我想台湾

艶めくワゴンの飲茶

騒がしい場所は苦手だが、飲茶の賑やかしさは好きである

母の友人家族に歓迎のハグの嵐を受けて、『梅花廳』の装飾的な椅子にちょこんと着席する

父母が旧友と歓談する中、私は飲茶のワゴンの行く末にいつも夢中になっていた

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点心をワゴンに載せ、冷めさせるものか!と足早にテーブルの間を鮮やかに練り歩き、ここぞとばかりに食べてもらおうと、血気盛んのウェイトレスさんたちが怒号かと思う勢いで売り込んでくる

心なしか、冷たいデザートをワゴンで運ぶウエイトレスさんは前のめり子ではなく、しとやかな女性が多かったように思う 

刺繍入りのドレスを纏い、まさに茶の花のような身のこなし

細腰でワゴンを華麗に押すその後ろ姿を子供心に美しいと思っていた

母の友人たちが身につけるジュエリーは、白磁茶碗に注がれた美人茶の艶めきよりも輝いている

大人達は話すのに夢中で、点心を味わっているようには見えないが、とても楽しそうだ

故郷に帰った母は日本にいる時より表情が和らいでいるし、私も茶の花達が開けてくれる蒸篭から立ち上る湯気に癒されていたし、まっさらなテーブルクロス、ゆらめくワゴンのシルバー色に夢うつつだった

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そして、現在も変わらず『梅花廳』はワゴンで飲茶を提供している

現代ではワゴン紳士が笑顔でお勧めしてくださる

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決まって注文するのは、燒臘雙拼、A菜、蝦餃、豆豉蒸鳳爪、叉焼包、腸粉、大根餅などなど...

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プーアール茶か東方美人茶で胃を洗い流すと、まだまだ食べられてしまう気になるので...

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普段はそれほど食べない芝麻球にも手を出してしまう

サクッの後に香ばしさ、餅を口に含んだ後の爽やかな甘さ

飲茶のワゴンや、お茶や点心を楽しみながら交わす会話は、ジュエリーをプレゼントするときの包装のようなものなのかもしれない

渡した相手が、リボンを解いて、箱を開けるまでのわずかな時間に、むくむくっと広がり高鳴る鼓動

幸福を助長させる「かけら」

このかけらが、いわゆる文化なのではないのかと思う

幸福を与えてくれるそれらだけはそうっと掬い出して、大切に取っておくつもりだ

高橋れいみ

群馬県で台湾人の母と日本人の父の間に生まれ、幼少期に台湾で多くを過ごし思春期にロサンゼルスに移住。民族的な手仕事やモダニズムに強く影響を受ける。
2016年~R.ALAGAN(ララガン)を設立。亜魂洋才をコンセプトに掲げ、日本のジュエリー職人と高品質なジュエリーを制作している。

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