カマラ・ハリス、その白いスーツが象徴するものは。
Culture 2020.11.27
アメリカ初の女性副大統領の誕生は来年1月。しかし勝利が決まった11月7日の夜にウィルミントンのチェイスセンターを訪れたカマラ・ハリスの装いには、すでに政治的なメッセージが込められていた。
勝利の夜、象徴的な白のスーツで登壇したカマラ・ハリス。(ウィルミントン、2020年11月7日)photo : Abaca
「女性としてこの職に就くのは私が最初かもしれませんが、最後ではありません」。11月7日、ウィルミントンのチェイスセンターでカマラ・ハリスはそう宣言した。ジョー・バイデンの大統領当選によって、有色人種の女性として、初のアメリカ副大統領となるハリス。就任は来年1月だ。
快挙を成し遂げた勝利宣言の夜、テレビ演説に登壇したハリスの装いは、白いスーツにボウタイブラウス。ボウタイブラウスは「ワーキングウーマン」の象徴であり、マーガレット・サッチャーが愛用したアイテムでもある。
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フェミニズムの象徴
白いスーツにも多くの意味が込められている、と分析するのは、色の専門家で小説『カラークレヨン』(1)の著者であるジャン=ガブリエル・コース。「この日のテーラードスーツは純白に近い白。これは”初めて”を意味する色です。アメリカは非常に宗教的な国ですから、あえて”初聖体拝領”を思わせる衣服を選んだのでしょう。同時に、”初めてだが、最後ではない”というフェミニストとしてのメッセージを印象づけるためでもあります」。「ニューヨーク・タイムズ」紙によると、1913年に設立された女性参政権を求める団体「議会同盟」以来、白いスーツは婦人参政権運動家たちの活動を象徴する装いになったという。
このスタイルはその後、女性の社会進出のシンボルとなった。民主党の全国党大会で大統領候補に指名されたヒラリー・クリントンは、2016年7月28日の指名受諾演説の際に白いスーツを着て登壇した。民主党のナンシー・ペロシ米下院議長が2019年4月の記者会見に登場した時も白いスーツ。2016年の大統領選挙戦中に、女性のエンパワーメントのシンボルである白いスーツは、トランプ候補反対派のシンボルにもなった。
白を着た女性は前提として誠実
そんな歴史があるだけに、2018年1月30日の大統領一般教書演説の際に、メラニア夫人が着用していた白いテーラードスーツはアメリカ国内で憶測を呼んだ。トランプ大統領とポルノ女優のストーミー・ダニエルズとの不倫疑惑に関する新事実が明るみに出た後、メラニア夫人はしばらくカメラの前に姿を現していなかった。その彼女が白いスーツで公式行事に臨んだのは、夫に対する当てつけだったのか。真相はいまのところ不明だ。
いっぽう、この装いに身を包むことで、カマラ・ハリスには、前大統領との違いを際立たせる狙いがあるという。「この白は、光の白です。トランプ大統領時代という真っ暗なトンネルの奥に、ようやく差してきた光というわけです」。コースによると、この白は潔白の象徴でもある。
「ハリスは潔白な人物像をアピールすることで、”私は腐敗政治家ではない。卑劣なことはしない、普通の健全な女性です”と言っているのです。これはトランプ大統領がいまだに支持者たちに伝えようとしているメッセージとは正反対。白い服を着た女性は前提として誠実なのですから」
和解への意欲
また、カマラ・ハリスのスーツの白は和解への意欲を象徴しているという見方もできる。「この色に民主党と共和党の宥和を図る意志を見ることも可能でしょう」とコースは言う。それこそまさに、第46代アメリカ大統領に選ばれたジョー・バイデンが、11月7日の勝利演説で述べていたことだ。「私は分断ではなく、団結させる大統領になることを誓います。アメリカを赤い州と青い州に分けて見るのではなく、団結した州(合衆国)として見る大統領です。すべてのアメリカ国民の信頼を得られるよう、全力を尽くします。アメリカを作り上げているのは国民なのですから」
(1)ジャン=ガブリエル・コース著『カラークレヨン』フラマリオン刊、2017年9月13日出版。320ページ
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texte : Chloé Fierdmann (madame.lefigaro.fr)