下町風情の残る谷中で、旅するように暮らせるホテルへ。
Culture 2021.04.26
「旅がしたい」。コロナの流行後、誰もがそう思ったのではないだろうか。遠出は難しいまでも、ちょっとした旅情を味わいたい。そんな夢を叶えてくれる、まったく新しいコンセプトのホテルが5月1日、東京、谷中に登場する。
住宅地に溶け込むように建つ「YANAKA SOW(ヤナカ ソウ)」。周囲を寺院に囲まれ、鳥の声も響く静かな環境だ。
その名は「YANAKA SOW(ヤナカ ソウ)」。積水ハウスが“民泊可能なマンション”をコンセプトに設計、ホテルオーナーは積水ハウス不動産東京。世界最大の旅行コミュニティプラットフォームのエアビーアンドビーと、ブランドデザインを手がけるオレンジ・アンド・パートナーズがタッグを組み、運営にあたる。
日暮里駅、根津駅、千駄木駅に囲まれた「谷根千」と呼ばれる地域は、寺院や墓所が立ち並び、高い建物のない閑静な街並みが広がる。YANAKA SOWは、この地域のちょうど中間あたりに位置している。
エントランスの共用部。小上がりになっているスペースは畳敷きで、縁側の風景をのんびり愉しめる。
ホテルの宿泊プランは、1泊からホテルとして利用できる「STAY plan」と、30日から365日までの長期滞在が可能な「LIVE plan」が用意されている。全13室のホテルには、短期間の滞在者と長期間の滞在者の両方が混在し、それぞれの視点で谷中の街を楽しむこととなる。施設は「第2の自宅」をコンセプトに作られ、共用部には無料で利用できるキッチン、ランドリー、ライブラリーを用意。また各客室には大型の冷蔵庫とキッチン、広いバスルームが備えられ、まるでここに暮らしているかのように滞在時間を過ごせる。
共用部、無料で使える洗濯機の前にはカセットデッキが! ホテルをイメージした選曲のカセットが用意される。
いまの落ち着いた街並みからはなかなか想像できないが、江戸時代は色街として栄えた谷中。その雰囲気を現代に表現するべく、YANAKA SOWにはサイケデリックなネオンや、現代アートのアーティストによる作品があちこちにちりばめられ、穏やかな空間と異質に溶け合う。和をモチーフにした客室内にもアートピースが飾られ、それぞれの部屋ごとに異なるテーマの本棚が用意されている。
和風で落ち着いた室内。静かで広々した空間は、ワーケーションにも向いていそうだ。
この部屋のテーマは「禅と仏教」。各部屋の選書は、ブックディレクターの幅允孝さんが手がけた。
低い椅子のある部屋。こちらの部屋にある本の選書テーマは“愛とエロス”(!)。
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街歩きのアングルを変える案内人。
YANAKA SOWの魅力は、ホテルだけにとどまらない。滞在者のチェックイン、チェックアウト時には、「YANAKA DIGGER(ヤナカ ディガー)」という、谷中の情報に詳しいスタッフが在籍。街歩きのポイントや歴史、文化など、谷中の旅を深く楽しむアドバイスを気軽に聞くことができる。
共用部に置かれた周辺地図を見ながら、散策をアドバイスしてくれる。谷中の歴史や文化はもちろん、地元の人から薦められたお店やメニューまで、ガイドブックにないディープな谷中が見えてくる。
部屋に荷物を降ろしたら、さっそく街へ出かけよう。寺院や古民家が多く、細い道がたくさん交差する街並み。空襲を逃れたため、古い家屋がそのままに残っているケースが多いのだという。地域の不動産事業者も、そうした古い家を取り壊すのではなく、リノベーションして新しい店や住居として提供し、町の景観を守っているのだとか。
ホテルを出てすぐのところにある、歴史を感じる築地塀。電線を地下に埋めており、電柱がない景観が広がる。
古民家を改装した店舗が軒を連ねる。また、谷中はほとんどの家の前に植栽が置かれ、町のあちこちに緑が広がる。
少し歩けば、活気あふれる商店街「谷中ぎんざ」が見えてくる。店の軒先では食べ物のテイクアウトがこれでもかと並んでいる。好きなものを買い集めたら、酒屋の前にある角打ちで仲間と乾杯! いまの季節、夕方には心地よい風が通り抜け、密にならずに日本酒や料理を愉しめるだろう。
近隣の店から買い集めた軽食や菓子とともに、酒を愉しもう。地元の人から薦められた居酒屋のチヂミに、キムチを載せる。下町の楽しみを満喫しよう。
明るい時間から地元民も集う酒屋「越後屋本店」。店の前でビールや日本酒、ゆず酒やワインの杯売りを行う。
気付けば日も暮れる時間に。「夕焼けだんだん」と親しまれる階段から街を見下ろすと、不思議と郷愁が胸に去来した。旅するように泊まれるホテルで、知っているようで知らない東京の魅力を探してみてはいかがだろうか。
日が暮れる時間帯、昔ながらのどこか懐かしい景色が眼下に広がる。
ヤナカ ソウ
東京都台東区谷中5-2-14
全13室 ¥17,600~/室
www.sowhotel.jp
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、掲載している内容から変更になる場合があります。
photos: MIREI SAKAKI texte: madame FIGARO japon