Mame Kurogouchiを構成する4冊:生と死について考える。

Culture 2021.10.14

ブランド創設10周年を迎えたMame Kurogouchi。これまでの軌跡を描いた本の出版に伴って、黒河内真衣子がセレクトした本から16 冊を厳選。いまの時代とリンクする4つのテーマで紹介する。

祖母がオーロラ色の糸で刺繍したハンカチを、 いまも大切にしまっているという黒河内真衣子。 糸のように時間と色を重ね、生と死は身近だと気付く。


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『Belongings 遺されたもの』 石内 都 写真 Case Publishing刊 ¥5,500
写真家、石内都の代表作である『Mother’s』 『ひろしま』『Frida』を再編集した一冊。長い間コミュニケーションが取れなかった母と、死後その遺品の撮影を通じて語り合えたという『Mother’s』を機に、広島で被爆した名もなき人々や、画家フリーダ・カーロが身に着けた遺品の写真からは、無言の会話が立ち上ってくる。写真は死者と撮影者が対話できる 稀有な手段であることを教えてくれる。

『Timeless』 朝吹真理子著 新潮社刊 ¥1,650
いまを生きる「私」は、親や先祖、歴史と繋 がっていて、土地の記憶に絡めとられながら 人類という種を継続する。原爆や震災、新型 コロナウイルスを予見するような厄災といった死の臭いを漂わせながら、80 年代生まれの主人公と 60 年代生まれの母親、2000 年代生まれの息子の三世代が時空を超えて繋がり合う。白昼夢のように過去と未来が交差する美しい世界に、いつまでも浸っていたくなる。

『海辺の生と死』 島尾ミホ著 中央公論新社刊 ¥713
幼少期を過ごした加計呂麻島の海と空、奄美大島に伝わる昔話を語ってくれた母と優しい父の大切な思い出……。生活者の目線で描かれた文章は、風の音や海の匂いまでが伝わってくるようだ。後半は終戦間際に特攻隊長として島に駐屯し、後に夫となる島尾敏雄との烈しくも切ない出会いが綴られる。楽園のような南の島に突如現れた戦争と、そこで生ま れた男女の恋の炎が鮮烈に浮かび上がる。

『星々の悲しみ』 宮本 輝 文藝春秋刊 ¥660
昭和後期に書かれた宮本輝の短編集。高度経 済成長の陰に生きるアウトローな大人や病と闘う人たちとの出会いによって、青年は「生きることの意味」を掴もうとする。闇は深ければ深いほど、星はより明るく輝く……日常に内包する「生と死」を青年の視点で鮮やかに捉えた 7 つの物語は、困難な時代を生きる現代人にとってのエール。大阪や兵庫を舞台 とした生活描写が、リアリティを与えている。

*「フィガロジャポン」2021年11月号より抜粋

photography: Masahiro Sambe styling: Yumeno Ogawa text: Junko Kubodera cooperation: ew.note, tmh.

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