別れまで女王と共に。フィリップ王配の最期の日々。
Culture 2021.04.12
エリザベス女王の夫のフィリップ王配が4月9日金曜に亡くなった。99歳だった。数週間前にウィンザー城に戻った王配は、城内の自室と庭で最期の日々を過ごした。
4月9日、エディンバラ公爵は住み慣れたウィンザー城で穏やかに息を引き取った。(ウィンザー、2020年7月22日)
フィリップ王配が4月9日に99歳の生涯に幕を閉じた。かねてからの希望通り、ウィンザー城の自らの部屋で息を引き取った。退院後の生活、気力、最期の日々についての印象に残るエピソード…。「デイリー・メール」紙は、宮廷の消息筋が明かした、亡くなる前のフィリップ王配の日常を伝えた。
「殿下はウィンザーに戻られると、もうどの病院にも行かないとおっしゃった」とこの消息筋は同紙に語った。その言葉通り、ウィンザー城のイーストテラスを臨む「簡素な内装の寝室」で、エディンバラ公は息を引き取った。公爵の健康状態は徐々に低下したようだ。
宮廷スタッフによると、亡くなった週の前半はまだ読書や手紙を書いたりしていたという。
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“堅苦しいことは一切なし”
「現役の間ずっと、殿下は規則正しい生活習慣を守り通してこられました。公務を引退されてからは規則に縛られる必要もなくなった。ですから、そのままの生活を続けることになりました」と情報筋はデイリー・メール紙に語った。
”堅苦しいことは一切なし”というのが退院後のフィリップ王配の日常に関する唯一の合言葉だった。毎朝7時30分の、恒例のティータイムも取りやめとなった。食事もプレートで供された。ただ食欲のあまりない日が多かった、とデイリー・メール紙は報じている。
同紙によると、フィリップ王配は気分のいい日にはシャツとセーターに着替え、アイロンをかけたズボンと磨き上げられた靴を履いて部屋から出ることもあった。ごく最近まで自分で着替え、入浴のときだけ侍従がひとりついたという。
最期の数週間は王配の健康状態に合わせ、日々の予定が組み立てられた。「暖かい日は椅子を外に出して欲しいと要望されることもあり、日向に腰掛け、膝に毛布をかけて日光浴をされた。うたた寝されることが多かった」とイギリスのメディアは伝えている。
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揺るがぬ誇り
健康状態が悪化する中でも、フィリップ王配は決して弱った姿を人に見せまいと努めていた。移動のときは杖をつき、ときには車椅子を利用することもあった。「ただし宮廷スタッフから車椅子をすすめるのははばかられる空気があった」とデイリー・メール紙は報じている。
それもそのはず。自室に用意された車椅子を初めて目にしたときのことをスタッフのひとりが回想している。王配は「こんなろくでもないもの、私の視界からどけてくれ!」と怒りの声を上げたという。
イギリスの日刊紙はこんな最近のエピソードも紹介してる。エディンバラ公が読書中に眼鏡を落としてしまったので、侍従のひとりが眼鏡を拾おうと進み出た。しかしすぐにその必要はないことに気づいた。「大丈夫だ。自分で拾う」と公爵は片手を上げて言うと、その言葉通り、自分で眼鏡を拾ったという。昔から公爵の特徴とされてきた自主独立の精神と誇り高さを象徴する振る舞いだ。
「以前も、当時73歳の王配が補聴器を拒む、とエリザベス女王が周囲に語ったことがあった」とデイリー・メール紙は報じている。「そういうことですから、私たちは大声を出さなければなりません」と女王はスタッフに説いたという。
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愛する“リリベット”と
臨機応変な対応が必要だったとはいえ、最後の数週間、エリザベス女王は最後まで夫に寄り添い続けた。「殿下の衰弱ぶりから最期が近づいていることが明らかになってからも、これまでずっとそうしてきたように、夫妻はふたりで一緒に時を過ごすことができた」とデイリー・メールの関係筋は伝えている。「最後の数週間、殿下は1日の大半を寝て過ごされていたものの、意識もはっきりして、女王と仲睦まじく幸福な瞬間を過ごされたこともあった」
フィリップ王配の体調がいい時は、愛する“リリベット”(王配は女王をこう呼んでいた)と一緒に過ごせるよう、随時、宮廷スタッフの時間割や食事の時間の見直しが行われた。
結婚75年、ふたりは最後まで共に歩んだ。死がふたりを別つまで。
texte : Camille Lamblaut (madame.lefigaro.fr)