南仏プロヴァンスで猫さがし。

南仏でコルビュジエ建築を体感。後編。

毎日太陽がかんかん照りのプロヴァンスでは、ラベンダーが見ごろを迎えています。ラベンダー畑に車で近づくと、まだ花の姿は見えなくても、窓からぶわーーっと濃厚なラベンダーの香りが。それもそのはず、紫色の海かと思うくらいの、ダイナミックパノラミックラベンダー畑!

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さて、南仏のル・コルビュジエ作品(とアイリーン・グレイのE-1027)を巡る旅、前編に続き、後編をお届けします。

マルセイユを出て向かったのは、ロクブリュヌ・カップ・マルタン。モナコのすぐお隣、あともうちょっと走ればそこはイタリア、という場所に位置する町です。

カップ・マルタンにあるのは、世界遺産にも登録されている、コルビュジエの小屋(le cabanon)、それに隣接する、レストラン「ひとで軒」(l'étoile de mer)、近くにあるユニテ・ド・キャンピング(les unités de camping)、そしてアイリーン・グレイの建てたヴィラ、E-1027(la villa E-1027)。
これらをまとめて、この辺りのことを「カップ・モデルヌ」と呼ぶそうです。

見学は、完全予約制、ガイドさん付きツアーで。ちなみに今回、私たちが内部を見学できたのは、小屋と、E-1027のみでした。

まずは、カップ・マルタン駅の目の前にあるこちらの建物で、受付。

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受付を終えて、線路沿いの道を歩いて進むこと、約10分。植物に囲まれた入り口が見えてきます。

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緑のトンネルを抜けた先で目に飛び込んでくるのは、この海。

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青すぎて眩しすぎて、直視できません。

最初に見学したのは、コルビュジエの小屋。内部の撮影は禁止だったので、外観だけ。

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光を室内に入れるため、窓につけられた鏡。

体感としては、ええ、「狭い」。広さは8畳ほどしかないようです。
これももちろん、彼の考えた黄金比「モジュロール」を突き詰めていった結果。晩年を奥さまと過ごすために作ったそうですが、私が奥さまだったなら、もうちょっとどうにかなったでしょうが。と文句を言いたくなる狭さです。

ベッドも幅1メートルもなさそうなものが1台のみ。ガイドさんによれば、そこには奥さまが寝て、コルビュジエは床に寝てたんだとか。トイレなんて、おしりをふくためには、ひじをあちこちにぶつけなくてはならない、そんな広さです。なんならトイレに扉ないし。

ただ、僭越ながらナイスアイディアと言わせていただきたい点は、この小屋が、レストラン「ひとで軒」にくっつけて建てられていて、直接、小屋からレストランに通じるドアがあること! これ、食いしん坊なら誰でも憧れることですよね。私だったら、どこのお店をくっつけよう。ぎゅるぎゅるぎゅる。

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小屋のそばには、もうひとつさらに小さな小屋があって、こちらはアトリエ。こんな海を見ながら作業してたら、ぽけーっとしちゃいそうなもんですが、彼は大丈夫だったのでしょうか。

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お次は、アイルランド出身のデザイナー、アイリーン・グレイが設計したヴィラ、E-1027へ。先ほどの小屋とうって変わって、モダンで綺麗でかっこいい。広い。インテリアデザイナーだけあって、室内もスタイリッシュ。色合いも、敷かれているラグもかわいい。テンション200パーセントアップです。

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こちらの建物、なんと完成したのは、約90年も前の1929年だと言うから驚き。しかも、このヴィラに夫婦で入り浸っていたというコルビュジエが、先ほどの原始的とも言える極小の小屋を建てたのは、それより20年も後だというのも、なんだか不思議に感じてしまいます。

E-1027での写真撮影は、コルビュジエが壁に描いた絵を除けばOKです。ちなみに、この壁画のせいでコルビュジエは、アイリーン・グレイと仲違いしたとか。

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リビングと、そこからの景色。船をイメージして建てられていて、窓からの景色も、船の上にいる気分を味わわせてくれます。

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玄関を入ってすぐの仕切りには、「笑うの禁止」との注意書き。
帽子を置く棚には「帽子」の文字。その他、パジャマ置き場にはきちんと「パジャマ」と書かれていたり。

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寝室と、半分外にあるキッチン。

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ゲストルームの鏡。庭には、プールみたいな歓談スペース。水ではなく、砂浜の砂を入れていたらしい。

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今でこそとても綺麗に管理されていて、一般公開もされているE-1027ですが、過去にはあれやこれやとあったようで、その波乱万丈な人生(家生)から、日本では「幻の傑作住宅」とまで言われています。この場所にいる時だけでなく、その場を離れてからも、どんどんと興味が湧いてしまう、おもしろ建築でした。

あれ、マルセイユでもカップ・マルタンでも、猫、いなかったな。
次回は、きちんと猫ブログに戻ります。

Cap Moderne
https://capmoderne.com/en

ツアー予約はこちらから
https://capmoderne.monuments-nationaux.fr
料)18ユーロ
※英語ツアーあり

中川史恩

都内在住、猫好きエディター。フランス生まれの保護猫ミャウと暮らす。好きな食べものは帆立の貝柱とチップス全般。苦手なものは直射日光。将来の夢は鶏と暮らすこと。@chez_miaou

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