼まれたときには、ええ?私でいいの?とびっくりしましたが。とにかくやってみることにしました。
日本の知人に聞いてみたら「金子さんはとにかくナイスガイ!」と嬉しい事前情報も♪
「いったいプロのバーテンダー向けのワークショップってどんな話をするんだろう」と思いながらも、始まりました、ワークショップが!
会場はロンドン生まれのジャパニーズレストランZUMA。私が香港に来た頃からあるけれども、人気が衰えず。バーとしても有名で、アジアTOP50バーにもランクインしています。今回はZUMAのゲストバーテンダーとして金子さんはやってきています。
さてさて、開会の挨拶をするMHDのマーティンさんとブランドアンバサダーのチェリーさん。チェリーさんは、4年ほど前、日本の某女性誌の香港特集で、地元女子として登場してもらったことがあります。その頃はバーテンダーだった彼女、その後ロンドンに修行に行き、戻ってきてから現職に!すっかり大人っぽくなって素敵です♪
※この日の様子はオフィシャル写真をお借りしました!
いよいよ始まりました、ワークショップ! 聞いていた通りの超ナイスガイの金子さん。よどみなく説明が始まります。最初は日本のバーテンダー技術というのには、茶道や剣道、空手と同じく「型」がある、というお話から。
そう、香港だけでなく世界中で、日本のバーテンダー技術というのは、ものすごいリスペクトを受けているんです。
「こっちだと、ある日突然、はい、今日から君はバーテンダーね、ってなんの基礎もなくバーテンダーになることが結構あるんだ、日本のようにしっかりした基礎を学べる仕組みがあるといいのに」と若手の育成を憂慮して、バーテンダースクールをやっている友人が何人かいます。だからもう「型」の話など始まると、みな目がらんらん。
「体の中心線を保ちながら、一つ一つの動作をします」と所作の例を見せている金子さん。確かに茶道と似ています!
そしてこれも観衆の熱い視線が注がれた、オレンジの皮を剥いてカットするところや、
これも香港でさんざんバーテンダーの皆さんに「日本の氷はすごい」と聞いていた、あれか!という氷の処理。
嬉しそうに金子さんのカットした氷を見つめる若手バーテンダーさんたちが可愛い <3
実は金子さんのナイフの研ぎ方に秘密があって、境の刀匠に研ぎ方を学んだとかで、ナイフのあちこちで研ぎ具合が調整してあるんだとか。去年のWorld Class香港代表のジェームズさんも魅入ってます。
刀の断面図を見せつつ、この辺を何パーセント、ここを何パーセントと細かい説明。
話は次第に、カクテルのデザインに必要な、塩、酸味、甘み、苦みなど味覚のマリアージュの話へ。ついて行くのに必死な通訳と、「いつかは自分もWorld Classへ」というバーテンダーさんたち。
金子さんの優勝は、ものすごくロジカル&クリエイティブな思考と、徹底した準備&日々の練習があってのことだったのだなーとひたすら納得がいきました。
そしていよいよカクテルメーキングの実演へ! 金子さんを優勝に導いたカクテルについて、そのデザインのロジックやインスピレーション、作る上でのテクニックや配慮など、全方位からの話が広がります。
優雅なディナーの後、23時からの時間をイメージした"from 23"を作る金子さん。
次にはジョニー・ウォーカーをテーマにしたカクテル、Golden Chronicleを作って、はい、本日のワークショップ終了!! 約2時間の熱弁と熱演に満場の拍手でした。
ちなみにこれがGolden Chronicle。ジョニー・ウォーカーは、元々紅茶のブレンドをしていたという歴史を紐解いて、ティーカップやポットをイメージした器を使ったり、金子さんの出身地である奈良の檜のキューブを使ったり、旅人の足跡が描かれていたり。時間の流れから味わいの分析まで、ありとあらゆる要素がこのカクテルに組み込まれているのです。
そして翌日は、いくつかのメディアのインタビューの通訳をお手伝い。最後の最後にご褒美を一つということで・・・・・・
from 23を私のために作っていただきました♪
葉巻が好きな伝説的バーテンダーが審査員を務めたことから、葉巻に仕立てたビスケットを添えての食後のコーヒータイム風の演出を加えたカクテルなのです。
葉巻の先にまぶされた炭塩を舐める前と後では、コーヒーの苦みが前に出たり、オレンジの風味が出てきたり、味が絶妙に違ってきて、何層にも楽しめるというのは、まさにワークショップで説明していた味覚のマリアージュの話そのものでした。
本来、自分がインタビューして深堀をしているつもりだけど、いつも表面をさらっと触ってるだけなんじゃないか、などと日頃の自分の仕事についてもいろいろ考えさせられる貴重な体験でした!
とにもかくにも、色々な日本人が、色々な分野で、世界で香港で尊敬されて慕われているってこと、もっともっと皆さんに知ってもらいたいです。
金子さん、ありがとうございました\(^O^)/
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