クリエイターの愛用デジタルツール。 #02 可愛くてシュールな、宮本彩菜のクリエイションの秘密。
Culture 2016.11.16
東京ファッションウィークの最中、超多忙に過ごす人気モデルでクリエイターの宮本彩菜をキャッチ! 多くのフォロワーを抱えるインスタグラムで、独特な世界観を感じさせるムービーや写真を投稿し、多才ぶりを発揮している彼女。ミステリアスな雰囲気の中に時折のぞくナチュラルな笑顔が人を惹きつける。表現者としていったいどんなものを好むのか? どうすれば彼女のような写真が撮れるのか? どんな日常を過ごしているのか? インスタグラムでの投稿を軸に、宮本流デジタルライフを探る。
宮本彩菜が写真を撮り始めたきっかけは、iPhoneだという。約3年前にガラケーを卒業し、iPhoneに変えたことから、クオリティの高い内蔵カメラを使ってさまざまな写真を撮りだした。写真について意識的にこだわりはじめたのは、このころから。ガラケー時代はインスタグラムなどのアプリが使えなかったため、「こんなにも違うものか」と驚いた。「ガラケーを使っている時はまだ学生で、質のよい写真を撮りたいとか、そういう考えもなかったので(笑)。修学旅行にインスタントカメラを持って行ったり、その程度でしたね。当時からYouTubeに動画をアップしたりはしていましたよ」。iPhoneカメラは、新機種が登場するたびにアップデートされることも魅力のひとつだと話してくれた。


Instagram@catserval
インスタグラムに投稿する時は、あまり考えすぎずに自分らしいものをアップするようにしているそうで、基本的には「みんなが上げてないようなものを上げたい」という考えが根底にある。「よくあるような写真には(気持ちが)引っかからないことが多いので。9枚ほどの画像がフィードに表示されるのを見て『おっ!』てなるか、ならないか、かなと。自分が見ていて気になるものかどうかを考えますね。人が思いつかないこととか、自分の好きなものは躊躇なく上げています」
彼女にとっていままでの自身の投稿の中で最も印象的だったのは、彼女自身が歌っている様子を撮影した動画、通称アヤオケ(#ayaoke)。大きな反響があり、いいね!数でもバズが起きた投稿だ。身近な人たちからの反応も多く、心に残っているという。モデルとして見せるクールな表情とはまた違う、楽しそうに歌う様子ときれいな歌声が何とも魅力的で、つい何度も再生してしまった人は多いはずだ。彼女が毎日決まって見るアカウントなどは特になく、検索ページのタイムラインにランダム表示されている写真をチェックする程度。「女性の歌声が好き」という彼女は、ビヨークやソランジュなど、女性アーティストやMoMAなどアート系アカウントをフォローしている。
「自分で何かをゼロから創り上げるというより、“日常の中にある非日常”が好き。シュルレアリスムとか。先日も『ダリ展』を観に行ってきたんです。でも自ら分かりにくいものを作ろうとは思っていないです。コンセプトとかも特に決めていなくて、直感でよいと思ったものを撮って上げるようにしています」
*宮本彩菜が愛用しているデジタルツールやアプリを次ページで紹介!
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宮本彩菜流デジタルライフのスタンダードは、iPhone、iPhoneアプリ、Surface。「モザイクとか、インスタグラムのオリジナルの編集機能でできないことは、写真をアニメーションにする『Glitché(グリッチェ)』や、『FrameMagic(フレームマジック)』を使ったりしています。『Glitché』は、静止画だけじゃなくて、gifに変換して10枚のパラパラ漫画みたいにできるところが魅力」。自分で撮影した画像や写真など静止画と動画をコラージュできる「Video Collage(ビデオコラージュ)」は、レイアウトが豊富なところが気に入っているという。


Instagram@catserval
「動画撮影については、水中映像が撮れるスポーツ・アウトドア用の小型&軽量カメラ『GoPro(ゴープロ)』。自転車に付けて撮影できるし、ソフトなのでアップデートしていけばいいので便利。それに画質がいいんです。ノスタルジックな雰囲気になるアプリ『8ミリカメラ』もおすすめ」。彼女はYouTubeにも「AYANA CHANNEL」というコンテンツをアップしている。動画編集のために愛用するのはSurfaceだ。「あとは、ほとんどひとりで撮るので三脚も必要ですね。いつも、誰でも使えるレベルのものしか使っていないんです」
「Glitché」©Glitché Ltd 「FrameMagic」©MobiLab Co., Ltd.
「Video Collage」©out thinking limited 「8ミリカメラ」©Nexvio Inc.
休日は、走ったり、ヨガをしたり、絵を描いたり、料理したり、映画を観たり、美術館へ行ったり、動画を撮ったり、愛犬と遊んだり……と忙しく過ごす宮本彩菜。ゴダールの映画『気狂いピエロ』を観ながら描いたりもするという絵画は、主に水彩画やボールペン画。さらに、それをiPhoneアプリで加工することも。「GarageBand(ガレージバンド)」で音楽を作ったりもするそうで、自宅はアトリエさながらのようだ。プライベートな時間も、自然やものづくりと密接に関わる日々を過ごしている。手法は違えど、彼女には表現したいものが常にあるということが伝わってくる。
AYANA CHANNEL DAY#5 - LOLLIPOP DAY
いわゆる“メカ系”を好んではいるが、作る段階で難しいことはせず、シンプルなのが彼女流。例えば、連写で撮影した何枚もの画像を重ね、背景をくり抜いた画像とコラージュしたりと、加工する工程はむしろハンドメイド感覚だ。アナログパーツと最新ソフトウェアをミックスすることで、宮本彩菜独特の世界観が完成している。
心地よく響く落ち着いたトーンの声で、ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくれた宮本彩菜。インタビューの終盤、「いま、ここにすごく行ってみたいんです」と、iPhoneでさっと検索して見せてくれた写真は、池袋の「老眼めがね博物館」!? “日常の中にある非日常”と自身が表現したように、きっと彼女は何気ない風景の中にふとおもしろいもの、魅力的なものを見つける天才。ますます活躍の場を広げる宮本彩菜のクリエイションに、これからもぜひ注目したい。
宮本彩菜 Ayana Miyamoto(sora inc.)
1991年大阪府生まれ。2013年より、広告や雑誌などでモデルとして活躍する傍ら、自ら撮影・編集した写真や動画、アニメーション、イラストなどが評判となり、クリエイターとしても国内外で注目を集める。
https://www.instagram.com/catserval/
https://www.youtube.com/user/AyanaChannel
http://sora-inc.net/miyamoto_ayana/
texte : YUKO AOKI