England's Dreaming

ばらの季節到来! イギリスの美しい庭へ。

イギリスの6月はばらの季節。

最近、20世紀の作家で詩人、園芸家のヴィタ・サックヴィル=ウェストのガーディングにまつわる文章をツイートするアカウントを見つけた。

特にばら、それもオールドローズに関する記述がとても興味深い。

“(オールドローズは)ハイブリッドティーローズのように整然としていて極めて優れているとは言えないし、多くの品種が一年に一度しか咲かない。けれども満開時は例えようがないくらい美しい”

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オールドローズとはその名の通り、ばらの古くからある品種群を指し、1867年に作出されたハイブリッドティーローズ以前のものとされてはいる。とはいえ明確な線引きはなくてざっくりと大体20世紀初頭までに作出されたばらとされることも多い。

私もオールドローズに魅せられて、せっせと集めては庭に植えている。でも、白状すると昨年それらがまとめて病気にかかって心が折れ、強健で手入れが楽な21世紀に生まれたばらの苗を一つ買った。今それは大輪の花を咲かせているのだけれども、やっぱりオールドローズには敵わないと感じている。ヴィタの言葉のとおり花びらが端正に並び、非常に華やかでインパクトはあるのだけれども、オールドローズのような長年の歴史を物語るような奥の深さがあまりないのだ。

そんなことを考えていたら、ヴィタが丹精込めて創り上げたシシングハースト・カッスルの庭に行きたくなった。この庭園のことはブログの第一回目で書いていて、でもその時は季節外れで寂しかったけれども今回はこの通り。

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足を踏み入れた瞬間、天国かと思いました。

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いくつかに分けられた庭はそれぞれカラーコーディネイトされている。ここにはピンク、ブルー、少しだけイエローの花々が咲く。

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こちらはイエロー&オレンジ。

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ホワイトガーデンと呼ばれる、白い花ばかりの一角。

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ホワイトガーデンの中央には小輪の房咲きのばらで覆われたキャノピーが。ここが満開になる頃に再訪しようと心に誓う。

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それぞれのエリアを区切る壁も素敵。

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とにかくすべてが美しい。

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ヴィタはオールドローズのなかでも花弁が無数に重なっていることからキャベツローズとも呼ばれるケンティフォリアや、モス、ガリカという特に古い品種が多い系統を好んでいたようだ。これらのほとんどは一年に一度しか花をつけない。

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ヴィタの庭より。ガリカローズの「コンディトルム」。深紅の花弁と黄色いおしべの色合いが綺麗。

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こちらもヴィタの庭より。ケンティフォリアローズの「ファンタン・ラトゥール」。甘いピンクの色合いと香り高さに魅せられる。

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いっぽう私は少し前までは初夏にだけしか花が咲かないのはなんだか寂しくて、返り咲きするオールドローズを主に選んでいた。

でも今は一季咲きの魅力もわかる。長い間待ち続けて、イギリスの一番美しいこの季節に優美な花に再会できる嬉しさは格別だから。そしてこれらはオールドローズのなかでも特別な存在のようにも思う。

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我が家の庭から。咲き始めは赤みの強い紫で徐々に青みが増していくモスローズ「ウィリアム・ロブ」。その色合いの移り変わる様はひときわドラマチックで、一年に一度の開花を心待ちにしている。

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今年お迎えしたガリカローズの「シャルル・ド・ミル」。18世紀中頃にはすでに存在していたという古いばら。折り重なる花弁がとても美しい。

6月はばらの季節であるとともに、プライズ月間でもある。

ヴィタは夫と親密な関係を持ちながらも作家ヴァージニア・ウルフとも恋愛関係にもあり、ウルフの代表作の一つ『オーランドー』のモデルとしても知られている。

一輪一輪の花を慈しむように、クィア一人一人の存在も心から祝福したい。

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シシングハースト・カースルの庭のエントラスにあったヘッド・ガーデナーさんからのお知らせ。この庭の美しさは冬の間の重労働のおかげとある。私もガーデニング、頑張ります…

坂本みゆき

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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