20代で更年期...「早発卵巣不全」に悩まされる女性たち。

Culture 2021.04.12

30代、なかには20代で早発卵巣不全と診断された女性たちがいる。この疾患は40歳未満の女性の1%、 30歳未満の女性の0.1%に見られるという。若くして更年期症状に苦しめられ、妊娠計画が狂わされた彼女たちに体験を語ってもらった。

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40歳未満の女性の1%が早発卵巣不全に苦しんでいる。 photo : Getty Images

最後に生理があったのは2020年3月。日中は職場でほてりに襲われるたびに顔をあおぐ。関節も痛い。アナイスは更年期だ。年齢は29歳。早発卵巣不全と診断された。この疾患を抱える女性は40歳前に生理が止まる。40歳未満の女性の1%、30歳未満の女性の0.1%に見られるという。

アナイスは、外陰がんを患った時に抗がん剤治療と放射線治療を受けた経験があり、それが閉経を早める原因となった。「こんなことが起きるなんて誰も教えてくれなかった」と彼女は話す。「治療が始まる前に、ただ“卵巣が薬の影響を受ける”と言われただけ。その時はどういうことかよくわからなかった」

抗がん剤治療や放射線治療は、卵巣摘出と同様に早期卵巣不全の原因として挙げられる。遺伝的要因が関係していることもある。しかし「遺伝子に変異が見つからず、原因が特定できないケースが80~90%と大多数を占めます」と、トゥールーズ大学病院更年期センター長で婦人科教授のフロランス・トレモリエールは話す。

「子どもは無理です。閉経しています」

早期卵巣不全は予防することも予測することもできない。現状で医師にできることといえば、母親や祖母、親戚の中に発症した人がいるという患者に対し、情報を提供することに限られている。

「患者に娘がいる場合、娘が子どもを作ることを考え始めたら、できるだけ妊娠を急ぐよう伝えるように話します」。トレモリエールは語気を強めてこう続ける。「40歳前に生理が止まるのは普通ではありません。月経サイクルの乱れはストレスによるもので、異常ではないというメッセージが強調されすぎている傾向があります。しかしそのために、生理がなくなって4年経ってようやく診療に訪れる女性たちもいるのです」

中には自分が早発卵巣不全であることをたまたま発見するケースもある。「子どもを作りたいと思った時に、自分が閉経していると知った」と話すのは33歳のレスリーだ。

2013年と2015年に手術を受けた彼女には右の卵巣しかない。しかし執刀医からは妊娠は可能だと説明された。2回目の手術から4ヶ月後、初めて生理が来なかった。しかし妊娠はしていない。5ヶ月後、不妊治療専門医からこう告げられた。「あなたはもう子どもはできません。閉経しています」

当時レスリーは28歳だった。「泣き崩れました」と彼女は回想する。「体内時計がこんな風に突然停止してしまって、身体の内部が死んでしまったみたいだった。身体の内部が腐ってしまった気がした」

「子どもを欲しいと思っていて、それまで機会がなかった若い女性が、もう子どもは作れないと宣告されたら、大きなショックを受けてもおかしくありません」とトレモリエールも言う。何の予兆もなく妊娠可能な時期を奪われてしまったような思いを抱えていくことになる。

レスリーは激しい怒りを覚えた。「手術によって身体にどんな影響が出るかとか、閉経について何の説明もなかった。情報も充分に提供してもらえなかったから卵細胞を保存することもできなかった。鬱憤を晴らすために、そして諦めるために、婦人科医に手紙も書きました」

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若くして更年期症状に悩まされる

早発卵巣閉経は妊娠を計画している女性から自然妊娠の可能性を奪うだけではない。若くして身体にさまざまな更年期の症状が現れる。「一気に老けてしまった感じだった」と42歳で閉経したラファエル(仮名)は打ち明ける。

「物忘れ、不眠、気分のムラなどの症状が出て、1日中汗が止まらなかった。肌も骨も衰えてしまった。もともと視力はとてもよかったのに、老眼になった」とラファエルは語る。

更年期による症状は、仕事や交友関係、セックスライフにも影響を及ぼす。「面倒なことだらけ。尿漏れもありました」とレスリーは明かす。「最初は夫に対して恥ずかしかった」

