
イギリスのおうち No. 2 『築400年!コレクター貴族のお屋敷』
秋晴れの週末、ずっと行きたいと願っていたお屋敷の一つ、イギリス中部ダービシャー州にあるコーク・アビーを訪れてきた。
1622年から約300年以上、ハーパー家という貴族に12代に渡って継承されてきたこのお屋敷。
社交嫌いで家に籠ることを好む主人が多かったこのハーパー家、7代目のヘンリー・ハーパー男爵は(出会いの場が家の中に限定されているからか)自分のメイドと結婚して世間を驚愕させ、10代目のヴォーンシー・ハーパー男爵は人との交流を避けて狩りや貝殻収集の方に没頭していた人だったそう。
出典:Wall Here
そしてこのヴォーンシーの死去後にお屋敷を受け継いだのが、しっかり者の娘ヒルダ。
何十人も居た使用人をスパッと解雇して、父親の膨大な自然科学コレクションや本もさっさと断捨離→売り捌いて、質素で切り詰めた生活を送ることに徹底していたのだそう。
たまに帰る実家で、「ちょっと、これ消費期限切れてるよ?」とか「空っぽのお歳暮の箱こんなに取っておいてどうすんの?」とか言って勝手に大掃除を始める我ら娘の遺伝子は、時と国境を超えるんですね。
しかしそんなヒルダが亡くなってから状況は二転三転して、後継者である甥のヘンリーを待っていたのは荒れ果てたお屋敷となんと800万ポンドの相続税!その金額に毎日£1300(現在の約100万円)の税金が加算されると言う窮地に陥っていたと言うのだからお気の毒。

貴族じゃなくって良かった・・・と胸を撫で下ろす。
苦渋の決断でヘンリーが廃墟と化したカーク・アビーをナショナル・トラスト/National Trust(注1)に売却したのが1985年。痛んだお屋敷にはなるべく手を加えず、『過去の栄光』の美学を映し出す意味も込めて、4年後に一般公開が始まりました。




受け皿の小ささが気になる移動式シャワー
ヒルダが売ってもまだまだあります、書籍
剥がれかけた壁紙に萌える
地下のキッチンの壁にあった
『Waste Not, Want Not(節約すれば事足りる)』
の額縁は倹約家だったヒルダが付けさせたのかな、と思いを馳せた私です。
注1:ナショナル・トラスト(National Trust)は、イギリスを拠点とする歴史的な建造物や風景、自然保護地域などを保護し、一般の人々に開放して楽しめるようにする、イギリスの慈善団体。
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