漆の匙で、身体も心もあたためたい!
これは岩本忠美さんの漆塗りのお匙、いろいろ。岩本さんは錆漆(さびうるし)というザラッとしたテクスチャーを持つ漆器を作るのだけれど、私はうつわではなく匙ばかり持っている。もちろんシンプルなお椀や鉢もいい。ならばなぜ、匙なのか。それは初めて会った時、岩本さんご自身が「匙は小さくて手間がかかるから、作るのしんどいんですわ。ほんまにしんどい」となんべんも、ほんとになんべんもおっしゃったからに他ならない。そんなに大変だっていうのなら「いっぱい使ってあげなくちゃ」である。ただただその思いで個展のたびの「お匙買い」が始まったのだった。岩本さんの匙は奥が深い。基本は角のない流線型の、口に含むと滑らかに舌に沿うフォルム。そのまま奥の方まで届くので、料理の温度が口内全体に伝わっていく。喉が欲する気持ちよさを、岩本さんはよく知っているのだと思う。この匙特有の口当たりは、私を、家族を虜にするのであった。ポトフに、おじやに、ヨーグルトに、よく使うからもっとあってもいいくらいだ。そして「お匙買い」は続いていく。
[ある日のうつわ]
漆の匙は、金属と違って、お皿に近づけたときに音がしないのがいい。
岩本さんは、深いブラウンの錆漆も作る。黒よりも料理になじんで美しい。
口あたりなめらかで、家族みんなが心を許している漆の匙。
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作り手:岩本忠美
購入した年:2008年〜
購入場所:イコッカ、doinel @doinel_shop
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