周囲の視線にも耐えなければならない。多くの場合、打ち明けると相手は困惑する。そして必ず「かわいそう」と言われる。「閉経したと告白すると、”子どもができないんだ”と言われてお終い。そのことでも傷つきました」とアナイスは振り返る。

「とくに年上の女性たちの視線、私がもう閉経していると知った時の彼女たちのショックぶりが一番煩わしかった」と33歳のレスリーは話す。冗談やステレオタイプも厄介だ。

「心理面に及ぼす影響も看過できません」とトレモリエールは語気を強める。「彼女たちは自分が“おばあさん”になったと思ってしまう。“早期閉経”という用語の使用を避けるのも、この言葉が老いを連想させるためです」

世間とのズレ

更年期の症状は時に日常生活に支障をきたすほど重くなることもあるが、通常の更年期障害の治療と同じようにホルモン補充療法で緩和する。ラファエルは「生まれ変わったようだった」と言い、レスリーは「前と同じような」感覚で生活できるようになったと話す。

「早発卵巣不全の女性は全員治療を受けるべきです」とトゥールーズ大学病院更年期センター長のトレモリエールは強調する。「全員です。禁忌事項に当てはまる人は別ですが、この年代では稀です。生理学的な変化の一段階として起こる閉経とは違い、早発卵巣不全は疾病です。治療を受けないと患者はホルモン不足になり、健康状態に深刻な影響が出ます。たとえば心筋梗塞のリスクは2~3倍高くなります。」

症状が緩和あるいは完全になくなっても、同年代の友人たちとの意識のずれに悩まされる女性たちもいる。「周りでは妊娠する人が増えてきて、居心地の悪さを感じます。友人カップルの妊娠のニュースを聞くと私もとても嬉しいけれど、子どもに関連した会話が多くなるので、つらい時もあります」とレスリーは話す。

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親になる

早発卵巣不全を患う女性たちにとって妊娠するための唯一の治療法は卵細胞提供を受けることだ。卵巣機能が完全に停止していないケースでも状況は同じ。「ホルモン補充療法の初期に卵巣活動の再開が見られることも時々ありますので、性交渉をするよう女性たちにアドバイスします。ただ自然妊娠の可能性は全くないわけではないですが、極めて低いです」とトレモリエールは言う。

可能性は極めて低いとされるだけに、2012年10月、妊娠検査薬で陽性反応が出た朝のことをラファエルは一生忘れないだろう。同じ日の午前中に検査結果の確認のために予約を入れていた婦人科を訪れると、医師は彼女にもう妊娠は無理だと告げ、卵細胞提供と養子縁組の話を始めた。「私は完全に上の空で、医者の話もちっとも耳に入らなかった」と彼女は振り返る。

「3ヶ月間、インターネットで情報をかき集めた。いま目の前で、子どもは無理だと言われている。でも、5時間前に検査薬で妊娠していると出た…」。婦人科医も結果を見て「信じられない」「統計的にありえない」と驚きを隠さない。医師はそれでも慎重で、妊娠判定のための血液検査をするよう指示し、妊娠が「順調に」運ばない可能性もあると注意を促された。妊娠は「順調に」運んだ。ラファエルは2013年6月20日に第一子を出産した。卵巣刺激治療を受け、3年後の同じ日に第二子が生まれた。

アナイスは28歳の時、放射線治療と抗がん剤治療を始める前に、卵細胞を凍結保存していた。「いつか子どもが欲しいとずっと思っていましたが、初めはそれほど真剣に考えていませんでした。独身でしたし、病気の治療のほうが気がかりでした。しばらくして後悔したくないと考えるようになって、将来への備えだと思って決意しました。今は自分の卵細胞がランスに凍結保存されているから、自分が望んだ時に体外受精を行えると思うと安心します」

レスリーと彼女の夫は養子を迎えることにした。自分の身体を受け入れ、妊娠できないという事実とともに生きていくために、そしてレジリエンスを鍛えるために、心理カウンセリングを受けた。いまレスリーは同じ疾病に苦しむ若い女性たちのことを考えている。閉経の話題は「タブー」だと彼女は言う。そうした現状を打ち破るために、不調を感じたらすぐにかかりつけ医に話し、サポートしてくれる医療機関を探し、見つけることが重要だと彼女は強調する。「診断された時は、強い孤独感を覚えると思います。でも決してひとりではないのです」

texte : Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr)

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