1:写真家ソール・ライターを追って、NYへ。
Culture 2017.05.09
ソール・ライターのアトリエへ。
ソール・ライターは1923年ピッツバーグ生まれ。まだその存在を知らない人も多いかもしれませんが、ハッとする色使いとユニークな構図のストリート写真が改めて再評価され、じわじわと人気を博しているNYの写真家です。「ライフ」「ハーパーズ バザー」などのファッション写真で一世を風靡するが、ある日突然、表舞台から姿を消してしまいます。その後は身近なストリート写真を撮り続け、ささやかな日常を送ります。
本誌4/20発売6月号では、「写真家ソール・ライターを知ってますか?」と題し、8ページにわたってその魅力をご紹介しています。ソール・ライターを敬愛する写真家・小浪次郎さん(現在NY在住)に、彼が惹かれるソールの写真をセレクトのうえ、その思いを寄稿していただいています。また、ソールの足跡を辿るため、NYのアトリエの様子も紹介しています。NYではアトリエ以外にも、アート好きな方にお薦めのスポットなどいろいろ訪ねてきました。誌面と合わせてお楽しみください。
アトリエはイーストビレッジの歴史あるアパートの一室にありました。現在は財団が受け継いでいます。
アトリエについてざっとおさらいと、誌面では伝えきれなかったことを少し。ソールのアトリエはイーストビレッジにあります。隣の教会の牧師が、このアパートにアーティストに入ってほしいと、建てたそうです。大きな北向きの窓が特徴で、絵を描いたり写真を撮ったりなど、作品制作には北から入るやわらかい光が適しているそう。ソールはここに暮らし、北向きの部屋で毎日絵を描き、写真の作業をしていました。
ソールがいつも絵を描いたり写真の作業をしていた、北向きの部屋。
アパートの隣の教会。
ソールが使っていたカメラやスライドなど。表紙を飾った「ハーパーズ バザー」も。彼はこのデスクで毎日絵を描いていた。右側のカメラは13歳の時、母にねだって買ってもらったDETROLA。おもちゃ的なカメラだそう。


左:ソールがいつも座っていたチェア。右:暖炉の上には宗教的なオブジェや古い写真などが飾られている。若き頃のソールと、パートナーのソームズ・パントリーの写真も。
そして反対の南側の部屋には、倒れそうなほどに積み上がった写真のBOXが部屋のあちこちに。
南向きの部屋。


南向きの部屋の一角。奥には膨大な量の写真が整理されている。
この膨大な量の写真をコツコツと整理しているのは、ソール・ライター財団ディレクターのマーギット・アーブさん。マーギットさんは、18年間ソールのアシスタントを務めた盟友。彼へのあたたかい思いが言葉や行動の節々から感じられます。「この部屋(北向きの部屋)には本当にいろんなものがあふれていて、ここを訪れた人はそれをくぐりぬけてソールのところへ行くの。話題もあっちへいったりこっちへいったり(笑)、自分の言いたいことを絵や写真を出しながら話していました」。
プレスツアー当日は、ICP(International Center of Photography)アソシエイト・キュレーターのポリーヌ・ヴェルマールさんもいらっしゃいました。「彼の展覧会が行われた時、NYもパリもサイン会でものすごい行列ができました。それまでどんな写真家がサイン会をしてもそこまで並ぶことはなかったというほどに。ソール・ライターの名前も作品も、そこまで売れていないのに。彼は日本の美や文化をとても愛し、影響を受けていました。東京でもこれくらいの熱量で迎えられるのではないでしょうか」。彼女は、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の展覧会『ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展』のキュレーションも手がけています。


左:マーギット・アーブさん。右:ポリーヌ・ヴェルマールさん。
このアパートは本当にアーティスティックな空間で、壁、天井、キッチンなど、滞在しているだけでも見どころがたくさんありました。


左:壁にかかったたくさんの絵画と、味のある天井。右:入口入ってすぐの一角。
可愛らしいキッチンにも絵画が飾ってあります。
アパートには中庭もありました。ソールは「身近にこそ美がある」と言いながら、庭園内をよくほうきで掃除していたそうです。
>>ソール・ライターの作品を見てみよう!
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Bunkamuraザ・ミュージアムで、写真家 ソール・ライター展開催中!
ソールが毎日歩いていた町の様子は誌面をご覧いただくとして。
4/29、Bunkamuraザ・ミュージアムで『ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展』がスタートしました。まだ彼の作品を見たことがない人へ、いくつか作品をこちらでもご紹介します。
《カルメン、『Harper’s Bazaar』》1960年頃 発色現像方式印画
《ペリー・ストリートの猫》1949年頃 ゼラチン・シルバー・プリント
《天蓋》1958年 発色現像方式印画
《足跡》1950年頃 発色現像方式印画
《ジェイ》1990年頃 印画紙の上にグワッシュ、カゼインテンペラ、水彩絵具
以上すべてソール・ライター財団蔵 ⒸSaul Leiter Estate
写真だけでなく絵画も愛していたソール・ライター。展覧会は、財団所蔵の200点以上の写真作品に、絵画作品スケッチブック、その他カメラなど貴重な資料も集まった日本初の回顧展となっています。“カラー写真のパイオニア”と称されたソール・ライターの、素晴らしい色彩世界に浸ってみてください。
ソール・ライター。
photo:Margit Erb ⒸSaul Leiter Estate
→ 2:ソール・ライター好きへのお薦めアートスポットetc.へ続く
協力:ニューヨーク市観光局
『ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展』
会期:開催中~6/25
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)
営)10時~18時(金は~21時)
休)5/9、6/6
料金:一般¥1,400
問い合わせ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)
※Bunkamura ル・シネマにて、映画『ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』も上映予定。『ソール・ライター展』のチケット提示で¥1,200から¥1,000に割引になります。詳細は公式ホームページで紹介。展覧会と合わせてどうぞ!
www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_saulleiter
photos:OMI TANAKA