フランス人女性が11月5日から、無給になる理由とは?

Culture 2019.11.21

フランスではいまもなお、女性の賃金は男性に比べてかなり低い。こうした状況を変えるべく、フェミニスト団体「Les Glorieuses」がフランスの女性たちに、11月5日16時47分から働くのをやめようと呼びかけた。

191121-egalite-salariale.jpgフランスでは2019年の現在もなお、女性の賃金は男性に比べてかなり低い。photo : iStock

11月5日16時47分から、フランス人女性は無給で働くことになる。こうした現状を受け、フェミニスト団体「Les Glorieuses」は男女間賃金の不平等を訴えるために、女性たちに働くのをやめようと呼びかけた。団体はリリースの中で「11月5日から12月31日まで、現役の女性たちはボランティアで働くようなもの」と主張する。今回の呼びかけは、アイスランドの女性たちが先駆けて起こしたストライキがモデルとなっている。

これは適当に定められた日付ではない。EU統計局が発表した、EU各国の男女間の賃金格差の程度を示すバロメーターをもとに算出されたものだ。EU統計局によれば、フランス人女性の平均時給は、男性より15.4%低いという。1日の勤務時間を7時間(1週間で35時間)として、Les Glorieusesはこの差を2019年の就業日数、つまり土日祝日を除いた日数に換算し直した。その結果得られたのが、11月5日16時47分というわけだ。

能力は同じなら賃金も同じ?

「#5Novembre16h47」運動を呼びかけるLes Glorieusesが、男女間の賃金格差是正を求める行動を起こして今年で4年目になる。彼女たちがEU統計局の数字を取り上げたのは、「アイスランドで数年前から行われている男女同一賃金を求める運動に敬意を表するため」と、Les Glorieusesの創始者であり、経済学者でフェミニズム運動活動家のレベッカ・アンセレムは語る。男女間の賃金格差を明らかにするデータはほかにもある。フランス国立統計経済研究所の調査では、フランス人女性の賃金はフランス人男性に比べて23.7%少ないという結果が出ている。これは、フルタイム労働とパートタイムの両方を考慮に入れた数字だ。ただし労働省調査統計局(DARES)によれば、同一労働同一能力の男女間で賃金を比較した場合、そこまでの開きはなく、格差は9%と算出されている。

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賃金の平等、実現は2168年?

国や地方公共団体といったレベルで政策が実施されない限り、「女性が男性と同じ報酬を得られるようになるのは早くて2168年」と前述のアンセレムは言う。経済学者のアンセレムによると、賃金平等を達成するまでの道はまだまだ遠いという。「なかなか進展が見られず、男女間の賃金差はほとんど変わっていません」。それでも、『Les Chroniques d’une féministe(あるフェミニストの時評)』の著者であるアンセレムは前向きだ。「一方で、この問題への関心は徐々に高まっています。もちろん、情報を伝えることですべてが解決するわけではありませんが、スタートとしては上々だと思います」

どんな解決策が考えられるか?

近年フランスでは、国や地方自治体によって透明性向上のための取り組みが進められている。そうしたなか今年4月には、「企業の成長・変革のための行動計画に関する法(PACTE法)」が可決された。これにより、大企業には今後、役員報酬の水準と従業員の平均給与の差、また従業員の給与の中央値(全社員を給与順に並べた時に、中央に当たる人の給与額)を社内で公表することが義務づけられるようになる。

さらに、職業上の男女平等を推進するための法令が2019年から施行されたことにともない、賃金格差、男女の昇給・昇進比率など複数の項目から、企業内での男女平等の達成度を計るための「男女平等指数」が導入された。達成度が低い企業には、制裁金が科される可能性がある。「それでもまだ十分ではありません」とアンセレムは言う。「国や地方自治体が主体となってより大規模な政策を実施する必要があります。賃金格差の是正には公的な取り組みが不可欠なのです」。フェミニストのアンセレムは、男性の育児休業の期間延長も解決策のひとつとなりうると期待する。出産はいまだに女性にとって、キャリアアップの妨げとなっているからだ。「賃金格差は第一子出産時から広がり始め、それが年を追って賃金に影響を与えていきます」とアンセレムは嘆く。

アイスランド女性たちの闘いの成果。

賃金の不平等を糾弾するため、何年もの間、街頭デモを続けてきたアイスランド女性たち。彼女たちの闘いはついに報われた。2017年3月、ソースティン・ヴィグランドソン社会問題・平等担当大臣は、従業員25人以上の企業に対し、男女間の賃金平等を義務づける法律を発表。そのため、企業には男女同一賃金を証明する義務が課されることになった。法令は2018年1月に施行され、以後、法令違反のチェックが行われ、男女平等賃金が遵守されていない場合は罰金が科される。アンセルムによれば、男女平等を実現するにはこうした措置を取ることが必要なのだという。

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texte : Ségolène Forgar (madame.lefigaro.fr)

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