おしゃべりなうつわ

たっぷり飲みたい日に手が伸びる。尾形アツシさんのロングカップ。

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これは尾形アツシさんの刷毛目(はけめ)ロングカップ。
ロングというだけあって、高さ9.5センチと大きめで、片手でガシッと握ってたっぷりのコーヒーやお茶を飲みたい気分の時に手が伸びる。

うつわの表面に白土を刷毛で塗り装飾する技法を「は・け・め」という。皿や鉢、茶碗などにぐるりと丸く描かれることが多いので、すっきりとした筒型のカップは、意外だった。しかし思えば尾形さんは、刷毛目や粉引など古くからある焼物の技法をいつもモダンに表現して、陶芸の新しい魅力を見せてくれる人。すっきりデザインのロングカップに施したホーダー状の刷毛目は、なんだかとても新しい。

ある日、愛用しているタンブラーの横に置いてみて驚いた。サイズがぴったり同じではないの! たまらず尾形さんに報告すると「愛用品とピタリ、同じ手取りのものを直感的に選んで購入してくれたんですね」とおっしゃっていたけれど、タンブラーのようなプロダクトは、人の身体のつくりや現代の生活様式をマーケティングするなど、さまざまな要素を掛け合わせてデザインされているものだ。そういうデザインやサイズがフィットするいまの暮らしとはどういうものか、いつもアンテナを張っているからこそ、尾形さんという作家の思考を経由して「焼物で、このデザインとサイズ」が生まれたのだと思う。作り人の思考と手技に触れるたび、暮らしの道具とはつくづく奥深いものだと思う。

[ある日のうつわ]

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刷毛目を見ていたら、バウムクーヘンが食べたくなった日。

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236mlのタンブラーとちょうど同じサイズ。

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作り手:尾形アツシ @ogataatushi
購入した年:2023年
購入場所:sumica栖 @utsuwa_sumica 

衣奈彩子

ライター/ 編集者

子育てをきっかけにふつうのごはんを美味しく見せてくれる手仕事のうつわにのめり込んだら、テーブルの上でうつわ作家たちがおしゃべりしているようで賑やかで。献立の悩みもワンオペ家事の苦労もどこへやら、毎日が明るくなった。「おしゃべりなうつわ」は、私を支えるうちのうつわの記録です。著書『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス)
Instagram:@enasaiko 衣奈彩子のウェブマガジン https://contain.jp/

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