インスタのフォロワーは3億人! 史上最年少のビリオネア、カイリー・ジェンナー。

Culture 2022.01.26

資産ではマーク・ザッカーバーグを凌駕したといわれるカイリー・ジェンナー。名声では義姉のキム・カーダシアンを(ほぼ)圧倒する勢い。インスタグラム1本の投稿価格が1億円を超える24歳のスーパーインフルエンサーの横顔を紹介する。

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パートナーのトラヴィス・スコットとともに。2021年6月21日。photo: The Mega Agency/ Aflo

あなたが彼女の顔を知らないなら、それは生まれたのが1990年より前だから。コートニーやクロエケンダルとごっちゃになっているのは、「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ」を見ていなかったから。ミレニアル世代にはいまさら説明するには及ばない、そしてそれ以外の世代の人たちにはどうにも説明しにくいこのリアリティ番組は、ステップファミリーの6人の子どもたちの成長とゴージャスな日常を追ったもので、アメリカのテレビ局E! で2007年に放映が開始された。主な出演者は、クリス・ホートンと、OJ・シンプソン裁判で有名になった弁護士のロバート・カーダシアンの4人の子どもたち、クリス、キム、クロエ、コートニー、ロブ。そして、クリスと彼女の再婚相手のブルース・ジェンナーの間に生まれた2人の子どもたち、ケンダルとカイリー。元10種競技選手でオリンピック金メダリストのブルースは後に性転換している。これがみなさんご存知のお騒がせカーダシアン家の面々だ。

というわけで、この顔がカイリー・ジェンナーだ。正直な話、1997年にクリスとブルース・ジェンナーの間に誕生した一族の末っ子が、ここまでの成功を収めようとは誰も予想していなかった。4人の姉たちがセレブ界を文字通り席巻した後で、末っ子の彼女にフェイム街道にその名を刻む余地が少しでも残されているなど誰が思っただろうか? ところがところが。フランス全土の人口の5倍に匹敵するフォロワーを率いるカイリーは2018年9月に雑誌『フォーブス』の「アメリカのセルフメイド女性長者番付トップ60」特集号の表紙を飾った。「初めてランキング入りしたジェンナーは、SNSでの影響力を活用し、3年足らずでコスメティック産業で9億ドルの資産を築いた」と評され、翌年には同雑誌から史上最年少のセルフメイド億万長者の称号を与えられた。

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世界で最も稼いだセレブ

ところがこの称号は後に撤回されている。これについて『フォーブス』誌は、カイリーと、カーダシアン=ジェンナー家の偉大な司令塔である母親のクリスが、会社の業績を実際よりよく見せるために虚偽の所得申告を行なっていたためと説明している。いずれにせよ、カイリーの資産は義理の姉であるキム・カーダシアンの3倍といわれている。ビヨンセよりも、ジェイ・Zよりも、レブロン・ジェームズよりもお金持ち。2020年にはついに『フォーブス』誌が発表した世界で最も稼いだ有名人ランキングでトップの座に輝いた。同誌によると、カイリーの稼いだ額は5億9000万ドル。すなわち2位にランクインした義理の兄カニエ・ウェストより4億2000万ドル多く稼いだことになる。

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“カイリー効果”

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Met ガラのトイレで撮影されたカイリー・ジェンナーのセルフィー。(ニューヨーク、2017年5月1日)instagram/@kyliejennerのスクリーンショット

彼女のビジネスに繁栄をもたらしたのは、天才的なアイデアでもなければ、世界を救うための画期的な発明でもない。現在3億人に上るインスタグラムのフォロワー、ただそれだけ。彼女はSNSで史上最もフォロワー数の多い有名人なのだ。彼女の一挙手一投足にコメントを寄せ、日常を共有し、「いいね」を送るファンたちの巨大なコミュニティ。これがどういうことかイメージしてもらために例を挙げてみよう。彼女の生まれたばかりの時の写真(というより、母親のマニキュアの塗られた親指をつかむ赤ちゃんの手の写真)は長い間、史上最も「いいね」がついた(ほぼ1900万回)写真の地位をキープしていた。2017年5月2日にMETガラが開催されたニューヨーク・メトロポリタン美術館のトイレで撮影された彼女のセルフィ写真は、大反響。2014年のアカデミー賞授賞式で撮影され、当時最もシェアされたというエレン・デジェネレスの(そもそもかなりありきたりな)セルフィー写真が色褪せて見えるほどだった。

