立田敦子のカンヌ映画祭レポート2017 #05 女優の鏡!イザベル・ユペールが、 「ウーマン・イン・モーションアワード」を受賞。

Culture 2017.05.25

 カンヌ国際映画祭の期間中は、毎日のようにレセプションが開かれていますが、なかでも最も傑出したイベントが、オフィシャルパートナーであるケリング主催のディナーです。

 ケリングはサンローランやグッチ、バレンシアガ、ボッテガ・ヴェネタ、ステラ マッカートニーなどを保有し、ファッション業界でも LVHMなどと並ぶ企業グループ。CEOのフランソワ=アンリ・ピノー氏は女優サルマ・ハエックの夫としても有名です。

 このケリングがカンヌのオフィシャルパートナーとなった3年前より、カンヌ期間中に実施しているのが、トークセッションと「ウーマン・イン・モーションアワード」のセレモニー&ディナーです。
 女優の華やかな活躍が目立つ映画界ですが、業界全体としてはまだまだ男性社会。女性監督や女性プロデューサーの数も少なく、カンヌでもオフィシャルセレクションに選ばれる女性監督が少ないことが、毎年のように議題にのぼります。「ウーマン・イン・モーション」は、そうした映画界で、女性の活動や地位の向上について語り合いサポートし合おうというプロジェクトです。

 アワードのディナーが開催されたのは、映画祭会場や海を見下ろす旧市街の丘の上に建つ市庁舎のガーデンの特設会場。今年は70周年ということもあり、例年にも増して顔ぶれも豪華!
 ユマ・サーマンやパク・チャヌク、サンドリーヌ・キベルランといった審査員メンバーをはじめ、カトリーヌ・ドヌーヴ、シャルロット・ゲンズブール、ジュリエット・ビノシュなどの大物フランス女優、リヴ・ウルマンやアニエス・ヴァルダなどの重鎮が駆けつけました。日本からは、コンペに『光』が選出されている河瀬直美監督が登場。また、映画界との関係が深いファッションデザイナー、ジャン=ポール・ゴルチエの姿も。

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審査員メンバーを務めるユマ・サーマン。©Venturelli/Getty Images for Kering

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シャルロット・ゲンズブールは、夫のイヴァン・アタルとともに。©Venturelli/Getty Images for Kering

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フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴ。©Venturelli/Getty Images for Kering

 カンヌ国際映画祭ディレクターのティエリー・フレモー氏の紹介に続き、今年の「ウーマン・イン・モーションアワード」を受賞したのはイザベル・ユペール、64歳。

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アワードを受賞したイザベル・ユペールと、ケリング会長兼CEOのフランソワ=アンリ・ピノー氏。
©Venturelli/Getty Images for Kering

 昨年のカンヌのコンペでも高い評価を得た、ポール・バーホーベン監督の『ELLE(エル)』(2017年8月公開)で、フランス語映画にもかかわらず今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされる、という快挙を成し遂げたユペール。今年のコンペにセレクトされている、巨匠ミヒャエル・ハネケの新作『Happy End(ハッピー・エンド)』にも出演しています。

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『Happy End(ハッピー・エンド)』より。©French Association of the International Film Festival

カンヌでは、『ヴィオレット・ノジエール』(1978年)と『ピアニスト』(2001年)で、2度の最優秀女優賞を受賞していますが、現在でも主演作が毎年のように公開される、超売れっ子のユペールだけに今後も受賞の機会はありそうです。美しく、強く、チャレンジを恐れないその姿勢は業界からの支持も高く、まさに女優の鏡ですね。ユペールの受賞は、会場でもスタンディングオベーションで迎えられました!

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映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。
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