England's Dreaming

DIYと古いものが鍵となる、私的イギリス流住み替え。

10月末に引越しをした。

年が明けた頃から家探しをスタートしていたけれども、3月になったらイギリスは最初のロックダウンに。外出制限があって物件を下見できない日が続き、諸手続きにもとても時間がかかった。でも自宅にいる時間が普段よりもずっと多かったぶん、自分が住まいに何を求めているかを改めて考えられたのは良かったのかもしれない。

当然ながら予算に限りがあるから贅沢は言えないけれども、暗い季節が長い国なので出来る限り自然光が差し込むこと。そしてくつろげる庭があること。選ぶにあたって、その二つに重点を置いた。特に庭は外に自由に出られなくても屋外のスペースがあれば精神的にかなり助かるとつくづく実感していたから。

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壁の塗装が途中で家具もまだ入っていない頃のリビング。庭にはどこかの飼い猫や野生の狐がやってくる。

この二つが満たせれば、あとはDIYでなんとかする。

イギリスは自分で家に手を入れて住む人がとても多い。壁を塗り替えたり、ちょっとした家具を作り付けるなどはビギナーレベル。壁をぶち抜いたり、建て増ししたり、ガスや電気の配線以外は自分でやっちゃいました、みたいなことが珍しくない。

とはいえ我が家は全員初心者。なのでまずは壁の塗装から。全ての部屋の古い壁紙を剥がし、釘穴や凹みを埋めてヤスリをかけ、ホコリなどを取り除くために全面の拭き取り作業など下準備だけでも重労働だ。

塗料の種類もリビング、キッチン、バスルームなど、それぞれの部屋に適したものがあったり、狭いスペースを光の反射で広くみせる効果があるものなど、いろいろな種類がある。色を決めても塗料の特性と塗る場所が噛み合わなかったり、サンプルを塗ってみたら思っていた色味と違ったりと使うものを決めるまでも結構大変。それでも塗る作業は楽しく、素人でもそこそこ綺麗に塗れるようなフォーミュラに出来ていて助けられた。

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塗り替えたばかりの壁。家族三人で手分けしての作業だったけれども、タッチの差や色むらがあまり出なかったのは有難かった。

そのほか自転車やガーデニングの道具用に庭に物置き小屋を建てたり。説明書には「組み立て所要時間6時間」とあったのに3日かかった(笑)。

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一見簡単そうだったのに、意外と時間がかかった「物置き小屋」。

収納が少ないために、家具を少しだけ買い足すことに。「家具の9割が中古品」の我が家。まずは食器用のキャビネットをネットで購入。

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家具を買う際にいろいろと見ても、いつも最後はこのシリーズをを選んでしまう。イギリスの家具メーカー、アーコールが50年代に出したウィンザー。今も同じデザインで作られているが素材となる木の種類が変わっている。私はかつて使われていたエルム(ニレの木)が好きなので中古を求めている。

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二度目のロックダウンスタート前日には、地元で開催されたヴィンテージマーケットに出かけてみた。マーケットを回っているとインテリアで使える小物だけではなく、窓枠やドア、門などの「家のパーツ」もたくさん見かける。古いものの魅力に取りつかれると、家のすべてをとことん変えちゃう人も多いんだろうな。その気持ち、よく分かる。

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庭のデコレーションなどとともに窓枠もさりげなく並ぶ店頭。

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広い会場内では門も売られていた。これを取り付けられる家に住みたい。

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古びたコーンビーフの箱も収納用に使ったら可愛いかも?

今後は棚を作り付けたり、屋根裏を収納スペースにしたり、庭の片隅に野菜や花を育てるエリアを作ったり、薪ストーブを設置したり(これはプロの職人さんにお願いします)と夢想中。たぶん、ある程度仕上がって一息付けるのは来年の夏なんじゃないだろうか。

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室内用の家具を探しに出かけたマーケットだったのに、購入したのは庭用のベンチ。60年代に学校で使われていたもの。ロックダウン前日で売り手はできる限り売り切ってしてしまいたかったのか、とても安かった。

こうして手を入れて好みの家に仕上げても、イギリスの人たちは結構あっさりと住み替えしてしまったりする。家族構成やライフスタイルの変化で、気軽に家を移っていくのが一般的なのだ。

私もこの家にどれだけ長く住むのかは分からないけれども、二度目のロックダウンで出来た時間で、今はのんびりDIYしようと思っている。

坂本みゆき

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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