デコラトリスによる洗練探しの旅

旅の備忘録「夜のエルミタージュ美術館」

秋以降、ヨーロッパのテーブルウエアブランドの仕事がいくつかあり、改めて、食器ブランドの歴史を紐解いています。文献資料を読み返すうちに、昨年夏に出かけた「エルミタージュ美術館」で、長年の憧れだった「ウエッジウッドのフラッグサービス」を鑑賞した感動が、再び蘇ってきました。

「ウエッジウッド」をワールドワイドなブランドに押し上げた背景の一つは、エカテリーナ二世の為に製作したこのディナーセットがあったからだとされていて、ずっと観たいと思っていたものの、

「しかし、ロシアに行くのは。。」と、なかなか実現しませんでした。

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コートダジュールに行くことは決定しましたが、

「直帰せず、ついでにどこか別の国にも立ち寄りたい」 

欲を出し、ぼんやり地図を見ながらフライト検索をしていると、ニースからサンクトペテルブルグまで、たったの4時間弱だということに気づき、思い切って出かけることに。

そうと決まると、行動は加速。ホテルを予約し、最もプライオリティの高い訪問先である、この美術館など情報検索の開始です。

嬉しいことに、ちょうど到着日の木曜日は、唯一閉館時間が夜9時。チケットもそれに対応するものを事前手配。当日、オンタイムフライトだけをひたすら祈ります。

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さて、無事にホテル到着後、入館締め切りの20時になんとか駆け込み。

小一時間だけでもざっくり観ておくと、翌日の動きがスムーズです。

とはいえ、所蔵作品はルーブルの10倍で、建物構造もより複雑な巨大美術館。じっくり鑑賞するには、何日かけても足りないほどのスケール。

エルミタージュは、ルーブル同様元宮殿の建物で、バロックからネオクラシックまでの長期に渡り、増改築を繰り返してきました。館内では、ルーブル宮を遥かに凌ぐ豪奢で迫力ある室内装飾にも、目を奪われます。

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ヨーロッパの強国に負けじと躍起になって、国費を削り、西欧文化を取り入れたロマノフファミリー。

辺鄙な寒冷国で、何かにつけて他国に後れをとっていたが故、抱いていた積年のコンプレックスを、贅を尽くした西欧建築や貴重なアートピースを誇示することで、一気に排除しようという、皇帝達の威信が伝わり、身震いするほど。

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「大使の階段」  各国大使を迎える際のエントランスは、まずこちらから。

この豪華絢爛さで、言葉なくしても、まずはロシアの知力、財力、技術力あらゆる限りロマノフパワーを見せつけ、圧倒。外交を有利な方向に導いたのでしょうね。

日が沈みかけたこの時間帯、さすがに人影はまばら。

大理石と黄金の壮麗なバロック空間が、しっとりとした空気に包まれ始めます。

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24金箔で張り巡らされた「黄金の間」

皇帝のプライベート空間だった部屋は、シャンデリアの明かりに呼応して、さらに煌めきを増し、圧巻。高貴で艶やかな輝きをみていると、こんな時間帯のエルミタージュを経験できただけでも十分に満足と思えます。

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しかし、そんな崇高で優雅な気持ちに浸っている時間はありません。

「ヨーロッパ美術館あるある」は、ロシアでも同様。

閉館時間が近づくと、スタッフの方がそわそわしだし、出口と思わしき方へ向かい始めています。

気づいたら、他に鑑賞しているような方が見当たりません。

あら、大変。もしや私達だけ?

日本と異なり、閉館時間=スタッフ退出時間、ドアクローズ。

日本であれば、閉館時刻を多少過ぎてもOKですが、照明が消され始めた迷路のような巨大宮殿で、万一出口が見つけられなかったら、冗談ではなく閉じ込められ、月明りだけを頼りに一晩過ごすことになってしまう。。そんな悲惨な憶測が、この国なら、リアルに起こりそうで(すみません、勝手な先入観☆)先ほどのアンニュイな余韻はそこそこに、大急ぎで出口を探し、帰途につきました。

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そして翌日、リュイナールと共に、快適な朝を過ごして

https://madamefigaro.jp/blog/yoko-tagaya/post-127.html

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待望の「フラッグサービス」と邂逅することになるのです。

続きは次回へ。

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多賀谷洋子

食空間デコレーター。雑誌編集、外資系客室乗務員を経て、テーブルコーディネーターに。ブライダルやパーティ、商業施設から個人宅まで幅広くインテリアデコレーション手がける。雑誌やレシピ本のスタイリングでも活躍。パリスタイル主宰、フランスチーズ鑑評騎士の会 チーズシュヴァリエの顔も持つ。著書「美しくなるチーズレシピ:“チーズは太らない!”ダイエットも、アンチエイジングもチーズにおまかせ!」が話題。

http://paristyle.jp/

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