自分らしさとポジティブの手本、唯一無二のアイコン「渡辺直美」の魅力。
Culture 2022.03.03
文/田中ゆう
芸人の身でニューヨークに単身で渡り成功を掴んだパイオニアとして、日本の若い世代は渡辺直美に励まされている。
IVY PARK/YouTube
アディダス オリジナルスが世界的ディーバ、ビヨンセとのコラボレーションコレクション「アイビー ハート(IVY HEART)」のキャンペーンに渡辺直美が起用された。2022年2月10日に一般発売が始まり、ビヨンセの影響力もあやかってすでに品薄のアイテムもある。
SoraNews24によると、渡辺のほかミャンペーンに参加するのは、モデルのカルエッチトラン、タイソン・ベックフォード、オーストラリアのシンガーソングライターであるトロイ・シヴァン、中国のスーパーモデルのシューペイチンといった豪華な面々。
IVY PARK/YouTube
同コレクションでは、ポジティブなイメージを持つカラーである赤に焦点を当て、「愛」そして「自分自身への愛」テーマに展開。動画で渡辺は、愛をテーマにしたコレクションの魅力を躍動感あふれるダンスで伝える。
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渡辺はインスタグラムで、「#adidasxIVYPARKのバレンタインコレクションに参加できて嬉しかったです」、「日本のビヨンセ」「撮影は楽しく、愛に満ちていました!こんな可愛い服に囲まれてとても嬉しかったです」
渡辺は2020年7月にアルバム「クロマティカ」のアリアナ・グランデをフィーチャーしたレディー・ガガの「レイン・オン・ミー with アリアナ・グランデ」のパロディーで頭角を現したことでさらに世界で知られるようになった。
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破竹の勢い。
そして今度は化粧品のアンバサダーだ。海外でも人気を誇る日本生まれのメイクアップブランド、シュウ ウエムラから渡辺とのコラボレーションパッケージが数量限定で登場する。
COUTESY OF シュウ ウエムラ
一昔前のキャンペーンは、細いモデルや女優ばかりなのが当たり前だった。LGBTQや多様性をアピールしたいメーカーの思惑はいなみきれないが、それを抜きにしても渡辺は抜群の存在感を放っている。そして美しい肌を出し惜しみなく披露し、ブランドの広告塔として圧倒的なビジュアルイメージを作り上げた。渡辺直美という人間から吹き出るオーラとパワーに、人を惹きつけるものがある。
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時代錯誤と勘違い。
渡辺は日本を飛び出し、2021年4月から活動の場をニューヨークに移した。市場の狭い日本語圏を脱して、英語を身に付けるための努力を重ね、今ではコメディエンヌの枠を超え、ファッションアイコンとして認知されるまでに。
昨年開催された東京オリンピックのオープニング演出の中で、総合企画エグゼクティブクリエーティブディレクター・佐々木宏氏による容姿侮辱問題があった。佐々木氏はブタの耳を付け、開会式に登場させることを提案したことを認め、謝罪。渡辺に対する「大変な侮辱」とした。
当時のこの報道を受けて渡辺は、芸人だから楽しくやったのではという意見もあったという。だが「もし(却下案が)採用されていたら断っていた。この演出を批判していたと思う」と話し、「いい方は悪いんですけど、普通に面白くないし意図も分からない。私がブタである必要性って何ですか? となっていたと思う」と、彼女の正直な思いを、中スポ・東京中日スポーツが伝えている。
怒って当然だ。「(佐々木宏氏らが)そういう世代」だから「まあまあ穏便に」で済む話なのか? 否、節操のない単なる「いじめ」だ。一部の男社会ではある程度容認されるであろう「悪ノリ」の最も汚らしい部分だった。国の威信をかけたイベントに、頭の良いはずのお国の声で組織化されたこれまた著名人やエリート達がプロジェクトを担っていたであろう。それでも起きた、最悪の事態だ。
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「ポジティブ」を巻き起こす、日本が誇るべき人材。
日本という国は国土が狭く言語は複雑で、話者は1億200万人、世界で1.662%。英語を身につけ、大きな市場に憧れる考える若者は増えざるを得ない。芸人の身でNYに単身で渡り成功を掴んだパイオニアとして、日本の若い世代は強く励まされている。
渡辺に「悪ノリ」、節操のない「からかい」をした本人、それを止められなかった周囲の人間は今どんな思いでいるのだろうか。残念だが、そこまでは分からない。
ただ、「渡辺直美」はパワーアップし続ける。世界を舞台にポジティブを巻き起こす唯一無二のアイコンの勢いはとどまるところを知らない。
渡辺が世界で名を轟かせるきっかけになった、レディー・ガガの「レイン・オン・ミー with アリアナ・グランデ」のパロディー。いまや世界中で2,770万回以上視聴されている。ゆりあんレトリィバァと魅せる圧巻のパフォーマンスに釘付け!
text: Yu Tanaka