ドヌーヴ様の趣味は...CMが話題の仏フリマサイト。
Culture 2021.04.28
個人間売買サイト「ルボンコワン」が、開設15周年を記念して、あのカトリーヌ・ドヌーヴを特別ゲストに迎えたユーモアたっぷりのCMを放映中。これを機に、ルボンコワンの成功と消費スタイルの変化の関わりを探ってみよう。
ルボンコワンのCMに登場したフランス映画界の重鎮カトリーヌ・ドヌーヴ。photo presse
フランス映画のアイコンが個人間売買サイト「ルボンコワン」の15周年をお祝い? ありえない、ばかげたアイデアだと思うかもしれない。でも、カトリーヌ・ドヌーヴなら...。
映画『エール!』のヒットで知られるエリック・ラルティゴ監督が手がける、サイトの15周年を記念した魅力あふれるテレビコマーシャルがそれ。映画の撮影がないときにはまっている趣味を、ドヌーヴが自虐的ユーモアたっぷりに明かしているのだ。
彼女の趣味、それは...鶏コレクション。陶製、木製、ファイアンス、さらにはクリスタル製まで。ドヌーヴ様は大小さまざまの鶏をコレクションしている。
「あるとき、彼女が500個もの鶏の置物を所有していて、ルボンコワンで売買していることを知ったんです」と、サイトの広報部長のアン・クマンは話す。「それでこの趣味を中心にストーリーを構想しました。誰でも利用できる、カトリーヌ・ドヌーヴさえ活用している、広く一般に普及したプラットフォームであると伝えるのが狙いです。彼女は私たちの依頼に応えてくれ、個人的な趣味を公開することを快諾してくれました」
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オンライン中古市場
ドヌーヴも利用している、個人広告プラットフォームのルボンコワンは、毎月のユニーク訪問者数が2900万人。フランスにおける個人間売買サイトのリーダーだ。「当サイトはGAFAに次ぐ地位」とクマンは胸を張る。
発祥はスカンジナビア。スウェーデンのサイト「Blocket」のアイデアを基に、ルボンコワンの名称で2006年にフランスに進出。手数料無料を武器に業績を伸ばし、あっという間にeBayを抜いた。
「当初から手数料無料というモデルが反響を呼びました。特にガレージセールや古物市が盛んなオー・ドゥ・フランス地域で人気を集めました」とクマンは言う。「ルボンコワンは中古市場アクセスを刷新しました」。
いまや財産循環という概念を掲げ、責任ある消費行動を推進する企業のひとつとして名乗りを上げるまでに。こうした方向性を打ち出すために、リー・エデルコートとアンチファッション運動を創始したステファニー・カルヴィをスポークスパーソンに任命した。
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消費社会の鏡
ルボンコワンはこの15年の間にインターネットを利用した中古品売買の促進、地元での買い物の活性化を通して、フランス人の消費習慣の変化に寄与してきた。
「サイトの発展は共同消費などに見られるグローバルな社会変化とともに歩んでいます。価格の安さとエコロジカルな消費スタイルというふたつの論理が、中古市場に参加する消費者の心を掴んだのです。つまり、一方で出費を安く抑えたいという消費者がおり、その一方でよりエコロジカルなアプローチを志向する反成長を臨消費者がいるということです」と、パリ第12大学で教鞭を取る消費社会学者のアン・ドゥ・リュジは分析する。
パンデミックもサイトの成功を後押しした。
第1回目のロックダウン前は2800万件だった広告掲載件数が、2021年第1四半期には4000万件に増加。しかしこの盛況ぶりは問題も提起する。
「現代は所有することより、ものの機能性や利用価値を重視する傾向があります。私たちはいま、このことのパラドックスに直面しています。ものの値段が安くなると、かえって消費意欲がかき立てられるからです」とドゥ・リュジは言う。
「ルボンコワンのようなサイトは消費社会の延長にあります。世の中にはものが溢れている。そのため流通量はかつての2倍に増大しています。この状況はひとつの品物を古くなるまで使い続けるという考え方の対極。以前より物品を転売しやすくなったことで、寄付が減るという問題もあるのです」
texte : Caroline Hamelle (madame.lefigaro.fr)