MAX MARA 私が私である理由 with マックスマーラ vol.1 作家、川上未映子「女性らしさと強さは、なんら矛盾しない」。
Fashion 2025.05.30
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創業から女性の人生に寄り添い、自分らしさを表現するきっかけとなるワードローブを創造し続けているマックスマーラ。完璧を求めるのではなく、誰もが本質的な強さを持つ、卓越した"Remarkable Women"であるというメッセージを送り続けている。そんな生き方を体現するのが、作家、川上未映子だ。これまで自身の性と肉体性に真摯に向き合う女性像を描いてきた彼女が、マックスマーラとの邂逅を語る。
自分らしさを紐解く3つのこと
川上未映子にとって「装うこと」とは
装うことは、
瞬間的に『私』という人間を
他者へと語る何か
2007年のデビュー作『わたくし率 イン 歯ー、または世界』を起点に、『乳と卵』、『夏物語』など、川上未映子は自身の性と身体性の在り方を探し、模索する女性像を描いてきた。肉体への鋭い眼差しは、ときに自身や他者の装いに対して歯に衣を着せない批評を伴う描写となって小説の中に現れ出ることがある。彼女にとってファッションとは、装いとは、どのようなものなのだろうか。
「私は子どもの頃から洋服がすごく好きなんですね。それは、あの時おばあちゃんはこんな服を着ていた。この時母はこんな服を着ていた。そして私はタータンチェックのスカートをはいていたと、ファッションと細かな思い出とが密接に結びついて存在しているから。
同時に、装うことは、自分に触れることでもある。自分のいちばん外側にある皮膚のようなもので、服とは体の一部なんじゃないかと思える時があるのです。まとった服はある場面において挨拶よりも、自己紹介よりも早く、瞬間的に『私』という人間を他者へと語る何かになりえる。
人が日々何を大切に思って過ごしているかということと深く結びついているから、ファッションは重要。私にとってファッションとは過去と接続するアイテムであり、大切な人と過ごした時間を思い出させるタイムカプセルであり、もう会えなくなってしまった人に触れるような気持ちにさせてくれる、大事なものです」。
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プリミティブで芸術的なバッグとともに

マックスマーラは1951年、イタリアのレッジョ・エミリアで、アキーレ・マラモッティが創業。弁護士であった彼は、男性用のコートを女性のためのアイコニックなアイテムへと生まれ変わらせることに使命を注いだ。アキーレの曾祖母はオーダーメイドの高級婦人服店を経営し、母は第二次世界大戦中、若い女性たちにテーラリングと縫製技術を教える学校を設立するなど、代々、女性への支援を大切にしてきたブランドである。その精神は、時代を越えてブランドの核として息づいている。現代の女性たちのライフスタイルに寄り添うアイコン「ホイットニー バッグ」もまた、その象徴のひとつ。2025年は、誕生から10周年のアニバーサリーを記念して、様々なサイズ、様々な色の多様性のあるラインナップが販売される。撮影でいち早く、新作のミニマルサイズを手にした感想を聞いてみた。
「バックの使いやすさというのは、自分の必要とするものを入れて持ち運ぶという、人間にとってとてもプリミティブで大事な行為を支えてくれることにあります。何かあった時に、バッグを持って、大事なものを入れる。それ自体が象徴的な行為ですよね。今日、いろんな色とサイズの『ホイットニー バッグ』を持ちましたが、どんな気分の時でも、自分の気持ちも受け入れてくれるようなプレーンな心地よさを感じました」。
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川上未映子が共鳴する"Remarkable Women"の精神
強さと女性らしくあることは
矛盾しないのだと
思い出させてくれる
「私はジャンルに関わらず、素晴らしい表現には、両極端のものを同時に見せる力があると思っています。マックスマーラの服は女性である自分の肉体や性をしなやかに意識させてくれるラインで、着ることで自分が強くなったような気持ちにもなる。女性らしくあるということと、自分の好きな柔らかさや曲線が、目指している強さとなんら矛盾しないんだということを、着るたびに思い出させてくれるんです」。
マックスマーラは"Remarkable Women"、すなわち、卓越した女性のためにデザインされたワードローブこそが、ブランドが大切にしている価値観であると打ち出し、どんな女性でも傑出した存在になれると、服でその生き方を後押しする。
ーーーそれでは、彼女にとっての"Remarkable Women"とは、どういう存在なのだろう?
「立派な功績を成し遂げることも大事なことですが、人にとって一番大事なこととして、私は優しくありたい。この2、3年、年代的なこともありますが、母がいなくなるなど辛いことが続き、人の優しさや、情、かけてもらった言葉がかけがえのないものだということを改めて思い知った歳月だったんです。私が本当に弱っていた時に手を差し伸べてくれた人たちみたいに、私も同じように手を差し伸べる人になりたい。それができる人が、私にとっての輝かしい"Remarkable Women"。いま、自分がどれぐらいそういう存在に近づけているかは、自分ではわからないのですが」。
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世界中の女性たちに、自分の肉体への意思決定を考えさせる川上未映子の小説の力

