運河に囲まれた製粉所が、シャンブルドットに。
ブルターニュを旅していてよく耳にしたのが、毎夏、バカンスでパリからブルターニュに来ている、という人のお話。みなさん、お気に入りの街や宿があるようです。そんなライバルたちの存在もつゆ知らず、今回、宿の予約に少々出遅れた我々ですが、そのおかげもあってか、普通だったら見逃しそうな場所にある、素敵な宿に滞在することができました。
それは、海辺の街サン・マロ(Saint-Malo)に繋がるランス川を、ずーっと上流に遡って行った先、エヴラン(Évran)という村にある、一軒のシャンブルドットです。
写真右の建物がル・ムーラン・デュ・モテ。奥に見えるのは、運河の水門(Écluse du Mottay)。
名前は、ル・ムーラン・デュ・モテ(Le Moulin du Mottay)。ランス川と、その脇を流れる運河(Canal d'Ille-et-Rance)に挟まれた中洲のような場所に建っています。
ここのオーナーは、イギリス人のご夫婦。デザイナーのご主人が、19世紀に建てられた小麦の製粉所をこつこつとリノベーションし、ご自宅兼シャンブルドットに。以前ご紹介したフリッシュ・ラ・ベル・ド・メのように、「かつて●●だった△△」好きの私としては、その触れ込みだけでもうすでに高得点です。
部屋にあるベッドや椅子などの家具も、多くがお手製。(家具は販売もされているので、気に入ればオーダーして購入可能です。http://miltonpriest.com)
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この建物を買い取った当時、歴代の家主の趣味が壁の奥に残されていて、壁や天井全面にカーペットが貼られていたり、無理に山小屋風にアレンジされていたりと、それはそれは不思議なことになっていたそう。それをひとつひとつ剥がし、元の製粉所の作りを見せるデザインに変えた(戻した)のが、今のオーナー。
石造りの壁に、製粉所で使われていた巨大なミル、天井に残る配管の跡などのインダストリアルな雰囲気が合わさって、すみずみまでじっくり見物したくなる建物です。
宿泊者用の部屋は最上階(日本式の3階部分)。階段を登ったところにあるリビング的なスペースも自由に使えます。(1〜2階はオーナーのご自宅部分と知りつつ、まじまじと見学、あちこち写真を撮らせてもらいました。)
家の裏には川に囲まれた庭が広がり、ぐるっと一周散歩するのにぴったり。運良く天気がよければ、運河にカヌーを浮かべて、のんびり水上散策をすることもできます。運河沿いには、細い道がベティヌ池(Étang de Bétineuc)まで続いているので、サイクリングもおすすめだとか。
オフィーリアが流れてそう。
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この宿に泊まることができるのは、運河がオープンしている4月〜9月の間だけ。アクセスも決して良くはありませんが、現実世界から離れてリフレッシュしたい、みたいな時にはこれ以上ない隠れ家です。
こんにちは。看板犬のブロンコです。
今回ここに泊まって、オーナーの人生も、建物の人生(?)も身近に感じられる、小さなシャンブルドットに泊まる旅っていいな、と改めて思いました。地元の人しか知らないような場所を教えてもらって行ってみたり、予定も決めず、天気次第でカヌーでもしよっか〜と、ゆる〜っとした計画の旅。
行こうと思えば、どこへでも行けるようになった時代だからこそ、こういうの、前より重視されてますよね。ちなみに、観光地を巡るだけじゃない、ちょっと違った旅の良さを私に教えてくれたのは、フィガロだと思っています。いつもお世話になっております。
宿泊は朝食つきで一泊103ユーロ〜。新鮮なフルーツが美味しいのは、南仏もブルターニュも一緒。
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最後に、この宿から車で15分ほど離れた場所にあるディナン(Dinan)も、絶対おすすめしたい街。建物の2階、3階部分が道にせり出してくるタイプの木組みの家が、中世の雰囲気をぷんぷん醸し出しています。
夜、雨上がりの濡れた石畳に、一匹の猫。
この光景だけで「この街、大好きだわ。」と思えるくらいに単純な性格の私です。
「あなた、あたしのことつけてきてますね!なにやつ!」
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