あなたの「睡眠負債」を知らせる5つのサイン。
Culture 2021.04.09
大多数の人は気付かないうちに「睡眠負債」を抱えていて、その健康への影響は計り知れない。状況の改善のためには、体からのサインに耳を傾けなければならない。ボルドー大学病院センター(CHU)附属大学の睡眠医学課課長のピエール・フィリップ教授が解説する。
体が私たちに送る信号は、日々の睡眠量についての警告かもしれない。Photo :iStock
自分はきちんと睡眠をとり、疲労もさほどないと思っているかもしれない。しかし、健康維持ためにはそれで充分といえるだろうか? 私たちの大半は知らず知らずのうちに、いわゆる「睡眠負債」というものを抱えている。長年にわたって睡眠不足がたまっていく状態だ。
「最新の研究によると、25歳から75歳までのフランス人は1日7時間の睡眠が必要です。それより眠る時間が短い場合、睡眠に飢えている状態と言えます」とボルドー大学病院附属大学の睡眠医学課課長のピエール・フィリップ(1)は説明する。
睡眠負債の影響は甚大だ。体の機能が損なわれ、「例えば糖分を吸収できなくなり、体重が減り、感染への抵抗力を弱めるなど免疫系に及ぼす影響も見られます」とフィリップはまとめる。それを改善するためには、大したことないと思われる体の信号にも注意を払わなければならない。以下、5つの「睡眠負債」のサインを紹介しよう。
1.感情の高ぶり
廊下ですれ違いざまに同僚女性に微笑まれ、からかわれていると思ったことはないだろうか? 男友達が大声で話している時に、彼が怒っているように感じたことはあるだろうか? 以前は気に留めなかったであろう小言に気を悪くしたことは?
睡眠負債が「感情の一部に影響を及ぼし、周りにいる他者が表す感情の認識を変形させてしまいます。その結果、他者との関係が難しくなります」とフィリップは説明する。
2.一晩の睡眠で体が休まらない
長く感じられた夜が明け目覚ましは鳴っても、まだ疲労感が残っている。フィリップはこのことに驚かない。
「睡眠不足は『台無しになってしまった夜』という感情を抱かせます。睡眠がうまく機能していない、という印象を与える。あまりにも睡眠量が少ないため、もはや体は夜寝ても回復することができないのです」と彼は言う。
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3.活動を止めた途端うとうとする
昼食後、首をがくりとさせ居眠りをしてしまうことはよくある。体は消化のためにエネルギーを必要とし、そのために眠くなる。一方で何もしなくてもすぐに居眠りしそうになる時は、睡眠不足という明白な事実を受け入れるべきなのだ。
「刺激がなくなった途端の時機を失した居眠りは、睡眠負債を知らせる強い信号です。疲れた時は眠ってしまうことはなく、体を休ませ、呼吸をし、ゆっくりと過ごすのが普通です。もし眠ってしまうとしたら、睡眠に問題があるということ」とフィリップは解き明かす。
4.効果のあり過ぎる昼寝
10分間の昼寝でリフレッシュし覚醒後すぐ活動できる状態になると、充電できたように感じる。数分間だけ眠ることは、日中脳を回復させたり、だらけた時に少し活力を与えるにはいい方法だが、注意が必要だ。
「覚醒時すぐに効率的にエネルギーをチャージしてくれる昼寝は、睡眠負債の強い兆候です。昼寝の効果は見せかけです。昼寝は疲労と関連があると思われがちですが、実は睡眠不足が原因です。それでは、間違った睡眠リズムという問題の根幹は解消できません」(ピエール・フィリップ)
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5.週末いつもより2時間遅く起きる
平日は朝7時ごろ目覚ましをセットしているのに、週末時には2~3時間遅く目覚めることがあるかもしれない。朝寝坊は体に悪い。「急に週末に寝だめをするということは、平日の睡眠量が足りなかったことを如実に示しています。平日と週末の睡眠時間に差があると体の機能は乱れ、週の初めに通常のリズムを取り戻すのに苦労します。できる限り一定の起床時間を維持し、いつもと違う時間に起きないよう努めるべきです」とフィリップは忠告する。
改善のためのヒント
睡眠負債を解消する方法はかなりシンプルだ。眠りを安定させ一定の生活リズムを取り戻し、できるだけ同じ起床・就寝時間を維持する。もちろん、その実現のためには時間が必要かもしれない。「すべては負債の規模によります」とピエール・フィリップは言う。
睡眠とその質についての現状把握のため、医師は睡眠アプリの利用を勧める。私たちの眠りの基本を見直すのに必要なアイテムとなるだろう。
(1)ピエール・フィリップは『疲れに備える』(アルバン・ミッシェル社、256ページ、18.90ユーロ)という書籍の著者である。
texte : Kassandre Fradelin (madame.lefigaro.fr), traduction : Yuriko Yoshizawa