ベルトラン・ラヴィエの展示がエスパス ルイ・ヴィトン東京で開催中!
Culture 2018.05.01
ルイ・ヴィトン表参道ビルのアートスペース、エスパス ルイ・ヴィトン東京でフランス人アーティスト、ベルトラン・ラヴィエの個展『Medley』が開催されている。
ひと目見てインパクトを放つ、冷凍庫の上に置かれたリップ形のカウチ。双方の材質感とサイズ性のバランスが大事だった、とラヴィエ。パーフェクトな仕上がりのため出かける時はメジャーを持ち歩いているとか。『La Bocca Sur Zanker』2005年。
光が隅々までゆきわたる白い空間に、鮮烈な視覚的インパクトを持つ作品が7点、大胆に配置されている。いずれも一見シンプルで洗練された仕上がりの作品だが、それぞれの背景には機知に富んだ「意味のレイヤー」が隠されていて、ビジュアルとストーリーを2度楽しむことができる。
真っ先に目に飛び込んでくるのは、ビビッドな赤いリップ形のカウチが大型冷凍庫の上に恭しく載せられた作品。ラヴィエの代表作である、オブジェを積み重ねた彫刻シリーズのひとつだ。このアイコニックなカウチは、サルヴァドール・ダリが、マン・レイの写真にインスパイアされて、女優メイ・ウェストの唇を讃えてデザインしたカウチをもとに制作されたもの。
ラヴィエによれば、若い頃にヴェルサイユの国立高等園芸学校で学んだ「現実を正確に目測するまなざし」によって、「接ぎ木することで3つ目のものを作り出す」手法で構成されている。セクシーな家具と無機質な家電の組み合わせは、彫刻と台座の関係性を引き受けながらも、まるでフランス式整形庭園の植栽のように、別次元の美的価値をそこに生み出す。
もともとはフランスの景勝地であり、セザンヌが繰り返しモチーフに選んだことでも知られるサント・ヴィクトワール山の道路標識だった。『Paysages Aixois』2014年。© Adagp, Paris 2018
また、フランスの田園地帯の道路標識に、ラヴィエならではの「ファン・ゴッホ風」タッチでペイントを施した作品では、ピクトグラム風の単純な作画を文字どおり「ピクチャレスク(絵になる)」なモニュメントに変えてしまう。
1970年頃よりレディ・メイドやポップアート、ヌーボー・レアリスムの手法を混合して、伝統的な芸術様式の枠組みに揺さぶりをかけてきたラヴィエ。ありふれた「物」に手を加え、元の意味や価値を壊さず、よりリッチに変貌させる錬金術を操るアーティストである。
アメリカ人アーティスト、フランク・ステラの同名作品に敬意を表し、素材をポップなネオンライトに置き換えて新たな命を吹き込んだ作品。『Empress Of India II』2005年。© Adagp, Paris 2018
●1949年生まれ。国立高等園芸学校で学んだ後に作家活動を開始。1971年パリ・ビエンナーレ、4度のヴェネツィア・ビエンナーレ、2度のドクメンタなど多くの展覧会に参加。近年は大規模な回顧展を開催。
会期:開催中~2018年11月4日(日)
場所:エスパス ルイ・ヴィトン東京
東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7F
開)12時~20時 不定休 入場無料
http://www.espacelouisvuittontokyo.com/ja
●問い合わせ先:
ルイ・ヴィトン クライアントサービス
tel:0120-00-1854
photos: TADASHI OKOCHI texte:CHIE SUMIYOSHI