マリメッコ好きは必見! 石本藤雄の世界を松山で堪能。
Culture 2018.11.19
道後温泉でも名高い松山で、なんとも心躍る展覧会、『石本藤雄展-マリメッコの花から陶の実へ―』が開催中です。花や果物など、植物の自然をデザインに取り込み、みずみずしい色彩で描かれたテキスタイルや大胆ながらやさしい風情を漂わせる陶器――それらを生み出すのは、フィンランド在住の作家、石本藤雄さん。
愛媛県美術館。メインビジュアルにはマリメッコで手掛けたテキスタイルと、いま最も意欲的に制作をしている陶作品『冬瓜』が。
石本さんは、1970年にフィンランドへ移り、74年から2006年までマリメッコのテキスタイルデザイナーとして活躍、400点以上のデザインを世に送り出してきました。その後、陶の魅力に惹きつけられて、陶器メーカーであるアラビアのアート部門へ。現在もフィンランドに住み、陶芸家として作品を作り続けています。そんな石本さんのテキスタイルと陶がぜいたくに集った今回。実は愛媛県美術館だけではなく、松山市内のギャラリーや宿、石本さんの故郷である砥部町でも、作品を楽しむことができるのです。
愛媛県美術館のエントランスをくぐると、目の前に現れる巨大なテキスタイル。日の光を浴びた姿がすがすがしい。
愛媛県美術館では、特別展示室でテキスタイルを、常設展示室で陶作品を展示しています。見どころはやはり、特別展示室3で体感できる、巨大な筒状のテキスタイルでしょう。
まるで宙に浮く柱のようにたたずむ作品たち。その間を縫って歩くのがなんとも楽しい。
石本さん自身も昔からやってみたかったという筒状の展示は、インスタレーション的な魅力にあふれた心弾む空間。会場を案内してくださったご本人が、満足そうな表情だったのが印象的です。
作品の中にたたずむ石本さん。
石本さんが、マリメッコ入社当時の初期に手掛けたデザインも要チェックです。「配色もほとんど自分で手掛けました。当時はアバンギャルドなデザインですが、かたや馴染みやすいデザインもありました。そういうものが両方できる会社ですね」と、石本さん。アメリカのハウスウェアブランドのためにデザインされた柄ですが、来年から再来年にかけてリバイバルされ、商品が販売される予定というからマリメッコファンのみならず、デザイン好きにはたまりません。
左、右『Suvi[夏]』(1977年)、中2点『Onni[happy]』(1975年)。2019年春に『Onni』、2020年に『Suvi』がプロダクトとなって販売される予定。
他にも、作品制作過程のスケッチなどのデザインソースや椅子の座面など、さまざまなテキスタイルの姿を見ることができます。
ドローイング、サインマーカー、ペンなど色彩の試作の跡がさまざまに。
『Lepo[休息]』(1991年)。心地よい自然を感じさせる美しいテキスタイル。
カラフルに彩られた椅子もたくさん。
夏至祭の時、 7つの草花を枕の下に敷いて寝ると良い夢が見られる、という逸話を題材に、マリメッコからデザインをリクエストされたこともあるそうです。「テーマを与えられてデザインするというのは大変でした。盲腸になりました(笑)」。
陶作品の展示室、入口の壁を飾る『オオイヌノフグリ』も圧巻で、強くかつ繊細な存在感で来場者を迎えてくれます。その後も野菜や花モチーフの作品が続き、その素朴さ、愛らしさに引き込まれます。石本さんが最近特に惚れ込んで制作を続けている『冬瓜』も、静謐ながらどこかやんちゃなたたずまい。
『オオイヌノフグリ』(2018年)
壁にずらりと立てかけられた陶作品たち。
陶作品の展示では、愛媛県美術館に収蔵されている他作家の作品とコラボレーションする体裁をとっており、展示に深みを与えているのも印象的です。


三輪田米山『福禄寿』(1897年)と石本の『冬瓜』(2015、2017年)、横山大観の『曳船』(1905年)と石本の『山』(1999、2018年)のコラボレーション。
テキスタイルと陶を存分に楽しんだら、道後温泉へ向かいましょう。石本さんの展示が同時開催されているホテル茶玻瑠と、ギャラリーMUSTAKIVI(ムスタキビ)も見逃せないスポットです。茶玻瑠ではエントランスで新作の展示が見られます。
茶玻瑠のエントランス。
石本さんがプロデュースしたエグゼクティブフロアの談話スペースにも、壁に作品が。
エグゼクティブフロアの一室。座布団も可愛い!


こちらもエグゼクティブフロアの一室。床の間に見立てた空間に石本さんの作品を飾って。ベッドサイドには壁に巨大なテキスタイルが。
事前予約すれば、13時30分~14時30分のあいだでエグゼクティブフロアの見学も可能。3階のレストランにもマリメッコ時代のテキスタイルを組み合わせたファブリックパネルと、伊予絣のタペストリーが飾られていますので、そちらも要チェックです。1階のショップでは、オリジナルグッズを期間限定で販売しています。
ポーチやマグカップ、一筆箋など。
カフェも併設するギャラリー、ムスタキビでは、新作の陶器の絵皿や草花のレリーフに加え、冬瓜やみかんのオブジェも展示されています。ギャラリーは地下、カフェは1階に位置し、カフェにも草花のレリーフが飾られて、こぢんまりとした空間に、石本ワールドが広がっています。
1階奥にあるカフェ。石本さんの作品が壁を彩る。
ギャラリーは地下に。みかんのオブジェがなんとも愛らしい。
手前に見えるのが冬瓜。ころんとした親しみ深い作品です。
ムスタキビでは石本さんがデザインした砥部焼のうつわやお皿、ブローチなどに加え、石本さんが制作した花器も販売しています。ギャラリーで作品を堪能した後は、カフェでゆっくりお茶しながら、何を買って帰ろうか?とわくわくしながら至福の時を過ごせます。
さらに、道後温泉から足を延ばして砥部へ。『石本藤雄展』第2会場である砥部町文化会館でも、石本作品に出合えます。
故郷である砥部で、障子山やみかん山を望む会場での展示。


野菜や果物を描いた作品も、なんとも可愛い。
砥部はみかんの産地。石本さんは砥部にいる頃、みかん箱を作ったり、大工みたいなことをするのが好きだったといいます。「家のあたりは陶器のかけらがたくさん捨てられて落ちていました。80年代には陶器のかけらがブームになって、いろんな人が掘りに来て、砂が崩れてきたりして、母が困っていました(笑)。江戸時代のものもありましたね。デザインの参考になるものもありました」と、昔を懐かしむお話も。
石本作品が街の各所を彩って賑わいを見せる――石本さんの故郷だからこそ感じられる、あたたかな愛があふれている今回の企画展。美術館の会期は12月16日まで、ムスタキビは来年2月11日まで。道後温泉もあるここ松山で、ぜひその世界に触れてみてください。
会期:開催中~12月16日(日)
会場1:愛媛県美術館
開)9時40分~18時(入場は17時30分まで)
休)月曜(12/3は開館)、12/4
入場料金/一般:¥1,200
tel:089-932-0010
www.ehime-art.jp
会場2:砥部町文化会館
開)9時~18時
休)11/30
入場無料
www.tobebunka.jp
【同時開催】
茶玻瑠
tel:089-945-1321
www.chaharu.cpm
MUSTAKIVI(ムスタキビ)
会期:開催中~2019年2月11日
開)10時~19時(月、金~日) 10時~18時(木)
休)火、水(年末年始、その他特別休業あり)
tel:089-993-7496
www.mustakivi.jp