誰も教えてくれない、出産後のセックスの真実。
Culture 2021.05.29
子どもを作る方法は誰もが知っているが、その後については誰も教えてくれない。若いママたちの証言と専門家の意見を紹介する。
子どもができた後のセックスライフとは? photo:iStock
はじめに出産がある。自然分娩の場合、膣はエロチックな生殖器から赤ちゃんが通過する産道に変わる。医師たちが忠告するように、身体が出産という試練から回復するまで、つまり少なくとも出産から6週間は性交渉は控えた方がいいとされている。
しかし、不安のせいで、その期間がさらに延びることもある。「パートナーが何も感じなかったらどうしようと不安だった。私たちにとって未知の領域だった」。3歳の男の子の母親である34歳のイネスはそう振り返る。
「産婦人科医に嘘をつきました。出産後の3カ月健診で性交渉は再開したかと質問されて、はいと答えた。実際にセックスしたのは5カ月後でした」。そう話すのは、4歳の娘をもつ40歳のオードレーだ。
3週間、2カ月、6カ月……。セックスを再開するまでの時間はカップルによって違うが、最初のセックスに落胆したというのが共通点。「出産の3週間後に試してみましたが、痛かった。その1週間後にもう一度挑戦しましたが、私はあまり感じませんでした。このことで彼とよく口論になりました」と34歳のオレリーは言う。
「セックスを再開したのは、しないわけにはいかなったから。あまりに長い期間、性交渉がないままでしたから。望んだからではなく、カップルとしての義務感からで、快感は感じませんでした」とオードレーも言う。イネスも同意見だ。「ふたたびカップルに戻るために、セックスを再開したい気持ちはどちらにもありました。でもお互いに何だか変な気分でした」
最初の1回をどうにか乗り切ったとしても、子どもが生まれてから1年の間はどうしてもセックスライフは後回しになりがちだ。「疲れ、睡眠不足、授乳、家事......。最初の数カ月間は、セックスに関心が向かないのは当然です。女性は赤ちゃんと融合した状態にあります。一度にふたりと親密な関係を結ぶことはできません」とセックスセラピストのマリ=リーヌ・ユルバンは説明する。
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感覚の変化
赤ちゃんが成長するその間、夫婦のベッドでは何が起きているのだろうか? 出産を経験した女性の身体は、子どもが生まれる前の身体と決して同じではない。では膣はどうなのだろうか? 「自然分娩の場合、出産の際に赤ちゃんの頭が通過できるように膣腔が広がります。筋肉や神経も伸びた状態になります。快感を感じにくくなる女性がいるのはそのためです」と泌尿器科外科医のフランソワ・アアブは説明する。
「感覚が間違いなく変化しました。膣の感覚が鈍くなった気がします。すべて元に戻すために産後マッサージも兼ねて整骨院に何度か通いました」とオレリーは打ち明ける。
ふたりの子どもをもつ38歳のソフィは、第二子の出産後4年間、オルガズムを感じにくくなったと言う。「以前に比べて感じなくなりました。膣の筋力が落ちているのを感じました。元どおりになったのは、1年半前にスポーツを再開してから」と彼女は振り返る。
「自然分娩後に完全に元の状態に戻るまで2年かかることもあります。ときには10年後でも膣の緩みが観察されることもあります」とアアブは言う。「膣のおなら、尿漏れ、入浴時に膣にお湯が入るといったことがあれば、膣が緩んでいるサインです。もちろんセックスの快感に影響しますが、そのためにわざわざ診察を受ける女性はいません」と医師は嘆く。
時間が経てば、あるいは会陰のリハビリを行えば元に戻るが、人によっては手術が有効な場合もある。ただしそのためにはまず医師に相談するという課題をクリアしなければならない。
セックスセラピストのユルバンによると、この変化は何よりも心理的なものだという。「脳は第一の生殖器官です。出産を無事に乗り越え、リハビリが終わったら、快感は戻ってくるはず。ところが、赤ちゃんが通過したことで自分の身体は損傷したと考えてしまうと、出産後に快感を取り戻すのが難しくなります」
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快感への新しい道?
