おしゃべりなうつわ

高い技術が生むシンプルネス、永木卓さんのガラス器。

240731_utsuwa_eikitaku_01.jpgこれは永木卓さんのドラ鉢型のガラス器。実験道具のような深めのシャーレ型で底面からまっすぐ上がるラインといい、均一なふちの造りといい、機械生産のプロダクトのように均整のとれた美しさ。だけど実際は、個人作家が手作りする手吹きガラスなのだから、その技術の高さたるや、恐れ入る。日本には、和食器、洋食器という区別があるけれど「プロダクト的なデザイン」というときに私が思い描くのは、その区別のない形状。量産の都合上、複雑なカーブや凹凸をつけるのが簡単でないから、均整の取れたすっきりとした形になっていることも多い。

永木さんの「すっきり」は、それとは違う。まっすぐなようでいて、わずかに外側に開くよう形を整えるなど、肉眼では気づかないような微細な調整をすることで生まれるまっすぐなラインなのだという。熱く熱したガラスを吹きながら一瞬の判断でそれをかたちづくるなんて、素敵。このうつわは、2022年夏の個展の限定品で、それこそ気づかないほどほんのりと緑がかっている。使ってみるとちゃんと違いはあって、クリアガラスより軽やかな印象。市販のプラ蓋や手持ちのウッドプレートとぴったり合う口径で、常備菜(写真は馬場ちゃんのポリポリきゅうり)の保存にもよい。そういうサイズの設定も個人作家の才能のうち、素敵。

[ある日のうつわ]

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わざわざ記録するのもどうかと思うのだけれど、3種類の蓋がどれもぴったりはまるのは、家事をする上ではものすごくありがたく、とても助かっている。いろいろと優秀なうつわです。

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照明のもとではほのかなグリーンが認識できて、同色のシャインマスカットも喜んでいる、きっと。

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作り手:永木卓
購入した年:2022年
購入場所:千鳥 UTSUWA GALLERY

衣奈彩子

ライター/ 編集者

子育てをきっかけにふつうのごはんを美味しく見せてくれる手仕事のうつわにのめり込んだら、テーブルの上でうつわ作家たちがおしゃべりしているようで賑やかで。献立の悩みもワンオペ家事の苦労もどこへやら、毎日が明るくなった。「おしゃべりなうつわ」は、私を支えるうちのうつわの記録です。著書『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス)
Instagram:@enasaiko 衣奈彩子のウェブマガジン https://contain.jp/

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