フィガロが選ぶ、今月の5冊 おじいさんから聞く話は、悲しみをしあわせに変える。

Culture 2018.01.17

絶望がファンタジーに変わる、魔法のような物語。

『おじいさんに聞いた話』

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トーン・テレヘン著 長山さき訳 新潮社刊 ¥1,944

ロシア革命の翌年にサンクトペテルブルクからオランダに逃れた「祖父」の断片的な話を集めた掌編集。「しあわせより悲しみのほうが無限に多いんだ!」と語る祖父の話は、神と悪魔、罪と罰を巡る陰鬱な帝政ロシア時代の空気を如実に伝えているものの、孫への語りかけという形を取ることで、ファンタジーの響きを漂わせている。死について繰り広げられる物語の終盤で、「私」は祖父とともに翼に乗って草原を飛び回る。死へと羽ばたく祖父は物語の一部となって、永遠の存在となったのだ。物語はいつだって国と時代を超えて、私たちを結びつける。

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*「フィガロジャポン」2018年1月号より抜粋

texte : JUNKO KUBODERA

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