ダイアナ妃没後20周年企画 #02 ダイアナ妃の華麗なるファッション遍歴。
Culture 2017.08.31
ダイアナだって、はじめはセーターにデニムという出で立ちの普通の少女だった。世界中から注がれる視線を自覚し、婚約直後にファッションに開眼。典型的なロイヤルスタイルだった初々しいプリンセスは、年月とともに自分のスタイルを確立させ、みるみる洗練されていった。ファッショニスタとして開花した1985年以降の華麗な装いの数々は、いま見ても神々しい輝きに満ちている。
そんなダイアナのファッション遍歴を、ゲッティイメージズが保有する世界最大規模のアーカイブ写真、そして同時代を生きながらダイアナに深い思いを寄せてきたゲッティイメージズ ジャパン代表取締役・島本久美子氏のコメントとともに振り返る。
80年代後半 ~大胆に光り輝く“ダイナスティ・ダイ”~
レーガン大統領夫妻主催の晩餐会で着用したヴィクター・エーデルスタインのベルベットドレスに、世界中が釘づけに。ジョン・トラボルタ相手に見事なダンスを披露する様はいまや伝説だ。「ダイアナは生まれながらにしてエレガントだったと思う。躊躇なくさまざまな色や形にチャレンジしていた」と島本氏。
©Anwar Hussein/WireImage/Getty Images
当時、ダイアナのアイライナーとマスカラはヴィヴィッドなブルーで、ヘアも大きく広がりボリュームたっぷり。肩パット入りの広い肩、ビッグシルエット……と、ファッションも80年代らしく、大胆でゴージャスそのもの。当時人気の米メロドラマ「ダイナスティ」にちなんで“ダイナスティ・ダイ”の愛称がついたのがこの頃だ。
自分のスタイルを見つけようと、さまざまな英国人デザイナーの服を懸命に試したダイアナ。王室御用達の格式のあるデザイナーだけでは満足せず、自ら街に出てファッションを研究し、新しいデザイナーを開拓したという。起用したのは、セント・マーチン・スクールを卒業したばかりの若手デザイナーもいれば、ブルース・オールドフィールドのようにダイアナのおかげで有名になったデザイナーもいた。さらにキャサリン・ウォーカーとは二人三脚でさまざまなスタイルを作り上げ、生涯に渡って信頼を置いたという。
1985
©Tim Graham/Getty Images
王族必須の帽子もエレガント路線に。女王御用達の帽子デザイナー、フレデリック・フォックスによるつばの広い帽子が、エーデルスタインのストライプドレスによく映える。ダイアナのシグネチャーアイテム、パールのチョーカーをヘビーユースし始めたのはこの頃から。「どんな色でも着こなせるのがダイアナのセンス。イタリアではエレガントながらも控えめな帽子で」と島本氏。


©Tim Graham/Getty Images
ヴェニスで着こなしていたのが、“ダイナスティ・ダイ・ルック”の中心柱ブルース・オールドフィールドのドレス。TPOに合わせて洋服をチョイスするセンスも抜群で、鮮やかなロイヤルブルーが街並みによく映えている。ローマでは、ドナルド・キャンベルのセットアップをチョイス。全身ヴィヴィッドピンクというガーリーなスタイリングで最高に愛らしく。島本氏は「エレガントでありながらも独特なスタイルを繰り広げていた」と振り返る。
©︎Jayne Fincher/Princess Diana Archive/Getty Images
大胆に背中があいたブルース・オールドフィールドのゴールドドレスはいかにも80年代。テレビドラマ「ダイナスティ」そのままの世界観だ。メルボルンのガラにて。
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1987
©Tim Graham/Getty Images
カンヌ映画祭に、シルクシフォンのギリシャ風ドレスで颯爽と登場。盟友キャサリン・ウォーカーがグレース・ケリーをイメージしてデザイン。日焼けした肌にアイスブルーがよく似合う。
1989
© Georges De Keerle/Getty Images
思いがけない色を組み合わせる天才だったダイアナ。ピンクに赤という大胆なカラーブロックに、ファッション業界も騒然。キャサリン・ウォーカーのコートに、フィリップ・サマーヴィルの帽子がパーフェクトマッチ。ドバイ訪問時。
©Tim Graham/Getty Images
白とサーモンピンクのイブニングドレスは、背中がV字に深く切り込まれており、都会的な魅力に溢れて。キャサリン・ウォーカーによるデザイン。バレエ『白鳥の湖』の初日。
©Tim Graham/Getty Images
真珠をちりばめたハイネックのボレロは“エルビス・プレスリー風”と評判に。香港訪問の際に、こちらもキャサリン・ウォーカーがデザイン。
>>90年代のファッションは艶やかでシック、洗練した装いに。
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ダイアナ妃も愛用した、トッズのモカシン。
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90年代 ~艶やかでシック、完成した洗練~
90年代に入り、ダイアナ自身も30代になると、装いはぐっとシックでスリムなラインに落ち着いていく。特に離婚後は、英国人デザイナー以外にも目を向け、ヴェルサーチ、ヴァレンティノ、シャネル、ディオール、エマニュエル ウンガロ、クリスチャン・ラクロワ、モスキーノなど、さまざまな国のファッションに挑戦するようになる。昼はテイラードスーツで知的に、夜はシックなソワレドレスで淑女に——。ルールに囚われることなく、独自のスタイルを確立させていく。思い通りに生きることで、自信をみなぎらせた新生ダイアナは、スリムでセクシーな装いを自由に楽しんだ。そしてファッションアイコンとしての名声は、亡くなる直前の1997年に頂点を迎える。
1991
©Tim Graham/Getty Images
ゴールドの鎖状のストラップと腰のボウがアクセント。ベルヴィル・サスーンは10代の頃から依頼し続けており、新婚当初はメルヘンなドレスを手がけていたのが、ダイアナの成長とともに艶やかなスタイルに進化を遂げた。
1994
©Anwar Hussein/WireImage/Getty Images
キャサリン・ウォーカーのホルターネックのベルベットドレス。ダイアナの要望に柔軟に合わせることができたキャサリン・ウォーカーも、90年代に入ると細身でシックなスタイルに変化した。「アンワル・フセインコレクションからの1枚。キャサリン・ウォーカーのイブニングドレスを着てヴェルサイユ宮殿でのチャリティディナーに出席するダイアナ。ありのままの自分に自信を持っているのが伝わってくる」と島本氏。
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1995
©Tim Graham/Getty Images
友人であったジャンニ・ヴェルサーチの服を着ているダイアナは洗練の極み。ヴェルサーチを昼はワンピースやスーツ、夜はドレスを愛用して、ファッションアイコンとしての名声を高めた。
1996
©Tim Graham/Getty Images
ヴェルサーチのドレスからジミー チュウの靴、バッグ、ジュエリーにいたるまで、鮮やかな紫で会場を華やかに。全身一色に統一するのは、80年代でも見られたダイアナの定番スタイル。ヴェルサイユ宮殿での慈善行事の席で。「正式な場ではとても自然にクラシックな雰囲気を醸し出している。シカゴで開催されたガライベントでは美しいラインの濃い紫のガウンで」と島本氏。
1997
©Tim Graham/Getty Images
ペールグリーンのシャネルスーツ。定番の同系色コーディネートではなく、ベージュのパンプスとバッグを合わせることで、こなれた印象に。当時シャネルのチェーンバッグを持つ姿がよく目撃された。
©Tim Graham/Getty Images
ニューヨークで行われたクリスティーズのオークション前夜祭で、キャサリン・ウォーカーの刺繍入りカクテルドレスを着用。このシャンパンカラーの他に、色違いでアイスブルーのドレスもオーダーしている。ジミー チュウのパンプスは、普段より高い約10cmヒール。
texte : ERI ARIMOTO