おしゃべりなうつわ

白米を大事に美味しくいただくルーティン。

251003-mimasakament-01.jpg

これは「美作(みまさか)めんつ」のおひつ。面桶(めんつ)と書く。炊いたご飯を保存する曲げわっぱだ。

岡山県の美作地域で採れる檜を側面に、杉を蓋と底に、山桜の樹皮を留めに使っていて、まず見た目がとても美しい。木肌は常に呼吸しているから調湿にすぐれ、冷めてもご飯がベタついたり、固くならない。抗菌作用があると言われ、ほんのり木の香がする。この香りが使ってからも続くことは、数年来、めんつの弁当箱を使っているからよく知っている。わっぱ弁当に詰めたお昼を初めて食べた学校帰り、長男が言った「すごくいい香りだね〜」という言葉と幸せそうな笑顔が忘れられない。このおひつは、そんなふうに弁当箱を愛用するお客様のリクエストに応えて生まれたものだそうだ。

よくわかるよ、その気持ち。だって、おひつというと大きくてしっかりしたものが多いなか、こちらはすっきり薄手でコンパクト。白飯二合用は、我が家のように圧力鍋で五合を炊いて、朝ごはんと弁当とおにぎり(捕食)を持たせたあと、鍋の中に申し訳程度に残るご飯を保存するにはちょうどいい容量だし、将来、夫婦ふたりで暮らすようになると想定すると、これくらいの大きさがベストだとも想像する。めんつならではの檜と杉が交わった爽やかな香りを気に入って、秋から春まで活躍している。夏場の猛暑のもとではさすがに使わなくなってしまったけれど、そのあいだは、中国茶の道具を入れたり。

【ある日のうつわ】

251003-mimasakament-02.jpg

2合がちょうど入るコンパクトな大きさ。

251003-mimasakament-03.jpg

お弁当箱とともに。檜と杉が交わる蓋の造りが美しいのです。

251003-mimasakament-04.jpg

何度も出し入れしてシンデレラフィットを見つけた中国茶道具たち。


251003-mimasakament-05.jpg

作り手:野間清仁

年代:2023年
購入場所:民藝展(日本橋高島屋)

衣奈彩子

ライター/ 編集者

子育てをきっかけにふつうのごはんを美味しく見せてくれる手仕事のうつわにのめり込んだら、テーブルの上でうつわ作家たちがおしゃべりしているようで賑やかで。献立の悩みもワンオペ家事の苦労もどこへやら、毎日が明るくなった。「おしゃべりなうつわ」は、私を支えるうちのうつわの記録です。著書『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス)
Instagram:@enasaiko ウェブマガジン https://contain.jp/

ARCHIVE

MONTHLY

秋snap
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.