柳楽優弥・小林薫が擬似的な父子を演じる『夜明け』。
Culture 2019.03.08
修復できない親子の関係を、疑似家族の中で再び生き直す。
展望のない泥酔の朝に始まり、再出発の夜明けに終わる映画だ。薄明の空を翔ける海鳥とともに。頑固さから仲違いしたまま息子を失った木工所の社長、哲郎。かたや、父を嫌って家出し、職場でも父権的な雇い主とトラブルを起こす青年シンイチ。演じる小林薫と柳楽優弥が、取り返しのつかない失敗をもう一度やり直すように、擬似的な父子関係を脈動させる。是枝裕和と西川美和という師が立ち上げた育成集団出身の若い女性監督は、温もりの中に相互依存のこすからさをも見据え、人情劇の予定調和には決然と背を向ける。覚悟のある長回しの演出だ。
*「フィガロジャポン」2019年3月号より抜粋
réalisation : TAKASHI GOTO
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