美学を持つ人たちの選ぶ、美しい映画。 圧倒的な映像美で、1人の女性の過酷な人生をたどる。

Culture 2021.08.23

美意識を育んでくれる一方、選ぶ段階からセンスが問われる映画・本・音楽。多方面で活躍する憧れの彼女たちが独自の観点で選んだ、主人公の生き方や洗練の描写など、至極の美を体現する作品を紹介。

写真家の在本彌生さんが選ぶのはペドロ・コスタ監督の『ヴィタリナ』。この作品に在本さんが見いだす美しさとは?


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光と闇の対比で描く、絵画さながらの神秘的な映像美。

『ヴィタリナ』

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「この映画の中で描かれている人間模様と主人公の健気な人生の行方は、実話であり、すさまじい生々しさで観る者に迫ってきます。一方、舞台となった部屋の光の差し込み方や色彩表現が、非常に巧妙にコントロールされていて、“こんな映像美の形があったのか!”と、スクリーンに投影される絵の力に終始圧倒され続けました。主人公の悲しく美しい眼差しには霊力が宿っているかのようで、それを見事に捉える監督や製作陣の力も素晴らしいもの。光の少ないロケーションでの撮影ゆえ、闇が周囲に与える静けさや、光を受けた瞳の強さに息をのみます。そしてリアルで鮮やかにあぶり出される、プロの俳優ではない出演者たちの生きざまに感嘆してしまいます」。出稼ぎへ行ったまま戻らぬ夫の危篤の報せを受けてポルトガルへやってきた女性の過酷な人生を見事に描き出した。

『ヴィタリナ』
●監督・共同脚本/ペドロ・コスタ 
●2019年、ポルトガル映画 
●130分 

在本彌生写真家
YAYOI ARIMOTO
世界を飛び回る客室乗務員として勤めた後、写真家に。雑誌やCDジャケット、広告など多彩なメディアで活躍。

※『フィガロジャポン』2021年7月号より抜粋

text: Misaki Yamashita

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