エリオット・ペイジ、カミングアウトまでの道のりを語る。

Culture 2021.04.01

昨年12月にトランスジェンダーであることを公表した俳優のエリオット・ペイジ。告白以来、初めて米タイム誌のインタビューに応じ、自身のキャリアとアイデンティティの葛藤を振り返った。

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2021年3月16日発行のタイム誌の表紙を飾った俳優のエリオット・ペイジ。 photo : Wynne Neilly for TIME

もし幼少期からハリウッドで仕事をしていなかったら、もっと早くこの名前に変えていただろう、とエリオット・ペイジは言う。昨年12月1日にインスタグラムでトランスジェンダーだとカミングアウトし、12月20日にはファンへの感謝の言葉と共に自身のセルフィを載せた経過を、3月16日付けの米タイム誌のロングインタビューで振り返った

またカミングアウトに至る長い道のりについても語った。コロナ禍で孤立した日々を過ごしたことが大きく影響したという。「多くの時間を独りで過ごし、いままで無意識に避けていたさまざまなことを集中して考えることができた」と記者のケイティ・シュタインメッツに語る。特にトランスジェンダーの作家の本を何冊も読んだことで「恥と居心地の悪さ」が晴れていくのを感じたそうだ。「ようやく自分がトランスジェンダーであること受け入れ、ありのままの自分を率直に認めることができた」

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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エリオット・ペイジは現在、自分をノンバイナリーでクィアな「トランスジェンダー男性」と定義する。子どものころから自分は男の子だと感じていて、「男の子になりたかったし、いつかなれるのかと母に聞いたことがある」そうだ。9歳の時に髪を短くカットしてもいいと言われた時に大喜びしたが、それも束の間。一年後に初めてテレビのホームドラマに出演が決まったが、それは女の子の役だった。それ以降、ハリウッドでは女子とみなされることになる。

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「とにかく、自分らしいと思えることがなかった」

『JUNО/ジュノ』から『インセプション』まで、映画出演が増え、成功を収めていくにつれドレスを着て化粧をし、セクシーなポーズを取ってグラマラスな写真撮影に応じなければならなかった。

「とにかく自分らしいと思えることがなかった。長い間、自分の写真を見ることすらできなかった」とタイム誌に明かす。女性の役が続き、苦痛はさらに悪化する。なぜなら「俳優なのに、女性用にカットされたTシャツを着るだけで居心地が悪くなることをどのように人に説明すればいいのかわからなかった」からだ。

状況が変わり始めたのは2014年、ある人権キャンペーンの席で自身がゲイだとカミングアウトしてからだ。2018年には振付師のエマ・ポートナーと結婚し(2021年初頭に離婚)、レッドカーペットでは男性用のスーツしか着用しないことにした。

そして自身が演じる役柄の衣装も男性物のみとした。「カミングアウトをする前と後では、自分の気持ちには雲泥の差がありました。でも、自分の体の中に感じる不快感が消えたかというと、それは全くもってノー」

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新しい人生

昨年、彼はいくつかの決断をした。名前を変える、そして人称代名詞も変える。自身の人称代名詞は「彼(英語のhe, him)」、あるいはノンバイナリ―の人に使う単数の「they」。撮影のセットでは彼のことをうっかり「彼女」と言ってしまう人もいるが、一定の「調整時間」が必要なこともわかるし、同僚たちはちゃんと「彼」として見ていてくれているとエリオットは言う。

実際、彼が出演しているNetflixで配信中のドラマ「アンブレラ・アカデミー」のクレジットには「エリオット・ペイジ」と書いてある。タイム誌には性転換手術を受けたことも告白した。トランスジェンダーの人にとって必須ではないと強調した上で、それによって彼の「人生は一変し」、ようやく自分らしく感じることができるようになったと語る。

「複雑な旅」が「いまも進行中」であるから、さまざまなステップが続く。

現在、ペイジさんにはたくさんのトランスジェンダーの役柄、シスジェンダーの役柄のオファーがある。「やっと体としても自分自身になることができたので、いまは芝居をするのがとても楽しみです。試練もあるし、つらい時もありますが、いまの自分の気持ちに勝るものはありません」

そして自分の発言が世界中のクィアやトランスジェンダーの人々に与えるインパクトも自覚している。「たくさんの愛と支持、そしてまたトランスに対する激しい憎悪や嫌悪も予想していました。そして実際にそのようなことが起きました」

いまは自身の経験やイメージが人々の役に立つことを願っている。「恵まれた環境や特権があったからこそ、この状況を乗り越えていまの自分に至ることができたのです。当然ながら、今度はそれらの特権やプラットフォームを使ってできる限りの支援をしたいと思います」

texte : Pascaline Potdevin (madame.lefigaro.fr)

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