おこもりGWのための海外ドラマ・セレクション。#01 【海外ドラマ】前向きな女性たちに、パワーをもらえる物語。
Culture 2019.04.23
世界各国の異なるカルチャーを知ることは、海外ドラマを観るうえでの醍醐味。同時に、女性同士の友情や絆、家族の物語には普遍的なテーマやメッセージがある。人種も年齢も社会的立場も違うけれど、何があっても明るさと笑いを忘れることはない女性たちの姿に、元気をもらえること間違いなしの3本。
ファッションも魅力、若手エディターたちの奮闘記。
「NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち」(2017年~)
ニューヨークのマンハッタンにある人気女性雑誌「スカーレット」。その編集部で働く20代のジェーン、キャット、サットンの親友3人組が、それぞれのキャリアと恋愛に悩みながらも成長していく。華やかなパーティシーンや業界の裏側、デイリーからハイエンドなファッションまで、見ているだけでも気分が上がる。そうした”楽しい”の中にも、毎回のようにきっちりと今時の社会問題が盛り込まれている点がうまいなあと思わせる。
たとえば、キャットは同性愛者であるイスラム教徒の女性写真家と出会って、自分のセクシュアリティと向き合うことなるし、ライターに昇格したジェーンは「若い女性はおしゃれもするし政治にも参加したい」と訴える。サットンは憧れのポジションをゲットした時、それに満足することなく正当な賃金を手にするために駆け引きをする。仮に友達と意見が異なる場合でも、彼女たちは自分の主張を隠したり臆することはないし、親友同士で議論を交わすことを恐れない点も好ましい。ひと昔前なら、本作で描かれる題材はどれもこの一歩手前のところまでしか掘り下げられなかっただろうが、ミレニアル世代の彼女たちにとっては、これがスタンダードであるべき生き方、考え方なのだろう。もっと大胆に、もっと自信を持って悩んだり失敗したっていいんだよ!と、観る人の背中を力強く後押ししてくれるはず。
写真左から、サットン役は『女神の見えざる手』のメーガン・フェイヒー、キャット役は「マイ・ライフ 私をステキに生きた方法〜」のアイシャ・ディー、ジョーン役はオーディション番組「アメリカン・アイドル」出身のケイティ・スティーヴンス。
編集長ジャクリーンのモデルは、「コスモポリタン」の元編集長で人気リアリティショー「プロジェクト・ランウェイ」にも出演してきたジョアンナ・コールズ。演じるのは「名探偵モンク」のメロラ・ハーディン。
「NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち」シーズン2の予告編。
「NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち」
原題/The Bold Type
クリエイター/サラ・ワトソン
出演/メーガン・フェイヒー、アイシャ・ディー、ケイティ・スティーヴンスほか
Huluプレミアにてシーズン1配信中、シーズン2独占配信中
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パワフルでほほ笑ましい、ラテン系一家の虜に。
「ワンデイ -家族のうた-」(2017~2019年)
ロサンゼルスで暮らすキューバ系アメリカ人家族の日常を描いたコメディ。1975年〜1984年に放送された同名シットコムのリメイクで、ラフトラック(笑い声)が入るスタイルは懐かしさもありつつ、ヒスパニック系の移民の立ち位置や2世、3世とのジェネレーションギャップなどが、トランプ時代においてはまた特別な意味を持つだろう。
ラテン系といえば明るくて賑やかしいノリを思い浮かべる人も多いだろうが、本作はまさにその世界。特に女性のたくましさと言ったら! キューバからやってきた祖母、元軍人で離婚した看護師のシングルマザー、環境問題に熱心でレズビアンの娘。差別や偏見、問題も山積みの人生であったとしても、いつだって笑顔を忘れず、闘うことを厭わないという芯の強さは、まぶしくも羨ましくもある。ヒスパニック系のカルチャーや歴史を知る楽しさもありつつ、しばしば厄介だけれど家族の絆っていいな、みんなで食卓を囲むのって素敵だなとシンプルに思わせる普遍性は万国共通だろう。
グロリア・エステファンが歌うオリジナル版テーマ曲のカバー「One Day at a Time」からしてテンションが上がる!
太陽みたいに陽気で頼もしい母親ペネロピ(左手前)を演じるのは、「シックス・フィート・アンダー」のジャスティナ・マシャド。オスカー女優のリタ・モレノが演じる祖母リディア(右奥)も、最高にお茶目!
「ワンデイ -家族のうた-」シーズン3の予告編。
原題/One Day at a Time
クリエイター/グロリア・カルデロン・ケレット、マイク・ロイス
出演/ジャスティン・マシャド、トッド・グリンネル、イザベル・ゴメスほか
Netflixにてシーズン1~3独占配信中
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ブラックユーモア満載で描く、我が道をゆく女子高生たちの日常。
「デリー・ガールズ ~アイルランド青春物語~」(2018年~)
北アイルランドの高校に通う4人の女子高生と、男子高校に行くといじめられそうという理由で女子校に入れられたイギリス人のジェームズ。IRAのテロや紛争など、イギリスとの関係も複雑で危険な1990年代の北アイルランド問題を背景に、とほほとしか言いようがないけれど、それなりに楽しそうな青春&家族のドラマを、後からじわじわくるようなブラックユーモア満載で描く。
とにもかくにも登場人物たちが強烈で個性的! メインキャストのエリン、クレア、ミシェル、オーラの女子4人組は表情豊かな顔面力の高さもインパクトがあり、一度見たら忘れられない。やることなすこと裏目に出てしまうような浅はかな言動は、人種やLGBTQに関するものなど、それは言い過ぎだろうとか無神経だと受け取れるものもある。だが、それこそが本作の醍醐味。何でもかんでもわかった風なことを言うのでもなければ、誰かを傷つけたり傷つけられたり。そして問題は解決しないまま、うやむやになる感じにもリアリティがある。現実はそれほど単純ではないのだ。それでも友達のことは愛してるよ!と全力で訴えてくるエピソードには、思わずホロリとさせられる。アイルランドの歴史にも興味が湧くし、映画や音楽、ファッションなどの90年代カルチャーも楽しい。
写真左端、リーダー格のエリンを演じるシアーシャ=モニカ・ジャクソンを筆頭に、個性的なキャストが集結。
北アイルランドのデリーやベルファストといったロケーションも魅力的。「このサイテーな世界の終わり」などで知られる英「Channel 4」が制作を担当。
原題/Derry Girls
クリエイター/リサ・マッギー
出演/シアーシャ=モニカ・ジャクソン、 ニコラ・コークラン、 ルイザ・ハーランドほか
Netflixにてシーズン1独占配信中
texte:SACHIE IMA