2018年2月には、カイリーが投稿した1本のツイートがきっかけでスナップチャットの株価が急落したと多くのメディアが指摘している。カイリーはアプリケーションの新しいデザインについて、自身のツイッターで不満を漏らしていた(「スナップチャットをもう開かなくなった人はほかにもいる? それとも私だけかしら......」)。実際に、SNSで彼女自身の番組「ライフ・オブ・カイリー」の配信が始まると、番組で紹介されたものはすべて金に変わることから「カイリー現象」と呼ばれるように。音楽情報サイトGeniusによると、カイリーがラッパーのドンモニクの楽曲「Pilates」に合わせてヘアアレンジをする動画が配信されると、同曲のネット上での人気は13350%跳ね上がったという。

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栄光と美容

そんなわけで、いち企業の株価を左右し、歌手の楽曲をヒットソングに変える力を持っているカイリー・ジェンナーだが、化粧品を売ることももちろんお手のものだ。彼女はオンライン販売のみの独自のコスメブランド、カイリー・コスメティクスを2015年に立ち上げた。ブランドが初めて発表したアイテムは、リップライナーと同系色のマットな質感のリップがセットになった「カイリー・リップ・キット」。これは販売開始後、なんと60秒で完売......。

その後に発売されたマニキュア「キング・カイリー」も同様の運命を辿っている。商品のネット販売が開始された最初の週、イギリスのドラッグストアチェーンのサイトSuperdrugでは、同商品が8秒に1本のペースで売れた。2018年、カイリーが最高責任者とマーケティングディレクターとアーティスティックディレクターを兼務するカイリー・コスメティクスは、3億6000万ドルの売り上げを記録し、カイリーは神聖不可侵のセフルメイド億万長者ランキングに堂々の初登場を果たすこととなった。

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例外的な家族

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メット・ガラに現れた、カイリー・ジェンナーとパートナーのラッパー、トラヴィス・スコット。(ニューヨーク、2018年5月7日)photo: Abaca

一部には「セルフメイド」という言葉に異を唱える人たちもいる。ネットユーザーのなかには、カーダシアン家に育った以上、ひとりで何かを成したとは言えないと批判する声もある。キム・カーダシアンはこうした反応に対して妹を擁護している。「彼女は“セルフメイド”よ。私たちはみんな“セルフメイド”。(…)私たちのような人たち(成功した家庭出身の人たち、という意味)の中にも、カイリーのように成功していない人はたくさんいる。まったく逆のことをしている人もいる。(…)私の妹たちや母と同じくらい働いている人はいない」。カイリーは確かに働いている。しかし、カーダシアン家のほかのメンバーとまったく同じように働いているわけではない。彼女はアメリカ版『GQ』のインタビューでそうほのめかしているように聞こえる。「私の母(クリス・ジェンナー)は私がほかの人たちと違うのを知っている」と彼女は語る。「誰にも言い訳はしない。自分ひとりでなんとかやっている」

確かに、彼女はパートナーであるラッパーのトラヴィス・スコット(彼女のひとり娘ストーミー・ウェブスターの父親)を、家族の番組の撮影現場に連れてきたことは一度もない。これほど大っぴらな家族のなかで、許しがたい怠慢だ......。「彼は注目されるのが好きではない。だから私たちは自分たちの関係について、絶対に公にしないことにしたの。ほぼ絶対に」。ほぼ絶対、確かに。カイリーと彼女がトラヴと呼ぶトラヴィスは、先述のインタビューが掲載された2018年7月の『GQ』の表紙を飾っている。スーツ姿のトラヴィスがスツールに座り、彼女は超ハイレグカットの水着をまとって彼の腿にまたがっている。やはり、三つ子の魂百まで、だ。

text: Marion Galy-Ramounot (madame.lefigaro.fr)

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