コロナ禍のフランスで話題のミクロウェディングって?
Culture 2021.05.01
通常、春から初夏にかけては結婚式のシーズンだが、新型コロナウィルス感染症の終息はまだ見えない。 パンデミックが始まって1年が経過し、指輪を交わし永遠を誓い合うのをこれ以上待てないというカップルも多く存在する。彼らの解決策は? ミクロウェディングだ。
新型コロナウィルス感染症が流行して一年が経過し、世のカップルたちはもうこれ以上、永遠を誓うのを待ちたくはないはずだ。 photo : Getty Images
2020年11月7日。フランスでは2度目のロックダウンが始まったばかり。キャロラインとジェレミーはついに結婚を誓ったが、彼らが計画した通りにことは運ばなかった。
市庁舎での結婚式に参加したのは(*フランスでは、市庁舎で結婚式を執り行うのが一般的)、当初予定していた90人ではなく、5人だけ。ちなみに2度の延期後に執り行われた。5歳の娘を持つこのカップルは、2020年の春の結婚式を諦めざるをえなかったが、再び延期することは想像できなかった。
「私たちは家族を法的に守るため、すぐに結婚したかった。何が起こったとしても、私たちは夫婦として認められる」とキャロラインは語る。Facebookを通じて親族や友人に見守られながらの結婚式の後、彼らがしたこととは?「“証人”たちと一緒にシャンパンを飲み、その後娘を連れて帰宅し、おいしい食事を取ったわ。思い描いていたものとは違ったけれど、良かったと思う。この喜びを保ち続けることが幸せにつながる、と自分に言い聞かせているの」
披露宴も予定していたが、いまはすべて中断せざるをえない。すべてが順調に行けば、2021年10月に盛大なパーティを実施する予定だ。
“陰性結果を持って参加してくれてありがとう”
小規模グループで行われる結婚式はミクロウェディング(micro-mariage)と呼ばれている。パンデミック以来、フランスではこの用語が流行っており、コロナ禍で結婚指輪を贈るためのウェブサイトなどによく使われている。
ふたりきりで結婚を祝う人もいれば、自宅の庭に近しい友人を数人招いて乾杯する人もいる。また、「(新型コロナウイルス感染症の検査の)陰性結果を持って参加してくれてありがとう」と招待状で言及した上で、一軒家を貸し切って大きなテーブルを囲むのを好む人もいる。
ボルドーのウェディングプランナー・エージェンシー、Sparklyの創設者であるシルヴィ・パトゥンは次のように説明する。「ほとんどの場合、市庁舎で結婚式を挙げた後、小さなティーパーティーやカクテルレセプションを開きますが、そこではソーシャルディスタンスが厳密に適用されています」
また、次のようなことは避けられない。ゲストの数を下方修正すること(最大約30名、多くの場合、市庁舎の収容人数に関連する)、十分な数のマスクの確保、プログラムからダンスを削除(パーティーホールの使用が禁止されている)、また新たにロックダウンが行われた場合は開催自体が危ぶまれること。実際、2021年3月20日以降、16の県ではレセプションを行うことができない。
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“魔法をかける”
特別な日を、より小規模で簡単に祝わなければいけない——このアイデアは、結婚式ができずにいるすべての人の心を沸き立たせるものではない。
「カップルの中には、1年半前から準備していた人もいます。彼らにとって、特に2回も延期した後、それまで思い描いてい計画ををすべて諦めるのは難しい。私は2022年に結婚式を予定している人たちに向け、これまでのような式の考え方を改め、代わりに小さなイベントを検討するよう呼びかけています。なぜなら、いまの段階では、来年100名や200名規模の結婚式が可能になるという保証はないからです」とシルヴィ・パトゥンは付け加える。そして、計画を再考してパーティを諦める人もいれば、そうでない人もいる。
「カップルたちは“たとえ参加人数は少なくても、魔法をかけよう”と自分たちに言い聞かせています」と語るのは、ウェディングプランナーでD Dayブランドの創設者であるエロディ・バンサール。彼女が担当する新郎新婦たちは結婚式の予算を減らさないという。「この大変な状況下にあっても、家族で過ごす週末のための民宿や貸別荘を手配して、式を企画するができます。ダイニングルームに大きなテーブルを準備して、美しく飾り付け、ミュージシャンやカメラマンを手配し、ケータリングよりもおいしい食事を提供できるシェフを用意する。新郎新婦の幸せあってこその結婚式。盛大なパーティは二の次です」
エミリーとそのパートナーは、ふたりだけで結婚式を行うことを即決した。それぞれの家族は式の数日後に結婚の事実を知ったが、コロナ禍は「良い言い訳」となった。「私の家族は反発したけれど、夫の家族はほとんどしなかった。家族には、これは私たちの意思で選んだことだと伝えたわ」と若き新婦であるエミリーは話す。「コロナだろうとそうでなかろうと、とにかく私たちは6人で市庁舎に行った。特別な日に着ていたのと同じネイビーブルーの服をお互いに贈り合い、きれいなお皿を出して、私と夫はグルメ、子どもにはマクドナルド、そして私が大好きなパティシエのケーキを準備したわ」
ふたりは式の規模を縮小し、ゲストの数も最小限したものの、感情を抑えることはしなかった。「参加してくれた人たちは、とてもうれしそうに私たちの結婚を祝ってくれた。何か厳しい状況が起こるのでは、と心配していたけれど、とても温かいお祝いになったわ。マスクを外すこともでき、私たちは美しい瞬間、そして素晴らしい日を迎えることができたの!」
texte : Sabrina Pons (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi