フィガロが選ぶ、今月の5冊 もしもあの時、別の選択していたら? 川上弘美の最新作。
Culture 2018.02.14
ありえたかもしれない、別の人生が示唆すること。
『森へ行きましょう』
川上弘美著 日本経済新聞出版社刊 ¥1,836
人生は選択の連続だ。もしあの時、違う選択をしていたらどうなっていたのか。この小説は、ありえたかもしれないもうひとつの人生を可視化してくれる。留津とルツ。1966年の同じ日に生まれたふたりの女性の人生がパラレルワールドのように交互に描かれていく。それは女性が社会に進出し、選択肢が増えた時代と重なっている。結婚するのか、しないのか。仕事を続けるのか、家庭に入るのか。俯瞰して見れば、どちらが正解とも言えない。どちらを選んでも悩みがあり、隣の芝生は決して青くはないのだ。分岐点が無限に増殖する展開も企みに満ちている。
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*「フィガロジャポン」2018年2月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI