映画から見えてきた、現代アメリカを生きる人々の姿。
Culture 2021.03.10
2020年後半は米国大統領選が世界的なトピックスだったが、よくも悪くも“アメリカで起こっていること”は世界に波及する。
ベネチア国際映画祭で金獅子賞(作品賞)を受賞したクロエ・ジャオの『ノマドランド』は、職を失った60代の女性が季節労働によって生活費を稼ぐ車上生活する様を通して今日のアメリカを描き出す野心的なロードムービーだ。
『ノマドランド』住み慣れた家を失ったファーンはバンに荷物を詰め込んで路上生活を始める。ノンフィク ション『ノマド 漂流する高齢労働者たち』の映画化。 ●監督・編集・脚色/クロエ・ジャオ ●出演/フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、リンダ・メイほか ●2020年、アメリカ映画 ●108分 ●配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン ●3月26日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開
サンダンス映画祭でグランプリを受賞した『ミナリ』は、アメリカ南部の舞台に、韓国系移民の一家がさまざまな苦難を乗り越えていく姿を描く。気鋭映会社A24とプランB がタッグを組んだ新作だが、監督のリー・アイザック・チョンも『君の名は。』のハリウッド版の監督に抜擢された期待の大型新人だ。
『ミナリ』80年代にアメリカに移住した韓国系ファミリーの苦難を描く。●監督・脚本/リー・アイザック・チョン ●出演/スティーヴ ン・ユァン、ハン・イェリ、ユン・ヨジョンほか ● 2020年、アメリカ映画 ● 115分 ●配給/ギャガ ●3月19日より、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開
ベルリン国際映画祭で話題となったケリー・ライヒャルトの『First Cow』(原題)は、19世紀のオレゴン州を舞台に、ひとりの青年と中国系移民の出会いを軸に展開する西部劇だが、人種差別や資本主義に対する批判といった現代的なテーマが盛り込まれている。賞レースでも『ノマドランド』と肩を並べているインディーズの注目作だ。
『FirstCow』(原題)19世紀、毛皮商の猟師たちのため料理をする孤独な男が、中国人青年との絆を深めていく。 ●監督・ 共同脚本/ケリー・ライヒャルト ●出演/ジョン・マガロ、オリオン・リーほか ●2019年、アメリカ映画 ●122分 ●日本公開未定
texte : ATSUKO TATSUTA