フィガロが選ぶ、今月の5冊 インド移民の一家を描く、愛と痛みに満ちた自伝的小説。
Culture 2018.05.31
回復の見込みのない肉親を介護する家族の祈りの物語。
『ファミリー・ライフ』
アキール・シャルマ著 小野正嗣訳 新潮社刊 ¥1,944
インドのデリーからアメリカに移住してきた家族にとって、聡明な兄のビルジェは期待の星だった。その兄が事故で突然寝たきりになり、疲弊した父親は酒に溺れ、母親とケンカが絶えなくなる。弟のアジェは、兄のことを人に話す時は、兄がどんなに素晴らしいか嘘をつかなければいけない気がした。救済の方便は、やがて小説を書くことに繋がっていく。兄のベッドを囲んで家族でトランプをする。しのぎがたいものをしのごうとする時、“家族であること”はどこか芝居めいて、息を合わせること、それ自体が祈りに変わる。愛と痛みに満ちた自伝的小説。
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*「フィガロジャポン」2018年5月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI
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