England's Dreaming

シーズン到来! ロンドンの音楽フェスへ。

イギリスの長い長い冬がようやく終わって暖かな日差しが降り注ぐこの季節になると、私の頭をよぎるのはミュージックフェスティバルのこと。

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チケット購入時は当日の天気がわからないため内心ドキドキ。この日はフェスティバル日和のピーカンに。よかったー!

からっと晴れた青空の下、芝生にぺたりと腰を下ろして大きなパイントグラスでビールをごくごく飲み、時間になったらお目当のバンドの出るステージにいそいそと移動する。

バーやフードトラックの列に並んだり、いくつかの演奏を見てステージ前で飛び跳ねたり、そうこうしているうちに最後のヘッドライナーの演奏が始まる夕暮れ時に(この時期のイギリスは日没がすっかり遅いので、それでももう夜9時か10時だけど)。オレンジからミッドナイトブルーへ変わっていく空の下というドラマティックなロケーションでのコンサートは、ただただ最高!

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空が暗くなるのとステージのライトが一層映える。この情景に気持ちはアップするばかり。

そんな1日を想像するだけで胸が高鳴る。No Music No Life。私のイギリス暮らしにインディーズロックがないなんて考えられない。

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今年最初のフェスティバルとして足を運んだのは、5月末に開催された「オール・ポインツ・イースト」の1日。

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ゲートオープンとともに会場内へ。この時間帯は、まだまだ人がまばら。

ロンドンでは街中の大きな公園でフェスやコンサートが開かれることがよくある。ロック史上有名なところでは1969年のローリング・ストーンズのハイドパークとか。今回もイーストロンドンのど真ん中にあるヴィクトリアパークが会場だ。ここは78年にパンクバンドのザ・クラッシュなどが参加して、差別に強くノーを突きつけるべく行われた「ロック・アゲンスト・レイシズム」というフェスが開かれた場所としても(ロンドンのロックファンには)知られている。

地下鉄セントラルラインのマイルエンド駅からの道沿いには、テラスハウスと呼ばれる長屋の住居がずらりと並ぶ。そんな住宅街にある公園が会場なのだけれども、このフェスは周辺のエリアと運営側が協力し合って開催されているという。

たとえば会場内で販売されるグッズやフード&ドリンクは、近隣の会社やマーケットの屋台、ブリュワリーが手がけていて、彼らに利益がもたらされるようになっている。週末音楽フェスが開かれた会場は、その後の平日には無料の屋外シアター、アートやスポーツのワークショップなどに利用される(この週、学校はハーフタームという学期の中休みなので子どもたちも参加できる)。そして自治区に収められる公園の利用代金は、市民の生活を支える最前線の活動に使われているそうだ。

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フードトラックもあちこちに。フェスティバルの食べ物は、以前と比べてかなり美味しくなった。ベジタリアン、ヴィーガンの屋台もあちこちに。

とはいえ夜23時近くまで続くコンサートの騒音に煩わされる周辺住民だってたくさんいるだろう。ありがとうと心のなかで感謝しながらフェス会場ゲート内へ。

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午後早めの演奏は若手ミュージシャンたちが中心。まだあまり知名度が高くないアーティストの中から好みの音を発掘するのが楽しい。今回、私が気になった2バンドは奇しくもどちらも女の子たちがメイン。

「ドリーム・ワイフ」はたまたま通りかかったステージで演奏していて、その姿がとにかく楽しそうで足を止めた。ガーリーなルックスと相反するパワフルなボーカルのパフォーマンスと、ピコピコなエレクトリックサウンドとパンキッシュな音のミックスが心地よい。後で調べたら、かつて私が通っていたブライトンのアートカレッジで結成されたバンドということで、ますます親近感。

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ステージの左右に設置された大型スクリーンに映るメンバーの表情がキュート。私のお気に入りはギターのアリス。

帰宅後にも何度も見ちゃったMV。メンバーたちの弾ける笑顔と、突き抜けるような疾走感あふれる音ががたまらない。

もう1組は「アワー・ガール」。こちらはなぜか名前にピンときて観に行くと決めたバンド。透明感のある歌声と、力強くて重たいギターサウンズのミスマッチが印象的だった。

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ヴォーカル&ギターのソフを中心としたスリーピースのバンド。観客の反応も上々。

イギリスの日常生活に思い切りシュールさをプラスした映像にヘビーなギターサウンドをのせて、独自の世界を表現。

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夕刻以降の個人的ハイライトだったジョニー・マーは、80年代のイギリスを代表するバンド「ザ・スミス」のギタリストだったヒト。彼がギターを奏でると、音とともに星や花やキラキラしたものがギターの弦からこぼれおちる。そんな音を体感できたのはしみじみうれしかった。「ザ・スミス」の曲を4曲もやってくれたし。80年代半ばに日本に住んでいた私はただただザ・スミスが大好きだった。だから彼らが来日することなく解散となった時は、一度もライブを体験できなかったと激しく落ち込んだのだけれども。その頃の私に、将来ロンドンでジョニーのギターリフを生で聴く日が来ると教えてあげたい。

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ステージからちょっと遠いけれども、これでもVIPエリアすぐ後ろの最前列をキープしていた私。

今回演奏したザ・スミスの曲のひとつ。何百回も聴いた曲だからイントロですぐにわかった。涙が出そうだった(笑)。

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この日最後のヘッドライナーはNYのバンド「ザ・ストロークス」。彼らもベテランの域に入るのだけれども、オーディエンスのなかには20代の子たちも大勢いた。演奏とともに新旧のヒット曲を大合唱していて、受け継がれているんだなあと実感。

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この時は諸事情により場所取り合戦に敗退。かなり後ろの位置にてスクリーンでコンサート鑑賞。

リリースはすでに18年前(!)。アンコールでラストを飾ったのはファーストアルバムからのこの曲。

会場内を行き交う人々は男女ともに、Tシャツにジーンズ、オールドスクールのスニーカー&布のエコバッグというリラックススタイルが大多数。なんともイーストロンドンらしいゆるさと、アーティストのセレクションが最高の魅力あふれるフェスだったのでした。

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思い思いの場所に座ったり、寝っ転がったり。この子たちの足元もヴァンズのスニーカー!

ああ楽しかった! 次は何に行こう?

坂本みゆき

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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