山崎努と樹木希林が画家夫婦を演じる、温かな感動作。
Culture 2018.06.16
老画家とその妻が丹精した、絵と生活のサンクチュアリ。
『モリのいる場所』
「白猫」「雨滴」など簡潔・飄逸の画風で知られ、30年間、自宅の庭より外には出ずに「超俗の人」の異名もとった日本画壇の重鎮、熊谷守一の日々を綴る。名誉欲がない仙人風情の翁と、微笑みに辛辣な毒を潜めつつも彼の守護者となる老妻。山崎努と樹木希林が老夫婦の掛け合いを演じて和らぎが漂う。ふたりの人柄を慕う写真家(加瀬亮)らとの交流には、俗世間に通じた親しみも。蝶、魚、蟻と、守一の絵のモチーフの宝庫である庭。その一角に広がる池の日当たりが、マンション建設でやがてまるごと遮られてしまう1970年代、古きよき時代の砦みたいな生活詩だ。
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*「フィガロジャポン」2018年6月号より抜粋
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