逆に出産がこれまでとは違う快感を知るきっかけになった人もいる。「膣が広くなったかどうかはわかりませんが、娘を産んでから、前よりオーガズムに達しやすくなりました。妊娠と出産のおかげで自分の身体のことがよくわかるようになった気がします」とオードレーは言う。
そうした感想についてユルバンは「彼女は自分の身体の声に耳を傾けている。自分の身体の中で起きていることを感じ取ることに長けてきた証拠です」とコメントする。
さらに出産によって身体の問題が解決する場合もある。「快感という点では、膣痙(性交に対する突発性の不安によって引き起こされる、持続的あるいは断続的な骨盤周りの筋肉の痙攣)や、会陰部の筋緊張などの症状のある人では、出産を経てオーガズムに達することができるようになる場合があります。こうした症状を抱える女性は出産前は膣の筋肉が過度に収縮して、オーガズムを経験しにくいのです」と泌尿器科医のアアブは言う。
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セックスがオーソドックスになる
感覚や性欲に関して母親たちはみな同じ感想を抱いているが、時間がない、行為自体が型にはまるという点でも、女性たちの意見は一致している。「子どもがいるとセックスライフは以前に比べて計画的になります。あまり声も出せません。娘が隣の部屋で寝ているわけですから」とオレリーは語る。
最初の数年間は育児に大忙し。そのうえ新メンバーである子どもの存在も気になる。家の中のあらゆる場所で意外な時にさまざまな体位を楽しむのはバカンスの間に限られる。「親になると、もうキッチンや浴室でセックスすることはない。いつも寝室」と、8歳の娘と5歳の息子をもつソフィは打ち明ける。
セックスライフがオーソドックスになるというわけだ。これには男性が母親という存在に対して抱いているイメージにも原因の一端がある。「互いに親同士という目で見ているため、ある種の体位を避けるようになりました。通りいっぺんのセックスしかしなくなってしまった。私のパートナーにとって、母親というイメージは神聖なものだったから」とオードレー。彼女は現在、パートナーと別居している。
「男性には、ある種の行為は、自分の子どもの母親に対する敬意と両立しないという思い込みがあります。若い時に女性に対して尊敬の念をあまり抱いていなかった男性ほどそう。女性も母親になると立場が変わります。パートナーにとって母親のような存在になるのです。性的なイメージがなくなり、自制心や責任感のある、義務をきちんと果たす女性というイメージが強くなります。これが夫婦間のセックスの内容にも影響します」とユルバンは話す。
時間がない。段取りが必要。こうした制約があることで逆に、滅多にない貴重なこの瞬間を十分に楽しもうという気持ちになるカップルもいる。「疲れやそれぞれのリズムのズレで、セックスの回数が減ったので、する時は禁止事項はありません。出産前と変わらないように」とイネス。ただ体位は同じでも快感は以前ほどではない。「たぶん頻度が少なくなったから、お互い欲望が強くて、焦ってしまうのかも」と彼女は言う。
頻度が減ったことで行為が味気なくなったと嘆くのはソフィだ。「以前はゆっくりと時間をかけていました。いまは回数が少ないから欲求が強い、だから前戯がおざなりになることが多い」と彼女は打ち明ける。
時間が短い。機会が少ない。最初の子どもが生まれてすぐに性生活は変化する。前の方がよかった。前よりよくなった。感じ方は人によってさまざまだが、セックスの再開のタイミングが問題になるのは、カップルの間に意識のズレがある時だけのようだ。
「セラピーにやってくる親たちの中にも、セックスライフがなく、ただの同居人になったみたいと言う人もいますが、彼らはフラストレーションは感じていません。カップルがセックスレスを心配するのは、一般的な愛のあるカップルというイメージと自分たちの状況が合致していないからにすぎません。お互いに納得している限り、必ずしも問題があるわけではないのです」とユルバンは強調する。
イネスはこう語る。「よく眠れていない時など、あまりに疲れてセックスができない、というのは心配ではありません。いまはそういうサイクルなだけで、またそのうちタイミングが合う、とわかっているから」
text:Sevin Rey (madame.lefigaro.fr)