MUSIC DIARY 24/7

ノラ・ジョーンズもアルバムに参加した、ヴァレリー・ジューンの来日公演♫

ちょっとした懐かしさや安堵感を感じられる女性シンガー・ソングライターの歌を聴きたいと思ったら、ヴァレリー・ジューンの最新アルバム『ジ・オーダー・オブ・タイム』がオススメ。ノラ・ジョーンズがバッキングコーラスで3曲参加していることから予想できるように、フォークやカントリー、ブルースやR&Bなど緩やかにミックスさせたサウンドで、そこにヴァレリーの特徴ある歌声が流れてくる。土着的な響きに洗練された空気感が溶け合い、質の高いアメリカーナに仕上がっている。初期のトレイシー・チャップマンのような朴訥さが好きな人にも好まれそうだ。

 

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ヴァレリー・ジューンは日本ではまだほとんど知られていないが、この最新アルバムは『Rolling Stone』誌で《2017年上半期 ベスト・カントリー&アメリカーナ・アルバム》のトップ25に選ばれるなど、評価が高い。しかも1曲1曲に異なった趣があり、そこも魅力だ。私は7曲目の柔らかいアンビエントな雰囲気の広がる「Astral Plane」「Two Hearts」が今は一番のお気に入り。

 

 

ヴァレリーは音楽のメッカである、テネシー州ナッシュヴィルとメンフィスの中間地点にあるジャクソンやハンボルトといった街で生まれ育った。父親がプリンスやケイシー&ジョジョ、ボビー・ウーマックなどのコンサート・プロモーターだったこともあり、家には常に音楽が溢れていたという。幼少時から彼女はドリー・パートンからホイットニー・ヒューストン、トレイシー・チャップマン、ボブ・マーリーなどを好んで聴いては、毎日曜に教会で歌うことを楽しみにして過ごしていたそうだ。

 

「Shakedown」

 
 
5人兄弟の一番上という彼女は、18歳の時に思い切ってメンフィスへ単身で引っ越して本格的に音楽活動を始める。そして自室でレコーディングした2枚の自主制作アルバム等を経て、次第に注目されるようになっていく。ブラック・キーズのダン・オーバックと知り合ったことをきっかけに人脈が広がり、2013年に完成したアルバム『Pushin’Against A Stone』では世界各国でのリリースが実現。その前後にはジェイク・バグのUKツアーに同行したのをはじめ、ノラ・ジョーンズやブッカー・T・ジョーンズ、ローリング・ストーンズの結成50周年記念コンサートや夏フェスなどに出演する機会が増えていった。当時アメリカの大統領だったバラク・オバマ&ミッシェル夫妻も彼女のファンで、ノラ・ジョーンズやジェイク・バク等と共にホワイト・ハウスに招かれたこともあったという。

 

「Got Soul」

 

アルバムではギターやバンジョーを演奏しているが、この他にもウクレレや小型のスティール・ギターなども演奏する。歌詞も魅力的で、35歳という年齢だからこそ歌える等身大の思いには共感する女性が多いと思うし、前述の「Astral Plane」のようなスピリチュアルな歌詞には心が洗われ、光が見えてくるような気分になる。18年かけて伸ばしたというドレッドロックヘアーにも、彼女なりの祈りや信念、希望などが込められているのだろう。

 

Valerie June news-1.jpeg

 

この11月16日(木)、17日(金)とブルーノート東京でコンサートが行われるが、バンドメンバーは、このアルバム『ジ・オーダー・オブ・タイム』のプロデューサーであるマシュー"マット"マリネリがベース担当、同じくアルバムに参加していたキーボード担当のピーター・レム、ギター担当のアンドリュー・マクレオドも参加し、NYのエクスペリメンタル・ジャズ界で活躍するドラム奏者のライアン・ソウヤーも来日する。

 

東京にいて時間が空いていたら、青山にあるブルーノート東京にふらり寄ってみると素敵な時間を過ごせるかもしれない。

来日公演情報

2017年11月16日(木)、17日(金)

1stステージ 開演18:30 2ndステージ 開演21:00

ミュージック チャージ 7,500円

ブルーノート東京HP

 

 

 

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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