日本人が英語を話せないのは、ある「武器」を持っていないから。
Culture 2021.05.10
英語が苦手な理由は、「英会話」学習をしていないから――そう話すのは、話題の英会話スクールの創業者・小茂鳥雅史氏だ。実戦ですぐに使える「武器」を身につけると、一気にスピーキング力が上がるという。どんな武器を、どう覚えればいいのか?
画像はイメージ photo:metamorworks-iStock
いつかは英語を話せるようになりたい、と勉強を続けて早数十年......なのに、一向に英会話が上達した気がしない。そんな悩みを抱えているのなら、真っ先にするべきことがあるという。
それは、「何のために勉強をするのか」を自分の中ではっきりさせておくことだ。そんなこと? と思われるかもしれないが、案外見落としてしまっているのではないだろうか。ただ漫然と勉強を続けていても「いつか」は永遠にやってこない。
テレビ番組「マツコ会議」(日本テレビ系)にも出演したことで話題の英会話スクール「スパルタ英会話」を主宰する小茂鳥雅史氏は、英会話を身につけるために本当に必要なことは、「英語学習」ではなく、「英会話学習」だと言う。そして、最短で効率よく話せるようになるためには、「己の目的を果たすための英会話」にフォーカスして、磨くことだと断言する。
前著『スパルタ英会話――挫折せずに結果を出せる最速学習メソッド』(CCCメディハウス)で小茂鳥氏は、自身の体験と脳科学を基に磨き上げた、あきらめずに続けられる英会話習得法を詳細に解説した。
今回上梓した『スパルタ英会話――言いたい順に身につける「武器センテンス」1000』(CCCメディアハウス)はその実践編ともいうべき1冊。学習者それぞれが目的を果たせるよう、汎用性の高いセンテンスを集めている。
本書に挙げられたセンテンスは、実戦ですぐに使える「武器」となるもの。会話の武器を身につけることで、一気にスピーキング力が上がるという。まずは武器を身につけるプロセスから見ていこう。
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RPG感覚で英会話を自分のものにする
そもそも英会話学習の目的は、「自分の言いたいことが言えて、相手の言っていることがわかる」ようになることにある。TOEICの点数を上げたいのならば、目的も取るべき手段も別にある。英会話学習を成功させるには、「英語で話す具体的な状況」をイメージすることが不可欠だ。
本書ではあえて、「外国人と恋人・夫婦になる」ということをゴールに設定し、センテンスを紹介している。
そこには理由がある。誰かと仲良くなり、出かけたり、計画を立てたりという行動は、恋愛に限ったことではない。あらゆる人間関係で大切なスキルである。そこで、ベーシックなセンテンスを頭に叩き込み、単語を置き換えることによって、さまざまな人間関係の構築に応用してほしいという願いが込められている。
まずは友達にならないとはじまらないということで、以下のようなセンテンスが紹介されている。
一杯おごらせてくれない?(本書37ページ)
Can I buy you a drink?
一目惚れって信じる? 信じないならもう一度通り過ぎるけど?(38ページ)
Do you believe in love at first sight or should I walk by again?
誰しも一言目は緊張するだろうが、会話をはじめないかぎりは先に進めない。自分が使えそうなものを完全コピーして使ってみるのがいいだろう。
人は「知っていることしか話せない」
プライベートとは違い、ビジネスの現場では失敗が許されないという緊張感がともなう。意図が伝わらないことは、ビジネスが進展しないことと直結する。とはいえ、会話力を身につけるプロセスは、先に紹介した「外国人と恋人・夫婦になる」の場合と同じだ。
本書では企業の営業担当者が、新規顧客を獲得するまでのシチュエーションを想定し、そこに至るまでのシナリオを紹介している。ファーストコンタクト、プレゼン、ミーティング、交渉と、想定できる状況を細かく切り出し、センテンスを洗い出していく。
電話でのやりとりで使われるセンテンスを見てみよう。
彼[彼女]に折り返し電話するよう、伝えていただけますか?(116ページ)
Would you mind asking him[her]to call me back?
こういったセンテンスがすぐに出てくるかどうか。とっさの一言レベルだが、知らなければ言葉に詰まってしまうのではないだろうか。当たり前だが、人は知っていることしか話せない。知らないこと、知らない単語を話せる人は一人もいない。
だからこそ、スパルタ英会話では、しつこくセンテンスを丸ごと覚えることを推奨している。この「覚えている」ということが、話すために必要な最低限のレベルだからだ。
そのために、最も大事なのは「声に出しながら、インプットとアウトプットを大事に行うこと」。繰り返すことでだんだんと口から英語が出てくるようになる。では、どんなふうに、どのくらいやったらいいのか。
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記憶を定着させるプロセス
ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスが導き出した「エビングハウスの忘却曲線」をご存じだろうか。人の記憶は1日経つと74%も忘れられてしまうが、繰り返し学習することで忘れる割合を低下させるというものだ。
脳の忘れるしくみを知ったうえで、「覚えている」状態を維持するには、次の4ステップが必要だという。
Step1 : 1日のなかで《10回×3セット》を声に出す
(=センテンスを完璧に覚えるステージ)
Step2 : 1週間同じセンテンスを声に出す
(=センテンスを長期記憶化するステージ)
Step3 : 単語を置き換えて声に出す
(=センテンスを場面に合わせて使えるようになるステージ)
Step4 : 実践で使って口ぐせにする
(=センテンスを使いこなせるようになるステージ)
とくに、同じセンテンスの復習を続けながら、完璧に覚えるまで練習することが重要だ。新しいことをたくさん学習するのではない。徹底的に復習することで、記憶したセンテンスの数を1つずつ地道に増やしていく。
そうすることでセンテンスが長期記憶化する。その次は、センテンスを日常で使えるレベルまでトレーニングしていく。「口ぐせ」レベルになるまで、声に出して練習する。
そして、最後はとにかく人前で使ってみる。英語を話してコミュニケーションをとった経験を記憶として、自分に植え付ける。
話す相手は必ずしもネイティブスピーカーである必要はない。自分で文章を考えて相手に伝えるというプロセスは、相手が誰であろうと同じだからだ。自分が英語を話しているという実感を成功体験として、積み重ねることも非常に重要なのだという。
効率的な学習方法はある。しかし残念ながら英語学習に終わりはない。一生懸命学習しても、なかなか成長を実感できずに、挫けそうになることもあるだろう。そんなときは、「英語が完璧に話せるようになることは一生ない」と割り切ることも助けになると、著者は提案する。
そして、どんな方法でも英語に触れ続けていれば、英語力は必ず伸びていくという。気がつかない間に髪の毛が伸びているのと同じで、いつの間にかしっかりと力はついているのだから。

『スパルタ英会話 ――言いたい順に身につける「武器センテンス」1000』
小茂鳥 雅史 著
CCCメディアハウス
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texte:Newsweek JAPAN