メゾン・ラデュレの新作「ウジェニー」
デコラトリスの多賀谷洋子です。
ラデュレ待望の新作「ウジェニー」がついに日本に上陸。
日本では、19世紀のヨーロッパを代表する美貌の王妃というと、ハプスブルク家のエリザベート皇后の名が真っ先に浮かぶかように思いますが、同時期に、その人気を二分するほど名を馳せたのは、このウジェニー皇后です。圧倒的なカリスマでトレンドセッターであった彼女は、art de la tableにも影響を与えた才気あふれる女性だったといわれています。
フランスのテーブルウエアのブランドの製品でも、ウジェニーにインスパイヤされたものがいくつかありますが、ナポレオン三世妃、ウジェニー皇后の名を冠する、この魅惑的なラデュレの最新クリエーションを、フランスの雑誌などで目にして以来、日本での発売を心待ちにしていました。
わくわくしながら、麗しきトワル・ド・ジュイのボックスを開封。
カメオを彷彿させるような洗練されたビジュアルで、気品あるアカンサスのガーランドとロゴの刻印が優雅。
可憐な「マカロン」のアイコンがマリーアントワネット王妃だとすると、
こちらは、より大人のシックさが加わった雰囲気。
王室から王室に嫁つぎ、お城の中のことが全ての基準で、世間一般のこととは全く疎遠であったとされている、ルイ16世妃のマリーアントワネット。
「パンがないなら、お菓子を食べなさい」
傲慢で贅沢三昧のレッテルを貼られてしまったイメージがあるかもしれませんが、真実は、食が細く、ソフトな味わいのものがお好みで、当時のパンの主流であった全粒粉などの黒系の固いものが苦手。そのため、バターたっぷりのブリオッシュやクロワッサン、クグロフなどをついばむように食していた天真爛漫な王妃は、
「あら、パンがないなら、私と同じようなパン(お菓子)を食べればよいのにね。」
現代で言うと、天然? 情報が遮断された王室の中のことしか知らないため、悪気などある筈なく、むしろ自然に、
「なぜ、食べないのかしら?」こんなニュアンスだったとか。
そして、このお菓子とはブリオッシュのことだったのではと言われています。
しかし、最高級品だけに囲まれてきた彼女だからこそ、比類なき美的センスの持ち主だったため、ファッションやインテリアなどの流行を作った当時のトレンドセッターだったことは、あまりにも有名です。
一方、スペインの大貴族出身の令嬢で、一回り以上年上のナポレオン皇帝を美貌と知性で虜にし、皇后として見染められたウジェニー。
ナポレオン三世のパリ近代化に助言するだけでなく、現代のハイブランドの多くを確立したのも彼女の影響力なくしては語ることはできません。
クリストフル、ベルナルド、ルイヴィトンなど名をあげるときりがありませんが、技術の優れた小規模な職人の工房が、一躍有名になり、国内外の王侯貴族から受注されるきっかけとなったのは、当時、彼女の審美眼から商品をオーダー、そして、王室御用達の称号を与えたことからとされています。
フランス王家で、アントワネット以来の海外からのブライドである彼女は、王妃を崇拝し憧れていました。彼女の遺品もコレクションし、調度品などにも取り入れます。そんなこともあり、この時代のインテリアは、直線的なネオクラシックをベースに、黒檀などシックで落ち着いた色合いと雰囲気。とても理知的で洗練されていて、私も大好きなスタイルです。
前置きが長くなってしまいましたが、
こちら、ラデュレの「ウジェニー」は、フルーツやキャラメルなどのフィリングとサブレを、チョコレートでコーティングしています。
ちょっとお行儀がよくないですが、好奇心には逆らえず裏返しもどうぞ。
さて、まずは、大好きなピスタッシュから。
ナポレオン三世様式のカップは割れてしまったため、雰囲気が合いそうなラリックのデミタスに、台湾の熟茶を合わせます。
こちらのデミタスについては、是非別記事もご覧ください!
https://madamefigaro.jp/blog/yoko-tagaya/post-205.html
ホワイトチョコやサブレの様々な食感と風味が合わさり、より奥行きのある味わい。
感動的な美味しさ!!
熟茶との相性はもちろん文句なくて、ロゼシャンパーニュでも至福の時間が過ごせそう。
余韻の長い風味が欲しくなるこれからの季節には、とても理想的なお品かもしれませんね!
「ウジェニー」を堪能しながら、二人のセレブリティの歴史を紐解き、邂逅する時間。
湯気に戯れながら過ごす、そんな時間がよりいとおしくなる季節の到来です。
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