ギフテッドの人は恋愛下手?

Culture 2022.03.04

知能の高さは恋愛関係にマイナスなのだろうか? 完璧主義で過敏なハイポテンシャルは他者とのギャップを感じている場合がある。その場合、一緒に暮らしたり恋愛することは難しいのかもしれない……。

【画像】ギフテッドは恋愛をこじらせる?1.jpg

photo : iStock 

「妻から「離婚したい」と言われた日は、動転し、感情がコントロール不能になりました」というのはアレクサンドル、39歳だ。別れを体験した多くの人同様、アレクサンドルも大変苦しんだ。もっとも彼の場合、身体的な痛みも出てほとんど耐え難い苦痛となった。その理由のひとつは アレクサンドルがギフテッドだったからだ。「ハイ・ポテンシャル」(HP)と呼ばれる、平均より高い知能指数を持っている人たちがいる。IQ130以上の人はギフテッドとみなされる。一般に信じられていることとは異なり、ギフテッドとは他の人よりも頭が良いということを意味するわけでは必ずしもない。「ギフテッドとは、単にIQだけでなく、世界と接点を持ち、世界を解読し、そこから結論を導き出すためのひとつのビジョンと方法なのです」と、臨床精神分析医でこの分野の専門家であるモニク・ド・ケルマデック*は言う。こんな特性を持っているからこそ彼らの恋愛関係は複雑化し、耐え難いものにさえなってしまう。

モニク・ド・ケルマデックが言うように、ギフテッドは理想主義で完璧主義、そして何よりも過敏だ。この組み合わせは恋愛においてとりわけ危険なものになる。過敏な人は、アレクサンドルのようないわゆるHEP(ハイ・エモーショナル・ポテンシャル High Emotional Potential)に多く見られ、HI(ハイ・インテレクチュアル・ポテンシャル High Intellectual Potential)とは対照的である。HPでない人は「普通の人(normo-pensants)」と呼ばれる。「ギフテッドが過敏なのと、その複雑な思考が相まって、他人、とりわけ好きな相手との関わり方に影響が出ます。集中しすぎる、敏感すぎると批判されるのです」と、モニク・ド・ケルマデックは言う。その結果、相手との不幸な行き違いが生じる。
「愛しているときは、我を忘れ、相手のためにすべて捧げることができる」とアレクサンドルは言う。こうした感情は付き合い初めこそ歓迎されるが、やがてはカップルに軋轢が生じる原因となる。「最初の頃の情熱は強烈で何もかも飲み込む。そしてこれが相手の中で少しずつ薄れていってもギフテッドの方はそのまま保持し続ける。それを認めることがとても難しい」とアレクサンドル。2019年、11年間連れ添い、2人の子供をもうけたアレクサンドルの妻は離婚を申し出た。アレクサンドルは過去にも体験したことのあるうつ状態に再び陥った。「とても強烈な体験だった。思考力や理性を一切失った。なにも残されていなかった。恋愛映画のように、世界は崩壊した」とアレクサンドル。妻と別れてからアレクサンドルは7回精神科に入院している。「自傷行為に走るのではないかと怖くて」とアレクサンドルは打ち明けた。
ギフテッドは誰もが恋愛でストレスを感じ苦しむのだろうか。モニク・ド・ケルマデックは否定する。「もちろん、そんなことはありません。またギフテッドだからという理由だけで別れるときに自暴自棄になりやすいわけでもありません。その人のパーソナリティや感受性に依存します。また忘れてはならないのは、どのカップルも異なり、互いへの期待や理解もそれぞれだということです。すべてをギフテッドのせいにしてはなりません」とモニクは言う。しかし、ギフテッドによってはギフテッド以外の人と関係を結ぶことが難しい場合もある。「HPと一緒でないときは、頭がおかしいと思われる」と語るのは、42歳のHIP、サンドラだ。普通の人には私のことが理解し難いのでその人たちのレベルに合わせるのに「スリープ状態」にならざるをえず、知的な刺激が得られる会話ができない」

---fadeinpager---

複雑なアルケミー

モニク・ド・ケルマデックによると、確かに一部のギフテッドにとって知的な刺激は重要な要素となる。時には相手に惹かれる中心的な理由にさえなる。「知的な刺激や共感、共通する価値観があれば、セックスは関係ないと考える女性もいます」とモニク。例えばサンドラがそうだ。普通の人と10年間の結婚生活を送った後、同じHIPの男性と恋愛をし、「これまでと全然違う」と本人は言う。「元彼との相性は、知性面よりも、肉体的なものでした。でも、今のパートナーは逆です。外見は私の好みとは正反対で、激しく愛し合ったことはありません」
ギフテッドは同じギフテッドと付き合った方が恋愛がうまくいく場合があるということだろう。しかしながら場合によっては、逆に関係を難しくしてしまうこともある。「例えば、内向的なギフテッドと外向的なギフテッドだと競合関係になってしまう可能性があります」とモニク・ド・ケルマデックは言う。同じように、過敏なギフテッド同士はどちらも苦しむかもしれない。モニクによればお互いの違いを受け入れ、理解することが解決策になるという。これは、普通の人と2年間カップルを続けているロイック、36歳の意見でもある。「HPEであることを彼女に最初から説明をきちんと理解してもらえました。僕とはどう付き合えばいいのかが彼女にはわかっているんです。ギフテッドは病気ではなく、パーソナリティーの特徴です」とロイックは言った。

* 「Le Surdoué et l’Amour(ギフテッドと愛)」。
モニク・ド・ケルマデック著、Éアルバンミッシェル出版、208 p., 17.90 €.

text : Madame Figaro

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
パリとバレエとオペラ座と
世界は愉快

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories