台中ミシュラン二つ星茶芸館「無為草堂」
年末年始は今年も台湾で過ごす予定ですが、突然、予定に入れていなかった台中に行くことを思い立ち、コロナ渦前に出かけた時の画像を、改めて眺めています。
まるで戦前の日本にタイムスリップしたかのように素朴な台南と高雄をメインに、ほっこり、のんびり過ごすのが、冬の恒例となっているのですが、閉業したと思っていた台中の茶芸館が、実は営業していることを知り、再訪したくなったのです。
台湾の中で、台中はあまりスポットが当たらない場所かもしれません。台北から新幹線で一時間と、ほどよく都会であり一通りの有名店も揃っているものの、惹きつけるような観光要素が希薄な印象。
下は、「黄金の大仏様」として知られている、臨済宗妙心寺派の寺院「宝覚寺」の黄金の弥勒大仏像。
「笑う門には福来る」「金色」と、パワースポットの条件は十分、きっと高雄の蓮池譚のように、ご利益を求める人でごった返しているに違いないと、勇み立ちながら向かったものの、人気がまばら。
神社ではないし、そもそも、こちらのお寺は第二次世界大戦の日本人犠牲者が大勢眠っている神聖な場所ですし、そんな目的で行く場所ではないのかもしれませんね。
(※こちらの仏像は今年修復し、現在は灰色だとのこと。一体、どんな雰囲気に?こちらも確認しに行かねば!)
台中は一度行けばもう十分かな、というのが正直な感想だったのですが、唯一、台北や台南では見ないような風流な茶芸館が、この地にはあるのです。
ミシュラングリーンガイド☆☆「無為草堂」です。
コロナ渦、何度か検索したところ、「閉業」と記載され、SNSなども更新がされていなかったため、なんとも残念に思っていましたが、あれは、なんの間違いだったのでしょうか。多少、改装したようですが、現在はSNSも頻繁に更新し、コロナ前と変わらぬ様子で営業しています。
さて、こちらのお店ですが、大通りに面していながらも、喧騒とは裏腹の静かな別世界。
日本と中国の折衷様式で、池を囲むように風流な個室があります。
敷地面積は400坪で、200席とのことで、この規模の茶芸館は台湾でも貴重なようですが、粗雑な感じは皆無で、サービススタッフは感じのよい方ばかり。
ぼんやりと池を眺めていると、旗袍風の作務衣を纏った古式ゆかしい台湾美女が、お茶を入れて下さいます。
一切無駄のない動きのお点前に、うっとり見とれてしまうほど。所作もとても美しい方でした。
頂いた杉林渓高山烏龍茶の美味しいこと!
繊細な口当たりとほんのりとした甘み。阿里山や凍頂烏龍などとは異なる、高山茶ならではの爽やかさが心地よくて、汗ばむような台湾の気候だからこその味わいに、酔いしれるよう。
私は、サレ&ドゥーのように鹹点(シェンテン)と甜点の点心ですが、家族はランチセットを。
台湾のレストランは9時閉店というところが多く、ヨーロッパの遅めのディナーに慣れていると、夜がものすごく慌ただしいため、ランチはスキップし、点心程度でセーブします。
無為草堂という店名は、老子の「無為」の精神が根底にあるそうで、
それは、無理に求めず、自然に従うのは「無為」に似ているが、常に「有為」を完成する。だから、「無為」は何もすることではなく、強制しない「有為」ということ。
そして、茶室は「人と人、人と自然、人とお茶」が集まり、出会う場所なのだとか。
余談ですが、
エアラインに転職前の一年半、新卒で経済紙の編集部に勤務していました。その雑誌は当時、中国古典や人間学を扱うことが多く、内容を理解するには、基礎知識があまりにも欠如していて、心の中で悲鳴を上げながら日々を過ごしていましたが、年月を経て、多少知識が増えると、先人たちの人の営みに対する考察の奥深さが、国境を越えて、令和の時代にも共通しているのでは、と思うことが多々。
これから慌ただしく季節の到来ですが、年末年始は静謐、清廉な空間と精神で、そして、あの杉林渓高山烏龍茶の湯気と香りに包まれる時間を過ごすことができそう。
そんなことを心の支えに、怒涛の日々を乗りきろうと思うこの頃。。。
☆無為草堂
公益路二段106號, Taichung, Taiwan
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