「私自身が自然体でいるのはどういう時かというと、物事を考えている時間なんです。文章を書く仕事なので、不思議だなとか、なぜこうなってるんだろうとか、そういったものに出合うとずっとそれを考える。何かを決める時や迷った時に、後になってあれで良かったんだと思うためには、やっぱり考え尽くすことが大事なんですよね。そして、恐れすぎないこと。私は子どもの頃からどちらかというとネガティブなことを想像してしまうタイプですが、あまり恐れないでもいいんじゃないかと年齢を重ねたからこそ、行きつきました」。
マックスマーラが多くの女性たちの日常を支えてきたように、いま、川上未映子の小説は世界各国で翻訳され、女性たちのエンパワーメントとなっている。特に、その年代、年代で気づく自分の肉体やセクシャリティへの違和感や拒絶心、嫌悪感など、これまで表立って語られてこなかったネガティブな反応も含め、赤裸々に描いてきたことが多くの読者から共感を呼んでいる。特に『夏物語』では、2008年に発表した『乳と卵』の主人公である夏子が38歳になってようやく自身の肉体や生殖機能の在り方に会得する長きにわたる思考の彷徨いは他人事とは思えない。
「『夏物語』に関しては、生殖に特化して書いたところはあるんですけど、やっぱり登場人物が10年生きているのと、30年、50年とでは違いますよね。それでも、人には変わらないところがある。変わるものと、変わらないものの差はなんだろう。その疑問に対しての答えが自分の中でいくつもパターンが蓄積されていく。それが私にとってはどちらかというと良いことのように思います。私自身、40代になって、これまでできていたことが突然できなくなったこともありますし、逆にこれまで気づかなかったことが気づけるようになったこともある。身体というのはすごく不思議なもので、替えの効かない、変化し続けるものを生きているということを日頃から感じています。
同じ小説でも、例えば国によっては、女性が自分の身体に対して自己決定権を行使するのが難しいところもあり、文化の背景によって、読まれ方が全然異なる。そんな風に読んでもらえたのかと驚かされることばかりです。テーマは違いますが、『夏物語』や『ヘヴン』も、皆さん一度きりのご自身の人生と重ね合わせて、体ごと入って読んでくださってるという感じがすごく伝わってきます。それは書いてよかったなと思う瞬間ですし、これからもしっかり書いていかなきゃいけないなっていう気持ちにさせてもらえます」。
最後に、装うことは記憶と結びついているという彼女にマックスマーラの思い出を聞くと、特別なエピソードを話してくれた。
「数年前、母に病が発覚し、有効な治療法がもうないといわれたんです。そのことがわかった私はすぐにマックスマーラのショップに行って、母のために大量に服を買って贈りました。カシミアのセーターやケープ、ワンピース、コートやゴールドのダウンジャケット! シングルマザーで、プロテスタント教徒で、私たち姉弟を本当の愛情をもって育ててくれた母の体を、私が抱きしめているみたいに、暖かで柔らかなもので包んでいたかったんです。母は、みえちゃん、暖かいし、すごく軽いね、と驚いて、本当に喜んでくれました。それはかけがえのない時間だったけど、あれほどつらくて悲しい買い物もありませんでした。いま、それらの服は私の手元にあります。袖を通すと、まだ涙が止まらないけれど、でも母と一緒に歩いているような気持ちになる、特別な記憶を持つ服なのです」。

マックスマーラの「ホイットニー バッグ」が世に出て、今年で10年を迎えた。 2015年、建築家のレンゾ・ピアノが手掛けたホイットニー美術館の開館を記念し、レンゾ率いるレンゾ·ピアノ ビルディングワークショップとのコラボレーションによって誕生。半永久的に美術品を守る使命を持つ美術館の特徴的な縦の線が際立つファサードとプロポーションを投影した「ホイットニー バッグ」のコンセプトは、「美学」と 「テクニック」。同時にこのバッグは女性たちの所持品と誇りを支え、守ってきた。初代でも登場したアルミニウムカラーの限定モデル(画像上)を数量限定で発売するほか、6種のサイズと13のカラーと豊富にラインナップ。
photography: Mitsuo Okamoto styling: Mihoko Sakai hair: Kouichi Nishimura (vow-vow) makeup: Masayo Tsuda (mod's hair) video director : Akari Eda cinematographer : Rui Arichika colorist : Sota Ito music : Kaito Sakuma interview & text: Yuka Kimbara