立田敦子のカンヌ映画祭レポート2017 #03

コンペに2作品選出のNetflix、 フランス映画界とのバトル勃発!

特集

配信サービスは、映画界でもどんどん存在感を増しています。アカデミー賞では、アマゾン・スタジオ配給の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(公開中)が6部門ノミネート、2部門(主演男優賞、脚本賞)受賞を果たして、話題になりました。
 今年のカンヌも、配信サービスの作品が多く選出されています。19本のコンペ作品の中、トッド・ヘインズ監督の『Wonderstruck(ワンダートラック)』がアマゾン・スタジオ配給、ポン・ジュノ監督の『okja(オクジャ)』とノア・バームバック監督の『The Meyerowitz Stories(ザ・マイヤーウィッツ・ストーリーズ)』の2本がNetflixのオリジナル作品です。

『Wonderstruck(ワンダートラック)』は、マーティン・スコセッシ監督作品『ヒューゴの不思議な発明』(2012年)の原作であるブライアン・セルズニックの小説をもとに、セルズニック自らが脚本を手がけたもの。1920年代に生きる聴覚障害のある少女と、70年代に生きる不慮の事故で聴覚を失った少年のストーリーが重なり合う、ヒューマンドラマです。

 『okja(オクジャ)』は、『スノーピアサー』(14年)で欧米に進出した韓国のヒットメーカーであるポン・ジュノが、女優のティルダ・スウィントンらと再びタッグを組んだ作品。韓国の山奥の村で大きな豚オクジャと家族のようにともに育ってきた少女ミジャが、売られてしまったオクジャを取り戻すため、ソウルを経てニューヨークへと向かう冒険物語です。社会批判を込めた鋭い視点と少女を媒介としたヒューマニティは、宮崎駿アニメを彷彿とさせます。

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『okja(オクジャ)』は、Netflixで6月28日より独占オンラインストリーミング。https://www.netflix.com/jp/

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レッドカーペットに登場した出演者たち。女優のティルダ・スウィントンやリリー・コリンズなど、豪華な顔ぶれ。
©Mike Marsland/Getty for Netflix

 『The Meyerowitz Stories(ザ・マイヤーウィッツ・ストーリーズ)』は、“新世代のウディ・アレン”の異名を持つノア・バームバック監督の新作。マイヤーズ家の家長をダスティン・ホフマン、ふたり息子をアダム・サンドラーとベン・スティラーが演じるファミリードラマです。

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『The Meyerowitz Stories(ザ・マイヤーウィッツ・ストーリーズ)』は、Netflixで2017年配信予定。https://www.netflix.com/jp/

 これらの作品の評判は上々なのですが、映画祭開幕の直前から、ある問題が勃発。Netflixは、配信サービスのオリジナル作品に関して世界同時配信を基本にしており、場合によっては劇場で公開します。たとえば『okja(オクジャ)』の場合、アメリカや韓国では劇場公開が予定されていますが、フランスでは劇場公開の予定はありません。さらに、劇場公開してから36カ月後、つまり3年が経過しないと配信できないというフランス映画業界の規定もあり、Netflix側と真っ向から対立していました。カンヌ国際映画祭は、フランス映画業界に配慮して、来年以降フランス国内で劇場公開できない作品はセレクションの対象から外す、という旨を発表。それを受けて、議論はますます紛糾しています。

 記者会見では、今年の審査委員長であるペドロ・アルモドバルが「映画は大画面で観る必要がある。」と、カンヌ国際映画祭側に賛同するコメントを発表。一方で、審査員のひとりであるハリウッドスターのウィル・スミスは、Netflixの作品制作に携わっているということもあり、「自分の子どもたちは、週に2回映画館に行くし、Netflixも観ている。Netflixがなかったら、これまで観る機会がなかっただろう映画も多くある。」と、配信サービスの長所を強調してNetflixを擁護しました。
 
 個人的には、選択肢は多い方がいいので、配信サービス自体は素晴らしい機能だと思いますが、日本では『okja(オクジャ)』や『The Meyerowitz Stories(ザ・マイヤーウィッツ・ストーリーズ)』のような作品を大きなスクリーンで観ることができないと思うと、とても複雑な気分。なんとか良い妥協策に落ち着いて欲しいものです。
 審査員の中でも意見が割れているこの論争、審査結果にどのように影響するのでしょうか。場合によっては、28日のクロージングセレモニーがまた荒れるかも!?

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映画ジャーナリスト 立田敦子
大学在学中に編集・ライターとして活動し、『フィガロジャポン』の他、『GQ JAPAN』『すばる』『キネマ旬報』など、さまざまなジャンルの媒体で活躍。セレブリティへのインタビュー取材も多く、その数は年間200人以上とか。カンヌ映画祭には毎年出席し、独自の視点でレポートを発信している。

 

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