MUSIC DIARY 24/7

ネコで描くソフトクリームや野菜!? Ochan個展『GATHERING』

 

集合させたネコたちで、ちょっとシュールでユニークな絵を描くイラストレーターのOchan氏。その個展「GATHERING」が3月23日(金)から4日間、原宿のデザイン・フェスタ・ギャラリー(WEST 1-G)で開催される。前回の個展ではフランス人も購入していったほど評判が良く、今回はさらに点数が増えるというので、とても楽しみだ。

 

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■子供の頃から自分で創り出すことが好き

ミュージシャンとしての活動の方が長いOchanだが、話を聞くと4歳から絵に夢中になっていたという。特に遊戯王やデジモンのカードゲームが流行した小学生の頃は、市販のゲームで遊ぶより、画用紙を切って自作のモンスターを描いたオリジナルのカードゲームを作って遊んだり、教室の後ろの壁に毎週自作の漫画を発表したりするような少年だったという。

 

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音楽も4歳からエレクトーンやピアノを習い始め、それらは中学3年まで続いたものの、自らのめり込んで行ったのは高校で軽音楽部に入り、ギターを手にしてから。早速オリジナル曲を友人と作り始め、そのバンドはMAGIC FEELINGの原型となって大学進学後も続き、関西から上京するきっかけになっていく。

 

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■19歳の時にヒエロニムス・ボスの『快楽の園』に魅せられて

その傍ら、Ochanは海外の絵画を観るのも好きだったという。特にヒエロニムス・ボスの『快楽の園』を観た時に、当時好きだったフランク・ザッパやキャプテン・ビーフハートの音楽とカオスな状態に共通点を見出し、実際にこの目で観たいと大学2年の夏にプラド美術館まで行ってしまった。しかもこの時はアルバイトで貯めたお金で、ヨーロッパを2ヶ月にわたって旅したそうだ。

「ボスの絵には影響されましたね。奇妙だし、奇怪だけど、全体を通して観ると美しい。そういうものに当時惹かれていました。グロテスクなものを、色彩や小さいものをたくさん集めた表現で可愛く見せられるという。“こういうのもあるんだ!”っていう自分にとっての発見だったんです」

 

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東京では音楽活動に追われ、しばし絵を描くことを忘れていたが、バンドのアルバムジャケットやグッズのデザインを担当するうちに、絵を描く楽しさが蘇ってきた。そして2017年に入った頃、何気なくスケッチしていたネコの絵をきっかけに、クリエイティヴィティが掻き立てられたという。

「僕はネコは特に好きじゃないんですけど(笑)、何となくふわっとした絵を描いていた時からネコを描いて、そこに顔を描いて、その上にまたネコの絵を描いて顔を描いて……、というのを繰り返し描いていて、ふと見たら“ソフトクリームみたいだな”と思ったのが、この絵の始まり。SNSにあげたら、“面白い!”という反応があったし、自分も面白いと思うし、“これ、いいな”と思って(笑)」

 

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40号のキャンバスに描いたソフトクリームとOchan。1988年大阪生まれ。

 

そして同年5月に、ミュージシャン仲間やイラストレーターによる展覧会を観に行ったタイミングも良かったのかもしれない。触発されて、次回は自分もそこに参加したいと思ったものの、「その日程が思っていたより先だったので、それまで自分のモチベーションが続かなかったら嫌だし、初めての展示が“負んぶに抱っこ”みたいな感じでやるのも嫌だなぁと思って、それだったら先に自分で1回やっておこうと思った」と、すぐに会場を押さえ、2ヶ月後の7月に個展を開催してしまう。「自分で1度最初からやってみないと気が済まないという、子供の頃からの性格(笑)」が、行動の速さの原動力になっている。

 

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ジミ・ニャンドリックス

 

■絵を描いている時は無音で

興味深かったのが、ジミ・ヘンドリックスの絵を描いている時に、ジミヘンの音楽を聴いているかと思えば、絵を描く時はいつも無音という話。

「静かな方がいろいろなことを思いつきませんか? 絵を描いている時は頭の中が無なのかもしれないですね。結構、他のことを考えながら作っているんですよ。例えば今朝はフルーツパフェのネコの絵を描いていて、その間は“どんな音楽を作りたいか?”って考えている。それで、とりあえず絵を描き終えて、休憩の時に音楽用の部屋に行って、頭の中に思い浮かんだ音楽をメモするだけの作業をやるんですよね。今度はそれを聴きながら次の下絵の背景を塗って、飽きたら音楽を止めて、また描くことに集中するという……。その繰り返しなんです」

 

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現在は自身の音楽ユニットのほか、GRAND FAMILY ORCHESTRAなどを中心に音楽活動をしている。近い将来、音楽とイラストをコラボさせた個展も開きたいと考えているそうだ。とはいえ、Ochanが作る音楽とイラストには、緻密な作業や過程がある以外、共通点は少ない。音楽を絵に変換できるフィルターがあったとしても、自分が作る音楽は今のネコの絵には絶対ならないと思うし、その逆はあり得ないという。

「音楽にメッセージなど入れたいと思わないんですよね。でも僕はこのネコを描く前から、ブラックユーモアとかを描いた世界観が好きで。ネコを描き始めるようになって、ネコというフィルターを通すことによって、奇妙な発想もクスッと笑える感じになるというか、“可愛いね”ってハードルを下げてくれて、伝わりやすくなるなと思ったんです」

 

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                        バッヂは3個セットで700円

 

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デザイン・フェスタ・ギャラリー WEST 1 - G にて開催

東京都渋谷区神宮前3-20-18  Tel : 03-3479-1442

3/23(金)12:00〜20:00

3/24(土),25(日)11:00〜20:00

3/26(月) 最終日 11:00〜19:00

 

Ochan のHPはコチラ   Instagramはコチラ

 

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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